海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

竹島問題とドイツの戦後処理


【海外ニュース】

President Lee called on Japan to act like a big nation and take responsibility for its past misdeeds.(Korea Timesより)

イ大統領は、日本は大国として、過去の過ちにたいして責任をとるべきだと呼びかける

Many Koreans are up in arms over the International Olympic Committee’s (IOC) decision to bar Korean footballer Park Jong-woo from attending the medal ceremony after celebrating Saturday’s victory over Japan with a banner that read “Dokdo is our land.”(Korea Timesより)

多くの韓国人は、IOCが韓国のサッカー選手のパク・ジョン・ウーが、土曜日の対日本戦に勝利したあと、「ドクト-日本では竹島-は我が領土である」と書かれたスローガンを掲げたという理由で、表彰式に出席することを禁じられたことに憤慨している

【ニュース解説】

イ・ミョンバク大統領が竹島(韓国では Dokuto)に上陸したあと起きた一連の事件は、日韓関係を一気に冷却化させてしまいました。
そして、オリンピックで韓国のサッカー選手が竹島問題に関する政治的なスローガンを掲げたことが、五輪憲章に違反するとして懲罰の対象になろうとしています。この問題に韓国人が憤慨していることを、ここでは up in arms という言葉で表現し、angry を越えた憤りを露にしていることを表現しています。

私は竹島問題についてどちらの国の立場が正しいかについては、触れません。そのかわり、第二次世界大戦で日本と同じ立場で戦ったドイツの戦後の動向を紹介することから、この問題への一つの視点がみえてこないか考えたいと思います。

ドイツとフランスとの間には、長年に渡って領有権を主張するアルザス・ロレーンという地域がありました。またポーランドとの間にもドイツは自国の前身であるプロシアにからんだ領土問題が存在し、これらはいずれもナチスが支配するドイツが、近隣諸国と戦争をはじめる口実の一つとなりました。そして戦後、ドイツはユダヤ人虐殺や、様々な侵略行為を非難され、国土も2つに分断されたのです。

そんな背景を背負って、西ドイツは、冷戦の中で領土問題を外交のカードにはせず、言論の自由を保証する民主国家として再生しても、ナチズムだけは非合法とし、過去としっかり向き合う姿勢を貫きます。
西ドイツは、特に近代史を通して常に戦争を繰り返してきた隣国フランスとの関係修復に注力します。フランスが、ドイツが再び強国としてフランスの脅威にならないようにと、戦争を遂行するために必要な石炭と鉄鋼石を両国が勝手に使用できないよう、共同で管理するシステムを造ろうと提案してきたときも、その呼びかけに応じます。これが後にECとなり、EUへと発展する母体となりました。

領土問題の主張、戦前の行為へのエクスキューズを一切控え、アメリカとソ連との軋轢に翻弄されず、様々な外交カードが切れる強力な国家連合を、ライバルのフランスと共に立ち上げたのです。そして今、ドイツはそうしたEUの中で最も豊かで政治的にも影響力のある国家に成長できたのです。

韓国のイ・ミョンバク大統領は、丁度フランスとドイツのように、アメリカと中国とに挟まれる日本と韓国とが連携する重要性をよく理解した人物だと思います。その彼が、竹島訪問に踏み切った背景には、靖国問題や従軍慰安婦問題、さらに教科書問題や韓国が対象ではないにせよ、南京虐殺事件についての日本側の疑義の問題などを通して、ドイツのように振る舞えない日本への失望と、国内世論との板挟みによる苦渋の決断があったのでしょう。それが、最初の記事にある Japan to act like a big nation and take responsibility for its past misdeeds というメッセージに込められた指導者の思いなのではないでしょうか。彼のいう大国という言葉の意味を、このドイツの事例を参考にしながら、しっかりと噛みしめる必要がありそうです。
ちなみに、misdeed は mistake よりも強い過ち、すなわち犯罪行為のような過ちを指す単語なのです。

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