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握手の習慣までも奪い取るコロナがもたらす変革とは: 世界へのインタビューから見えてくるもの

“Should we never shake hands again?”

(もう我々は二度と握手をできないのだろうか?)

習慣をも変えてゆくコロナウイルスの蔓延

 アメリカ人にとって、力のこもった握手は「お互いを信頼している」ことを示す、重要なコミュニケーションスタイルです。Dead
Fish(死んだ魚)のような握手、すなわち力の入っていない握手をすると相手から嫌がられるので、しっかりと、3秒間力を入れた握手をしましょうと、ビジネスマナーの講座などでもよく教えられます。
 このヘッドラインのように、今回の新型コロナウイルスの蔓延で、そんな握手の習慣さえもが消えようとしています。ある統計によると、52%のアメリカ人がパンデミックの終息後、握手という風習そのものがなくなるのではと予測しているというから驚かされます。
前代未聞の経済難を招き、人々の動きが止まり、様々な日常を変化させざるを得なくなった昨今の情勢は、このように我々が今まで当然と思っていた風俗習慣にまで変化を与えようとしているのです。
 今回、私は自らのネットワークを通して、世界中の知人にコロナウイルスについての電話インタビューを行っています。すでにアメリカ各地、韓国、台湾、フィリピン、シンガポール、イタリア、ドイツ、ロシア、ウガンダ、コロンビア、サウジアラビアなどの国々の友人にコンタクトをとって、彼らが今どのように暮らし、世界に対してどのようなメッセージを抱いているか、カジュアルに話を聞いてみました。さらに、ナイジェリアメキシコフランスなど、今後もそのネットワークを拡大してゆきたいと思っています。

世界各地に共通する情況と浮かぶ課題

 その中で、ウイルスによって隔離されている厳しい生活環境にさらされながらも、いくつかの点で共通したコメントを多くの人が寄せてきています。
まずは、教育関係者などを中心に、彼らが試行錯誤を繰り返しながらも、オンライン授業を定着させようとしていることです。教育は先生と生徒との生のやりとりが大切といいながらも、ネットによって屈託なく授業を展開している人がだんだんと増えている状況がつかめます。
 驚いたのは、ロシアでした。この数年間、ロシアは教育界を中心にネットインフラに注力してきたことで、今回のパンデミックに直面しながらも、それほどストレスなくインターネットでクラスが運営されているというのです。
 一方、コロンビアなどは、教育産業は今後ネットでのソリューションなしには存在し得ないと、ビジネスモデルの変化が加速していることを強調しながらも、あまりにも急激な変化なので、容量がパンクして通信がうまくいかないなどの弊害も生まれているといいます。韓国でも、オンライン授業に取り組みながらも、教師によってはそのクラスの運営方法に困惑している人もいるようです。
とはいえ、今回のウイルス騒動でインターネットの必要性が様々な分野で一層加速しそうなことは言うまでもありません。
 次に、多くの人に共通したコメントから見えてきたことは、今までの対立し分断されつつあった世界から、人々が融合し、協力する世界へと変化することへの期待でした。まだまだ楽観的に聞こえるものの、今人類は、ちょうど宇宙からの侵入者から地球を守っているように、一丸となってウイルスとの戦いに打ち克たなければなりません。そのことが、今までの人と人との分断や溝を埋める機会になっているというのです。
 シンガポールの友人などは、インドバングラデシュから来ている季節労働者が厳しい住宅環境の中で苦しんでおり、そうした環境からコロナウイルスが蔓延してはいけないと、彼らに食事を提供し、必要な扶助を与えているといいます。ドイツの友人も同じような相互扶助の促進について語ってくれました。こうした人と人との新しい紐帯が、世界各地で生まれようとしているのは事実です。
 もちろん、逆の指摘もあります。カナダの友人は、アメリカの3Mがマスクなど大量の医療関係の日用品を生産しており、トランプ大統領がそうした商品の輸出を禁止し、国内用に使うべきだという指示を出したことから、これは人類の危機と自国のエゴとの確執だと、カナダ人が批判しているという事例を持ち出してくれました。

外出禁止・自粛を前に世界は、日本は

 こうした中、全ての人は、”Stay home(自宅を出ないように)”と強調しています。ウガンダでは、インタビュー当時たった30名強の感染者しかいなかったのですが、それでもアフリカのど真ん中にあり多数の国と国境を接している事情から、厳しい外出制限を敷いているようです。フィリピンは40度近くの気温が続く暑い毎日の中で、同様の外出禁止令が敷かれ、多くの人が精神的にも物理的にも大変だと語ってくれます。
 反対に、例えばロシアでは、人々がモスクワを離れ田舎に疎開して、そこで外出を楽しんでいると、笑ってコメントしてくれました。ロシア人はなかなか政府の言うことを聞かないんだよということです。
しかし、このインタビューの直後に、ロシア政府がインターネットを使って個人の行動をモニターし、外出禁止令を破っている人の捜査を始めたというニュースが飛び込んできました。ネットへのシフトは教育業界だけではなく、権力を握る政府も同様なのです。そのあたりに、今後の課題が残りそうです。
 イタリアに長年居住するアメリカ国籍の友人は、次のように指摘します。今回ほどイタリア人が迅速に団結し、医療関係者などが命の危険を顧みず頑張ったことはなかったと思う、と。ともかく、日本に伝えたいことは、迅速で極端なまでに徹底した政策の履行で、それ以外にこのウイルスを防ぐことはできないと話してくれました。
それは、台湾の人が自国の政策について語ってくれたときも同様でした。
 ソウルも東京も今、春を迎えています。ソウルの友人は、韓国も大変だったが、まだ終息したわけではないと指摘します。それなのに、ソウルの街では若者が春を楽しんでいる。この気の緩みが次の危機へと繋がらなければいいのだが、と危惧しています。
 海外のコメントから我々が学ぶことはたくさんあります。
なにせ今世界は、アメリカ人が握手の習慣を忘れようとするほどに大きなインパクトに見舞われているのですから。
 インタビューはさらに続きます。

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コロナウイルスに関して、今世界がどう向き合っているかという生の声を届けるために、世界の友人に直接行った電話インタビューをYouTubeにアップしています。
アメリカからアジア、ヨーロッパ、そしてアフリカに至る人々の声をYouTubeのIBC
Publishingチャンネル
から閲覧できます。
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