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経験が邪魔をする未来への準備

Experience often develops the barrier to promote behavior change toward future.

(しばしば経験が未来への行動変容の障害を助長することがある)
― ウェビナーでの講義ノート より

この25年間の変化とこれからの25年を考える

 今年も11月になり、秋も日に日に深くなってきています。2025年といえば、21世紀になってちょうど4分の1が過ぎようとしていることになります。
 次の4分の1がどのように変化してゆくのか、未来を正確に占うことは大変困難です。
 
 2000年の今頃、つまり25年前の今頃、20世紀があと1か月で終わろうとしているとき、翌年にアメリカで同時多発テロが起こることなど誰も予測していなかったはずです。そして、その事件を契機に、現在に至るまでのさまざまな国際情勢の変化が、アクションとリアクションを繰り返しながら続き、中東ではガザの惨劇が起こり、ウクライナではロシア軍の侵攻による破壊が繰り返されているわけです。今振り返れば、そのアクションとリアクションを説明することは可能です。
 では、その延長を見据えて次の25年はというと、それは容易ではありません。
 
 ただ、多くの人がいうように、これから25年の間に、AIなどの進化によって、人々の職業や生活パターンが大きく変わることだけは確かかもしれません。
 しかし、人は未来の変化のために自らの行動を変えることは苦手です。例えば、教育現場で教師や親は、子どもたちの未来のことを考えます。しかし、仮にAIが進化して現在の多くの職業がなくなることがわかっていても、それに合わせた教育方針を今から打ち出すことへのリスクの方を人々は意識します。
 
 もし、金銭的な収入という面だけに注目すれば、すでに死語となりつつあるホワイトカラーを目指すことが果たして正解か、という疑問があります。というのも、デスクワークの多くがコンピューターに取って代わられるからに他なりません。
 むしろ手に職を持つ人々や、ニッチで微妙な隙間を埋める繊細な仕事がより多くのニーズを生むようになるかもしれません。反面、今まではあって当然と思われていた仕事がどんどん消滅するはずです。
 
 この25年間でも、すでにそれは起きています。昔、運転免許の更新に行けば、周辺に代書屋さんが軒を連ね、更新手続きの書類を作成してくれていました。更新手続きが自動化されて以来、あっという間にこうした店はなくなってしまいました。出版業界ではDTPが導入されて以来、写植屋さんも消滅してしまいました。同様の事例は相当あるはずです。しかも、これは20年から30年の間に起きたことです。当然、職を失うか転業せざるを得なくなった人も多くいたはずです。
 
 では、これから25年の間にはどのような職業がなくなるかといえば、それこそ生成AIに問い合わせれば、いくらでも事例がでてくるはずです。
 しかし、そうした事例が我々に警鐘を鳴らしていても、教育現場の方針は変わりません。よくいわれる「良い大学に進学し、良い企業に就職する」という方針に多くの親も教師も従って、進路指導をしているはずです。
 
 子どもの将来に大きな影響を与えるもの。それは教師と親に他なりません。
 しかし、教師も親も自らの経験に基づいて子どもを指導するわけですから、未来を見つめ現在の常識を打ち破ることには逡巡するはずです。時に経験という重力は、未来への負の重力となることもあるのです。
 

時代と共に変化するツールと人々の価値観の変容

 私は来週アメリカへ出張します。久しぶりにワシントンD.C.からアメリカのど真ん中にあるオクラホマに飛んで、そこにある語学学校のオーナーと打ち合わせをする予定です。そして、その翌朝にダラスに立ち寄って、もう一人のビジネスオーナーと昼食のミーティングをします。
 
 後者の彼には突然WhatsAppで連絡を入れました。運良くその日は空いているということで、オクラホマシティからレンタカーで行くので、レストランを指定してくれればそこに12時に行くよ、とメッセージを入れました。すると、レストランの名前と住所が送られてきます。その住所をGoogleマップに設定しておけば、あとはスマホが案内してくれるわけです。オクラホマシティからの所要時間は3時間。8時過ぎにオクラホマシティを出発すれば、まず間に合います。
 
 そんなふうに考えているとき、ふと昔はランドマクナリーという会社の発売する全米の詳細な道路地図をつねに持ち歩いていたことを思い出します。この道路地図は全ての州を網羅したもので、どこをドライブするにしろ助手席にそれを置いておけば、目的地への大体の目安はついたものです。
 実際、ほんの15年前まで、この道路地図はアメリカ出張には欠かせないものだったのです。
 書棚から15年前のその道路地図を引き出して眺めていると、ついつい時間の経つのを忘れてしまいます。今回アメリカに出張したとき、今でもそれが発売されているかチェックしようと思いました。そして、もし見つけたら記念に最新の一冊を購入しようと。今ではアンティークを買うたのしみと同じレベルで、そんなことを思っている自分に気づきました。
 
 時と共にツールが変わり、ツールが変われば古くなったツールに携わる人々は仕事を失います。しかし、それを耐え抜けば、逆に極めて貴重な人材となることもあるわけです。蒸気機関車の技術者が、やがて人間国宝になることもあり得るわけです。
 また、社会が変化すれば、常識も変わり、価値観や好悪の情も変化します。ツールの変化が人に影響を与えれば、その重力は今度は未来に向けたプラスの重力となって人の価値観にも影響を与えます。
 

分断が日常となった人々と世界を治癒する難しさ

 アメリカで起きている社会の分断が、今では当然であり日常であるかのように変化を始めています。インターネットというツールが生まれ、人々がそれによってネットワークし、グループ化したとき、好悪の情を共有する人が大きな集団へと成長し、他者を排斥したときに分断が日常となったのです。
 
 そして、この社会現象はアメリカだけではなく、世界に拡散しています。
 そんな新たな日常を実感し、教育の現場でもなんとかしなければと思ったときは、人々の分断を治癒するにはすでに手遅れになっているかもしれません。
 未来を考えて社会制度を整えることの難しさがそこにはあるのです。
 

* * *

『名作文学で読み解く英文法 一九八四年』ジョージ・オーウェル (著)名作文学で読み解く英文法 一九八四年』ジョージ・オーウェル (著)
ディストピア文学の最高傑作を英語で楽しみながら、英文法も深く理解できる! 個人のプライバシーが剥奪され、男女の性愛が罪とされ、子どもが親を通報することが奨励され、日記を書くことが死刑相当の思考犯罪となる社会で、ウィンストンは歴史の改ざん業務に励んでいたが、胸には反体制の思いを秘めていた。そして反政府地下活動に惹かれるようになるが……。本書では、文章を読み進めながら文法を学ぶことで、その文法項目が具体的にどんな場面でどんな役割を担い、どのような意味・ニュアンスを伝えるのか、体系的に理解することができます。

 

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21世紀に入って、間もなく25年を迎えようとしています。社会の価値観は、SNSなどの進展によって、よりミニマムに、より複雑化し、ややもすると自分自身さえ見失いがちになってしまいます。

そこで、これまでの25年、そしてこれから22世紀までの75年を読者の皆様と考えていきたいと思い、インタラクティブな発信等ができないかと考えております。

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