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ChatGPTなどのボット開発が我々に投げかける課題とは

A chatbot powered by reams of data from the internet has passed exams at a US law school after writing essays on topics ranging from constitutional law to taxation and torts. The results have been so good that educators have warned it could lead to widespread cheating and even signal the end of traditional classroom teaching methods.

(ネット上の膨大なデータにより強化されたチャットボットが、憲法、税制、不法行為にまで至るテーマをカバーした小論文を書き、米国の法学部大学院の試験に合格。そのあまりにも優れた結果に、教育関係者は不正が蔓延し、従来の教育方針が終焉する可能性さえあると警告)
― Mint より

AIの処理能力の進化と人類の創造力の退化

 大学生がレポートを書くときなどに、ウィキペディアなどに頼って自らがリサーチをすることなく、うまくコンテンツをまとめようとすることが問題になったのは、ほんの10年ほど前のことだったと思います。当時はまだネットに頼ることで、学生が自分で調べ考えることができなくなると多くの教育者が悩んでいたに過ぎませんでした。
 
 ところが、最近になってAIが進化し、翻訳の世界から文章やイメージを創造する世界にまでデータベースの処理能力が及ぶに至って、教育業界は大きな曲がり角に立たされています。英文の翻訳がGoogleの翻訳機能に依存しはじめたのもほんの数年前ですが、今では多くの人がDeepLに頼って外国語でメールを書き、レポートを作成しています。そして、最近ではChatGPTといった、個人の希望に沿って論文や詩まで作成するデータ処理機能(ボット)が出現し、逆にGoogleまでもが危機感に苛まれていることが話題になっています。
 創作の世界ではStable Diffusion(ステーブル・ディフュ―ジョン)の処理能力によって、個人がイメージするものをAIに与えるだけで芸術作品が完成するまでになりました。
 
 このことから、教育機関は今後学生にどのような教育をしてゆけばよいのか、過去にはない課題を突きつけられているのです。
 AIの多種多様な機能の中で、特にデータベースをどのように処理し、統合して人にフィードバックしてゆくかという作業が突出して進化しつつあります。
 
 過去に進化といえば真っ先に思い出すのが、ダーウィンの進化論だったはずです。突然変異は遺伝するという論理から、あらゆる生物が環境に適応しながら淘汰と進化を繰り返し、人類へと繋がっていったという彼の理論は、19世紀に社会を震撼させました。それまで、神が人を創造したと信じていた人々が、その常識を根底から覆されたのです。
 しかし、ダーウィンの進化論はあくまでも、生物による生殖活動の連続の中で語られた世界でした。そして、進化の陰には淘汰された種も数えきれないほどあり、同時に淘汰に至る前に退化した種も無数にあったはずです。
 というよりも、進化と退化は同じコインの表と裏なのかもしれません。頭脳が進化した人類は、道具を使うことで他の動物の上に立てました。しかし、人類の嗅覚や筋力、さらに聴力や視力は時とともに退化し、他の動物よりもはるかに劣化しました。しかし、道具を使うことでその退化を補っても余りある種へと上り詰めていったのです。
 

便利さや効率化と創造性や社会性を秤にかけて

 さて、そんな人類が生殖活動とは無縁の領域でAIを頭脳から生み出しました。この新しい道具が進化すれば、当然人類のどこかの部分が退化してゆくはずです。それは石器を発明した人類が腕力や跳躍力を退化させたことと類似しています。ただ、大きく違うのは、石器はあくまでもツールであって、生み出されても独自の進化はできないのです。
 
 では、AIはどうでしょうか。AIがいわゆるコンピュータラーニングという機能を通して、データベースの無数の組み合わせを学ぶなかで、独自に進化することはないのでしょうか。よくいわれるように、現在のAIはまだウィークAIといわれ、その可能性のほんの一部しか使われていません。しかし、それによってChatGPTなどの新たなツールが開発されたとき、人類は自らの退化とAIの進化とのバランスによって、加速度的な変化に見舞われることはないでしょうか。
 
