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北朝鮮問題は「Chaotics」な時代の一つの事例

【海外ニュース】

More Sanctions on North Korea After Sony Case
(New York Timesより)

ソニーの事件をふまえ、北朝鮮にさらなる制裁を

【ニュース解説】

2015年。
100年前の 1915年、世界は混沌の中にありました。
1915年の世界は、第一次世界大戦の真最中です。強国の多くがこの世界大戦を通して大きく変化しようとしていました。
ロシアでは、二年後に革命がおき、帝政から社会主義国家へと変貌しました。
トルコでも帝政が崩壊し、その傘下にあった中東各地では民族運動がおこり、大国の権益とからんで混沌が広がりました。現在の中東問題の原点となる環境が発症したのです。
そして、ヨーロッパでは 1918年に長年ヨーロッパ社会を牽引していたオーストリアハンガリー帝国が消滅し、ドイツも革命でドイツ帝国が崩壊します。

極東はどうでしょうか。中国では 1911年からはじまる辛亥革命で、清朝が倒壊しました。その後、第一次世界大戦でドイツと戦争をはじめた日本は、混乱の最中にある中国のドイツの権益を押さえ込み、その権益の譲渡を 1915年に中国側に要求。これが、日中の対立へとつながり、最終的には満州事変や日華事変に続く第二次世界大戦での日本と中国との戦闘へとつながりました。
日本は、当時大戦での軍需景気で経済的には潤いますが、大戦が終わるやその逆風を受けて慢性的な不況に悩まされるのです。それが、その後の日本の戦争への舵取りへとつながっていったことも周知の事実です。

一方そうした混沌の中、アメリカは、欧米の混乱の中で旧体制が崩壊するなか、世界最大の債権国へ成長し、世界のリーダーとなる経済力を培ったのです。

このように、100年前、世界は動乱の中にもがいていました。
そして、動乱の向こうには、その後の大恐慌や第二次世界大戦、冷戦から現在の世界情勢などにつながる様々な歴史の断面が見えてきます。

では、2015年はどうでしょう。
社会主義体制の崩壊から再生しようとするロシア。そこにおきたウクライナ問題は、欧米と足並みをそろえるため、ロシアとの雪解けを模索していた日本の外交方針にも大きな影響を与えました。さらにウクライナ問題は、そのままロシア経済を危機的な状況に追い込み、そこで発生したルーブルの下落は、世界経済にも波紋を広げています。
しかも日本は、いまだに 100年前にはじまった日中の対立からくる確執に悩まされています。

中東では多くの国家が変化し、混沌や喧噪が続き、イスラム国の脅威や、アフガニスタンなどでの混乱の収集のメドはたっていません。中国、インド、ブラジルなどの新興国とよばれる地域の政治経済動向もまだまだ未知数です。

アメリカは、この世界の混乱の中で長年維持してきたプレゼンスの保全に懸命です。中南米での新たな秩序を目指し、キューバとの雪解けを積極的に進め、ロシアや中国との対立項の中で中東問題、アジアでの影響力の維持に懸命です。

そして、こうした状況の中で発生した北朝鮮とのサイバー戦争。アメリカは極東での指導力の維持のために北朝鮮に強いボールを投げ続けます。その中で、拉致問題などをどのようにハンドルするか、日本政府の舵取りが注目されます。

以上、ここに並べた素材を分析すれば、2015年を 1915年と比較して世界の未来を予測する参考にすることがいかに有益か、わかると思います。

では、この複雑な世界情勢をどのように捉えるか。
ここで、マネージメント論など、経営関係の著作で知られるフィリップ・コトラー Philip Kotler の「Chaotics」という言葉を紹介しましょう。「Chaotics」とは、Chaos つまり混沌とした不安定な時代を示す造語です。彼はそんな時代での経営のあり方について、この言葉をタイトルにした書籍で説いています。同時多発テロ以降の世界がいかに予測不能な乱気流 turbulence の中にあり、そのことを常に意識した経営が必要だと説いているのです。

日本人はどちらかというとこうした「Chaotics」な状況への対応が苦手だといわれています。あまりにもあらゆることに完璧を求め過ぎ、緊急事態や不測の事態への柔軟性、リーダーシップの取り方に問題があるからです。
今は、計画通り、または「こうあって欲しい」と考える通りに物事が進みにくくなる時代です。ロシアと仲良くと思っても、北朝鮮とうまく交渉したいと思っても、自らとは一見無縁に思えるところから思わぬ横槍がはいり、そのために自らが望まない方向に政治や経済の舵がきられることも多くなるはずです。

2015年は、この10年間の経験に基づいて、「Chaotics」について、じっくりと取り組み、そうした時代に立ち向かうための様々な対策を産み出さなければならない年であるともいえそうです。

今年もよろしくお願いします。

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