In an Era of Deep Polarization, Unity is not Trump’s Mission
若き保守政治活動家の銃撃事件を考察すると
しかも、今回のように銃規制に反対の立場をとるトランプ政権の支持者や、トランプ大統領自身が選挙運動中に銃撃されるという皮肉な状況が続いていることに、単に民主党は銃規制を求め、共和党はそれに反対するという今までの図式では掴めないアメリカ社会の複雑な背景を見せつけられたようにも思えます。
アメリカ人にとっての「銃とIndividualism(個人主義)」
歴史的に移民として新大陸に渡り、開拓者精神に支えられ自らの地盤を自立して切り拓いてきたアメリカ人が最も尊ぶ精神は、Individualism(個人主義)です。この価値観は、自分は人とは異なるということを前提とします。自分がユニークで、他と違った個性があることが多くのアメリカ人の求める姿なのです。それは子どもの頃からの教育や親から受け継いできた価値観で、そこには堂々と自己を主張することこそが、アメリカ人にとっての自由であるという意識があるわけです。
しかし、そう主張する人の多くも、心の中に自我を支える銃を持っているというと、多くの日本人は、それってどういう意味かと思うかもしれません。それは、どのような思想信条を持っているにしても、アメリカ人は自らの主張や政治意識、そしてライフスタイルを他者と妥協するよりは、際立って異なることの方を選ぶ強い自我があることを意味しているのです。その強い自我の象徴が銃というわけです。
これが、アメリカ社会にとってプラスに働くときは、社会全体が個性を戦わせながら切磋琢磨する移民社会ならではのパワーにつながっていくのです。
しかし、それがマイナスのベクトルを持つと、お互いがお互いを排除することに終始してしまい、今回のような悲劇が起こってしまいます。今、アメリカがいずれ内戦になるのではと危惧する人が増えているほどに、主義主張の隔たりによる分断が進んでいます。なんらかの治療薬を見つけない限り、そしてそれを誰もが意識して治癒のために使用しつづけない限り、この分断は収まりそうにないのです。
信仰と結びつく殉教への美学とテロの脅威
彼らは、その信仰に基づいた自らの地域社会を守るためにも銃が必要だと主張します。また、彼らの中に時々顕在化する殉教への願望も気になります。過去にはよくキリスト教の教義に従って、人工妊娠中絶を拒否する人々が地方の産婦人科のクリニックを襲撃する事件がありました。それは今でもどこで起こっても不思議ではないアメリカに内在するテロへの脅威です。
イスラム教にせよ、キリスト教にせよ、いわゆる原理主義のもたらす恐怖はこうした動機によるテロ行為に他なりません。これは我々日本人には到底理解できない一神教への倒錯行為といえましょう。
なんとかこの壁を打ち破り、彼らの持つパワーをプラスの方向へ向けるには、克服すべき課題があまりにも多くあるように思えることが、アメリカ人の絶望感の根底にあるのです。
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Dr Gareth Moore (著)、John Tenniel (イラスト)
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