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存続をかけて揺れるEUの行方を占う方法とは

On Sunday night, joy: French voters had, once again, kept the far right out of power. On Monday morning, uncertainty: A hung parliament, shaky alliances and the threat of turbulent years ahead.

(日曜日にフランスの有権者は、またも極右勢力を政権から締め出し喜びにわいた。とはいえ月曜日に〔選挙の結果が確定すると〕議会が空転し、連立も微妙な中で、不透明な議会運営が、今後数年間は続くのではという不安に見舞われた)
― CNN より

イギリスの13年ぶりの政権交代に欧州諸国は続くか

 イギリスに久しぶりに庶民派の首相が誕生したことが、先週の大きなニュースとなりました。
 13年ぶりに労働党が政権党に返り咲き、党首のスターマー氏が第80代首相として指名を受けたのです。
 彼は、看護師と工具職人という、いわゆる労働者階級の両親のもとで育ちました。しかし、多くの首相の例にもれず、最終学歴はオックスフォード大学の大学院であったことは、いかにもイギリスらしいことといえましょう。
 
 保守党政権の間にイギリスはEUを脱退しました。しかも、保守党の中にも離脱派と残留派とが意見を戦わせていたことは印象的でした。当時の首相のデービット・キャメロン氏は残留を主張し、その後首相になったボリス・ジョンソン氏は離脱派の首魁ともいわれました。
 
 一方、イギリスと同じく、ヨーロッパでは今後各地で政権交代をも招きかねない選挙が続きます。今日フランスでも選挙の結果が発表され、極右政党の議席拡大を阻止できたものの、マクロン大統領は与党のいずれも過半数をとれないなか、不安定な政治運営を余儀なくされています。
 

ヨーロッパ大陸の政治動向を地政学的にみると

 こうしたヨーロッパでの動きを地政学的に分析してみたいと思います。
 実は、イギリスは長年にわたって、国家の分裂の危機に見舞われてきました。北アイルランドはアイルランドへの帰属へと動く可能性があり、スコットランドは伝統的にイングランドからの分離を望む人が多くいます。
 そして、最近のEUからの離脱、ブレグジット(Brexit)を支持した人のほとんどがイングランド、つまりイギリス中心部の人々で、スコットランドの人はむしろブレグジットには反対の人が多数派だったのです。
 
 そんなイギリスは、世界に大きな影響を与えてきた大国です。しかし、地政学的にみると、イギリスは島国で伝統的にヨーロッパ大陸とは一線を画した国なのです。つまり、イギリスはアメリカと共に世界の政治舞台では大きな存在ですが、ヨーロッパという地域での主役にはなれないという捻れがあるのです。ですから、EUという国家同盟の中で、EUの法律とそれぞれの国の主権内での法律とに矛盾が生まれたとき、イギリスはさほど抵抗なくEUとの離別を選択できたのです。
 
 反面、ヨーロッパの将来を決める大国はといえば、それはやはりフランスとドイツ、そしてイタリアに他なりません。そうした意味で考えれば、今回の選挙の行方が最も懸念されたのはイギリスではなく、フランスだったといえるのです。
 今回の選挙は、フランスでの第一回目の選挙で躍進した極右政党、国民連合の伸長に危機感を覚えた国民がその流れをしっかりとせき止めたわけで、それを示すように投票率も67%近くで、近年最高をマークしました。この結果はEU内での亀裂を抑えるうえでも大きな意味をもっていたのです。
 
 ヨーロッパ大陸の政治は、長年にわたってそれぞれの地域を支配する王朝の利害が絡むだけに複雑で、その複雑さがゆえに第二次世界大戦まで戦争が絶えませんでした。そうした経験から生まれてEUにまで成長した組織が崩壊するのではという危機感が、フランスの選挙での極右政党の失速の原因だったはずです。
 イギリスはヨーロッパ大陸での政治動向に対しては基本的に深くかかわらず、傍観しながら、時折その影響力を行使する程度の存在でした。むしろオランダやベルギーなどといった、小国とはいえ西ヨーロッパ圏の中心に位置する国々の政治的動向の方がはるかにEUの将来にとっては重要だったのです。
 

互いの連携を重視するイギリスとアメリカ

 一方、イギリスをみるならば、ヨーロッパ本土ではなく、自らが過去に大英帝国として管理していた植民地など、世界中の国や地域との結びつきで蓄えてきたネットワークや資産の方が、EUの連合よりもはるかに貴重なのです。
 実際に、イギリス人の伝統的な富裕層は、個々人のレベルで、そうした地域との経済交流によって、我々には想像できない資産を蓄え、その力をもってイギリスでの政界にも影響を与えてきたのです。さらにこうした背景があるからこそ、イギリスはいまだに世界の政治舞台の中で欠くことのできない存在なのです。
 その位置づけを維持するために、歴代のイギリス首相は保守党であろうが、労働党であろうが、アメリカとの連携を常に重視してきました。これが俗にいうアングロサクソン連合なのです。
 
 実は、その対象となったアメリカはどうかといえば、ここもアメリカという大陸で君臨する国家ではあるものの、世界史の舞台であるユーラシア大陸からは分離された、大きな島国といっても過言ではありません。その意味においてはアメリカもイギリスも地政学上、同様の宿命を背負っているのです。
 従って、この二つの国家は世界でのプレゼンスを維持するために、常に阿吽の呼吸をもってネットワークしてきたのです。
 
 しかも実際に、アメリカは世界の政治には積極的に介入するものの、伝統的な外交方針は世界とは一線を画した孤立主義であったことも否めない事実です。特に複雑なヨーロッパ大陸での紛争やパワーゲームに首を突っ込むことは、自らにとって大きなリスクになるという意識がいまだにアメリカの政界には残っています。この意識がアメリカではトランプ氏による「アメリカファースト」というスローガンにつながり、イギリスにおいてはブレグジットに至った理由となっているのです。
 
 EUのことを考えるときに、EU内部の国家間のやりとりと、加盟国の国内世論について分析すると共に、イギリスとアメリカのこうした立ち位置を理解することが極めて重要なのです。
 

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