 今、世界の教育界では、この課題に人類が対処できるように、幼児から大学生までどのような教育システムの中で育てるべきか、本気で悩んでいるのです。私が教鞭をとるある大学では、そこが日本でも有数な大学であるにもかかわらず、学生の作文力の劣化に教授陣が頭を抱えています。文章を書くという単純な行為に対して、学生が明らかに退化していると指摘する人もいるのです。
 
 ChatGPTやStable Diffusionのことを語る以前に、翻訳ソフトそのものの進化に対して、教育界の人々は警鐘を鳴らしていました。確かにDeepLなどは便利なもので、業務の効率や無駄を大幅に改善してくれています。しかし、翻訳は通訳と同じで、人々のコミュニケーション文化の違いまでは考えてくれません。ですから、単に進化した翻訳ソフトだけに頼ってメールのやり取りをしていると、ビジネスなど様々な交渉の世界でも大きな誤解を招く危険は多々あります。
 それが、さらにChatGPTの操作によって複雑な論旨を展開できるようになった場合、人は他の人とのコミュニケーションによる創造力の退化に気付かないまま、重大な判断ミスを重ねてゆくことがあるかもしれません。
 
 楽観的に捉えるなら、人は便利になった分だけ、自由に使える時間が増え、より高度な文明を創造するチャンスが増えるという人もいます。それは、1964年に新幹線が開通したとき、それまで6時間以上かかっていた東京から大阪への旅が3時間強に短縮され、そのことで余った時間によって、さらに生産力を上げることができると多くの人が考えたことと似た発想です。しかし、繰り返しますが、新幹線も石器と同様で、人が手を加えない限り進化することはない道具に過ぎません。人類がデータベースとニューラルネットワーク、あるいはニューロテクノロジーとをAIという世界で統合させようと試みたとき、そこで生まれるものはツールを超えた進化の可能性を秘めたものになるのです。
 

AIの「突然変異」が人類の未来にもたらすものは

 大学は学生が自分の頭脳を使ってレポートを書く能力を養うように懸命になります。しかし、学生はあたかもSF小説の「念力」の世界同様に、自らのつぶやく言葉をどう組み合わせてChatGPTに投げ込もうかというアイデアにより熱心に取り組もうとします。そのどちらが創造性の強化につながるのかは、未来を考える上であまりにも大きな課題です。深く思いを巡らすこと、多様な要素の中から有用な情報を引き出して、自分の判断の糧にすることは古来哲学者や芸術家、それに多くの思想家が取り組んできた作業です。しかし、人類の大多数はそうした突出した頭脳とは無縁の領域で日々糧を求めて生き抜いてきました。であれば、ChatGPTなどの新しいツールがそうした突出した頭脳の領域を侵食しても、日常はそう変わらないと言い切れるのか、それもまた未知の領域です。
 
 人類の未来の明暗は、究極のところAIが地球の中で初めて生殖活動とは無縁の「突然変異」として進化してゆくのかどうかという一点にかかっているのかもしれません。
 

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『ハッカーズ・スーパー・ボキャブラリー』ハッカーズ語学研究所、David Cho (著)ハッカーズ・スーパー・ボキャブラリー
ハッカーズ語学研究所、David Cho (著)
英語大国・韓国で実績NO.1のハッカーズ語学研究所の人気タイトルが日本上陸! TOEFL・IELTSをはじめ、GMAT・SAT・GREなどの各種試験に最も頻出する語彙を統計データより厳選。各単語の正確な意味を理解するために、見出し語に「英英辞典」のように英語の定義文を付しています。また、見出し語と関連語を比較しながら単語間の微妙な意味の違いを把握できるように構成されています。大学院進学や研究課程に必要な英語力や、英文の文献・論文を読みこなすハイレベルな語彙力の習得を目指す学習者に必須の3200語が、効率良く正確に学べる語彙集です。

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