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パリの惨劇の背景とは。Patriotism と Fundamentalism の狭間で

【海外ニュース】

Huge crowds and some 40 world leaders have gathered in Paris for a unity march after 17 people were killed during three days of deadly attacks.

3日間の血なまぐさい戦闘で 17名の死者をだしたことをうけ、大規模な群衆と 40カ国前後の世界のリーダーがパリに集まり行進を

【ニュース解説】

年始早々にパリを襲った惨劇は、言論の自由を象徴するジャーナリズムをターゲットとした殺傷事件だけに、世界中にショックを与えました。

この事件、単にイスラム原理主義者の過激な行動による犯行だと片付けるには、余りに多くの背景があることを、ここで整理してみたく思います。
英語を学ぶ皆さんは、少なくとも世界に興味がある方々だと思います。
実は、今日本を含む世界が未来への不安に揺れているのです。それを冷静に把握するポイントとして、patriotism (愛国心) と fundamentalism (原理主義) という二つの単語をここに並べてみます。

事件のおきたフランスは、最近 EU やユーロ圏からの離脱を求める運動が拡大し、政治的に揺れていました。
お隣のイギリスでは、昨年スコットランドをイギリスから分離独立させ、逆に民族の自立を保ちながら、EU の経済圏の中で新しい国づくりをしようという動きが、スコットランドでの住民投票にまで発展しました。
そして、東をみれば、ロシアでは、クリミア半島のウクライナからの分離とロシアへの併合の折に、プーチン大統領が、クリミア半島の歴史とロシア民族との関係を強調し、ロシア人の世論を大きく揺り動かしました。

これらの動きに共通していることは、歴史を振り返りながら、自らの立ち位置を考え直してゆこうというナショナリズムの潮流です。このナショナリズムを弁護する言葉が patriotism です。それはアメリカでも日本でも、中国でも世界中の国家で前向きな概念として捉えられている言葉です。

一方、イスラム社会では、西欧社会との確執が長引く中で、自らの文化や伝統への急進的な執着が、他者を暴力的に排除していこうという fundamentalism を産み出しました。今回の犯行はその潮流の中でおきた悲劇といえます。
しかし、fundamentalism は、イスラム社会のみにある現象ではないのです。例えば、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの一部の民兵。アメリカでキリスト教への厳格な回帰によって、グローバルな協調を拒絶して社会造りをしようとする人々。ドイツやフランスでの移民排斥運動の背景にある、国家とキリスト教への至上主義など、fundamentalism の事例は世界に拡散します。もちろん、日本国内にもそうした人々が多くいることも理解しておく必要があります。

今、世界を混沌とさせているのは、この patriotismfundamentalism とが歩み寄り、時には微妙に融合しながら、世論が変化しつつあることです。

元来、patriotism は、自らのルーツを大切にしようという考え方でもあり、それ自体が危険なものかというと、そうではありません。むしろ、patriotism を抱きながら、他の伝統や文化をも同時に重んじ、共存することの重要性が、20世紀後半の社会の潮流を造ってきたことは知っておきたい事実です。そのお陰で、西ヨーロッパには戦後70年、極東では朝鮮戦争以来60年以上にわたって、武器による紛争のない奇跡がおきているのです。
それは、個々の伝統や文化を diversity (多様性) として捉え、diversity を重んずることで、人々が共存する社会を造ろうという、patriotism を前向きに捉えていった意識によって保持された平和といえましょう。EU はその象徴的な実験の場であったのです。

その考え方を脅かしているのが patriotismfundamentalism との融合です。それは、diversity によって産み出されようとする社会への反動力となって、世界の様々な地域を混沌に導いているのです。
このことが、今回のパリで起こった惨劇に、世界が強く反応した理由に他なりません。言論の自由は diversity への尊重がなければ成り立たないからです。

そして、今回の惨劇が、イスラム社会への偏見を助長したり、移民の流入を促進させる結果となっている EU の理念への警鐘と捉えられたりすることへ不安を抱く人も多かったはずです。

来週はニュースレターの中で、この課題をさらにロシアとウクライナの問題を取り上げながら、解説してみたいと思います。

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