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ビスマルクの肉声とアメリカの発明

【海外ニュース】

A wax cylinder recording of German statesman Otto von Bismarck has been released. It’s the first time his voice has been heard for more than 100 years.(BBCニュースより)

ワックスシリンダー式の蓄音機によるドイツの宰相オット・フォン・ビスマルクの録音が公開。100年以上前の彼の肉声を聞くことができたのは初めてのこと。

【ニュース解説】

ビスマルクといえば、19世紀にプロシアをヨーロッパの強国に育て、ドイツ帝国の初代宰相となった人物として有名です。
今回のニュースは、彼が 1889年に残した肉声が、Thomas Edison トーマス・エジソンの発明した蓄音機の録音用シリンダーに残っていたというものです。
Thomas Edison はアメリカを代表する発明家ですね。このビスマルクの肉声は、彼が発明した蓄音機のシリンダーの一つから採取され、デジタル技術によって restore つまり再生させて release 公開したわけで、これは、歴史上の人物の肉声としては最も古いものの一つなのです。

ところで、蓄音機は英語では phonograph ですが、これは音をあらわす phono という単語と、文字や図表を描くことを意味する graph (グラフ) が合体してできた言葉。graph はギリシャ語の「ひっかく」「こする」という意味の言葉に語源があり、昔は文字を刻んだり、顔料をこすりつけて表現したりしていたことから、図や文字で表現をすることを意味する単語として進化しました。
ですから、光を意味する photograph がつけば、photograph 写真となるわけです。このように、単語を分解し、語源から類推すれば、一つの単語を覚えただけで、様々な単語を連想しその意味を理解することができるのです。

さて、当時エジソンと彼の研究所は、蓄音機という新しい技術によって、いろいろな録音を残しています。面白かったのは、チャイコフスキーの肉声が収録されていることでした。チャイコフスキーはニューヨークのカーネギーホールの落成式に招かれて、1891年に渡米しています。おそらくその時に録音されたのもではと思うのですが、YouTubeでは 1890年の録音となっていました。彼の high-pitched voice、甲高い声は印象的。さらに、1889年にはブラームスの肉声がエジソンの技術によってウイーンで録音されているということも付け加えましょう。正にビスマルクの録音が行われたのと同じ年です。

当時のニューヨークは、現在のセントラルパークの南端あたりまで市街地となりはじめていました。
その後、ニューヨークは世界のショウビジネスの中心となってゆくのですが、その背景には、エジソン、あるいはスコットランドからの移民で電話を発明したグラハム・ベルなど、アメリカンドリームを実現した人物による発明によって、才能ある人がどんどん売り出されてゆくインフラが整備されたことと、無縁ではありません。
1907年には、イタリアオペラをプロモーションするために、プッチーニがニューヨークで肉声を残しています。
今回発見されたビスマルクの肉声は、アメリカで、発明がビジネスとして投資の対象とされ、その技術がマスメデイアや通信へと進化する直前の録音だったのです。

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