In psychology, compartmentalization is a defense mechanism where an individual mentally isolates conflicting thoughts, emotions, beliefs, or experiences into separate “compartments” to minimize internal tension, emotional distress, or cognitive dissonance.
欧米相手のビジネスに必要な“compartment的発想”
日本流の情報共有で、たくさんの人にCCをつけて発信すると、重要な案件だと思われないばかりか、信頼されていないのではと相手に誤解されるリスクすらあるのです。
これは、メンツを重んじる中国などへのメールでも言えることです。CCをつけるのは、案件がうまくいかず、相手の上司も巻き込む必要性に迫られているときぐらいにとどめる、と思った方が無難です。
別件をついでに送りたいときは、その直後でもかまわないので、別のメールにして送るべきなのです。
欧米の人は「一つの案件は一つの案件」というふうに整理して捉えることが習慣なので、いくつもの内容を一通のメールに入れ込むと、それが箇条書きであっても重要性やプライオリティを見失うのです。
海外で列車の一等車に乗ると、四人がけの個室に分かれていることがあります。この個室のことを “compartment”(コンパートメント)といいますが、欧米の人と交渉をするときは、この発想を常に持っておく必要があるのです。

「コンパートメント化」を理解して異文化摩擦を回避
彼らを訪ねる前に、テキサス州のダラスで彼らの息子とランチをして、両親の状況について事前に話を聞いたうえでの面会でした。
冒頭で触れたメールでのCCや、一つの「案件ずつ」というコミュニケーションスタイルも、この “compartmentalization”(コンパートメンタリゼーション)、すなわち「個室化」という心理的なプロセスと無縁ではないのです。
最近では日本人も仕事とプライベートをきっちりと分ける人が多くなりましたが、ひと昔前まではそうした境界線は曖昧で、今でも欧米社会ほどではありません。これは文化の違いなのです。
彼らは過去に何かがあったとしても、日本人とは違い、過去は過去で、現在と過去とを一つの流れで捉えません。
これは、過去の反省や「振り返り」に重きを置く日本人とは真逆の発想です。ですから、プレゼンテーションやフィードバックをしながら、相手と仕事をしたり交渉をしたりするときも、この発想を忘れてはならないのです。
もっといえば、誤って相手の足を踏めば、それは現在起きたこととして謝罪するのは当然で、アメリカ人であろうとも誰であろうともそれは当然のマナーです。しかし、時間的に過去というコンパートメントに入っているものに対して謝罪を求めるには、相当洗練されたロジックによって説得する必要があるのです。

異文化の発想に対応するスキルは現代の最重要課題
そして、プロテスタントと呼ばれる新教徒が、個々の勤勉さを良い価値として育み、来世のことは神の領域で別のコンパートメントの中のことと考えたことで、より合理的な科学的活動やビジネスに没頭できたのです。
これが、現代社会の産業構造を築きあげたイギリスやアメリカの本質的な価値観となったことで、欧米社会全体に大きな影響をもたらしたというわけです。
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『Essential Japanese for Travelers』Raina Ruth Nakamura (著)
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