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異文化の罠がもたらす思わぬ誤解とは

Despite the good intentions with which you set out to work together, when you start work, things get out of joint and don’t go well. This is something you’re always going to come up against and that you are going to have to get over when you do business with a foreign country.

(善意をもって仕事をしようと思っているのに、お互い仕事をすればするほどぎくしゃくしてくる。これは、異文化の中で仕事をしていくときに必ず乗り越えなければならない試練なのです)
―『言い返せない日本人』より

立場や上下関係を気にする日本人 vs. 意見を平等にたたかわせるアメリカ人

 海外の人とビジネスをする上で、常に落とし穴となるのが、文化の違いによる誤解に気づかないまま相手を評価してしまうことです。
 言うまでもなく、自らの価値観や常識は、生まれ育った国や地域によって異なります。問題は、そうした価値観や常識に支えられた行動のみがお互いの目や耳を通して、情報としてインプットされてしまうのです。
 そしてインプットされた情報は、その人の異なった常識や価値観によって判断され、相手への評価につながってしまいます。その結果、思わぬ誤解が起こり、さらにその誤解に気づかないままに、ビジネスや国際交渉に様々な影響を与えてしまうのです。
 
 ここで、次の文を読んでください。
「多くの人が参加する会議の場で、他の人やたとえ上司の発言であっても、自分と異なった意見であれば、異議を堂々と表明することに躊躇しない」
 この文についてその通りだと思い、自分はそのように行動するという人は5点をつけるとします。逆に、それは無理だし、なかなかそうはできないと思う人は1点をつけます。そして、状況によって異なるが、どちらかといえばその通りだと思う人は4点、その逆は2点、どちらとも決めかねる人は3点をつけてみます。
 多くの人が予想する通り、日本人には1点から3点までの人が多く、アメリカ人は4点から5点までの人が多くいます。
 
 つまり、日本人には「遠慮」「相手の顔を立てる」「立場を考える」「和を保つ」などといった常識や価値観があり、それに支えられて、ここに記した文のような行動を取ることに躊躇があるのです。
 ところが、アメリカ人はというと、ビジネス上の議論は、立場や上下関係を超えて堂々と平等にたたかわせても構わないという倫理観に従って、上司の前でも異なった意見があればそれを表明しがちです。その背景には「平等」「ディベートをよしとする文化」「ビジネス上の意見を個人攻撃と分けて捉える」といった常識や基準があるからです。
 
 ということは、もし国際会議に出席し、関係者への遠慮から自分の主張を表明せずに黙っていたり、曖昧な表現に終始したりすると、アメリカ側から見ればその人への評価は最悪で、かつ会議に参加していない人物として無視されても文句は言えなくなります。
 逆に、日本人からすれば、遠慮なく自分の主張だけをしてくるアメリカ人を見て、横柄で高圧的だと評価するかもしれません。
 

プロセスを重んじて過去を検証する日本人 vs. 自分のやり方で未来に進むアメリカ人

 面白いのが、次の文への評価です。
「上司には、私の仕事の進め方を、プロセスも含め最初から最後まで詳しく指導してほしいとは思わない」
という文に、日本人は上司にしっかり把握し指導してもらいたいと思い、1点から2点をつける人が多かったのに対して、アメリカ人のほとんどが5点をつけ、上司は部下の仕事のやり方を把握する必要はないと思っていることがわかったのです。
 
 日本人がそう答えた背景には、プロセスや型を大切にする価値観があり、それを教え学ぶところに上下関係があるという常識があるからでしょう。それに対して、アメリカ人は「自由」「独立心」「個人主義」といった価値観が、ビジネスでのコミュニケーションのあり方にも影響を与えていることが見えてきます。
 そして、この回答の結果から言えることは、日本人がアメリカ人を、そしてアメリカ人が日本人を管理する方法に、それぞれの価値観に基づく違いがあり、そのためにお互いの信頼関係にも影響を与えかねないという、深刻な警告につながっている事実です。
 
 こうした傾向がより鮮明に出ているのが、
「上司から注意を受けても、もし自分が正しいと思ったら、自分がなぜそうしたか理由を説明する。また注意されても、その注意の内容に納得できなければ特にお詫びはしない」
という文章に、5点をつけて同意するアメリカ人がほとんどだったことです。この延長には、サービス業における顧客対応にも現れてきます。アメリカ人の価値観の根本にある「平等」という意識から見て、たとえ顧客であっても、まずはお詫びするという行為はありえません。上司が注意したときでも、時には「あなたの指示が曖昧だったからですよ」などと、部下が指摘をすることすらあるのです。
 この行為を見て、「立場」とか「謙遜」や「謙虚」といった価値観を持つ日本人は、「彼らは注意すればすぐに言い訳をする」と酷評することがよくあるのです。
 
 そして、同じような数値のギャップが見られたのが、次の文への感想です。
「プロジェクトは過去の検証をしっかりしようとこだわるより、未来志向でこれからの目標に重きを置くべきだ」
 過去の記事でも紹介したように、日本人は完璧な準備とコンセンサスがなければ、前に進もうとはしません。そのため、過去の失敗に海外の人以上にこだわって、そこを検証しない限り次の行動には移りにくいのです。過去を重んじる文化背景を持つ人々の典型が日本人のビジネス観に現れてくるようです。
 そして、アメリカ人はほとんどの人がこの文に賛同し、5点をつけます。そんなアメリカ人の言動を見た日本人は、アメリカ人はなんと無責任なのだと愚痴を言い、アメリカ人の方は、日本人はいつまで過去の細かいことにこだわるのかとうんざりするのです。
 

相手を評価する前に自分の価値観と文化背景を見直すこと

 異なる国や地域での価値観や常識を映像にすることは不可能です。それは、相手にとっても同様なことで、それがそれぞれの国民へのステレオタイプやイメージへとつながります。「アメリカ人は」とか「中国人は」という相手を評価する感想が生まれるとき、その感想を持つ背景に自らの価値観が反映していることを知っておくべきです。そして、海外の人も「日本人は」というイメージを持っているはずです。
 
 実は、世界での交渉ごとでの不調や決裂、さらには妥結後に不協和音などが生まれる原因のほとんどは、言葉の問題ではなく、こうした見えない文化背景の罠にあることは、21世紀になった現在でも充分に分析されていない課題なのです。
 注意しましょう。人はほんの数分で相手を評価し、その人柄まで判断してしまいます。それは国と国の間でも同様なのです。
 

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『言い返さない日本人: あなたの態度が誤解を招く!』山久瀬 洋二 (著)言い返さない日本人: あなたの態度が誤解を招く!』山久瀬 洋二 (著)
日本人を誤解してきた、外国人のアッ!と驚く言い分。
欧米をはじめ日本・中国・インドなどの、大手グローバル企業100社以上のコンサルタントの経験を持つ筆者が、約4500名の外国人と日本人のもっとも頻繁に起こるビジネス摩擦を28例挙げ、それぞれの本音から解決策を導き出す。今、まさに外国人とのコミュニケーションに悩む、多くの日本人に向けた究極の指南書。異文化との出会いが楽しくなるコミュニケーション術。異文化の罠を脱出せよ!

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