海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アメリカが抱える国際問題への介入のジレンマ


【海外ニュース】

Helping Syrian rebels a dangerous risk
(CNN より)

シリアの反政府軍を支援することは危険なリスクである

【ニュース解説】

ある専門家が、アメリカが戦争という人名と資金の投資をして、本当に元をとれたのは、太平洋戦争での日本に対してだけだったとコメントしたことがありました。戦争という悲劇を語るには余りにも不謹慎な表現かもしれせん。
しかし、この言葉が意味する彼らの本心にはアメリカの抱える矛盾が反映されているのです。

記事はアメリカとイラクとの関係をまず例にとります。
In the 1980s, former Secretary of Defense Donald Rumsfeld met with Saddam Hussein to establish a relationship that helped the dictator gain access to American arms during Iraq’s war with Iran.
この記事からも読み取れるように、1980年代には、元国務長官 former Secretary of Defense であったラムズフェルドが、なんとサダム・フセインと会談し、反米意識の強いイランへの対策のため、イランに敵対するイラクに武器の供与をすることで両国の関係を強化していたことが解説されています。
70年代から80年代の始めにかけて、イランではシーア派による革命が起き、反米政権が樹立されたのです。その結果イランのアメリカ大使館が占拠されたこともありました。この緊張を緩和しようと、ラムズフェルドは、イラクに接近したのでした。

その後、イラクは親米政権であるクェートに侵攻。これはアメリカにとっては大きな誤算でした。その結果サダム・フセインはアメリカの宿敵になってしまいます。ラムズフェルドはジョージ・W・ブッシュ政権で国防長官になり、今度はイラクとの全面戦争を押し進めたのでした。

では、なぜ父親のジョージ・H・W・ブッシュは、1990年から91年にかけての湾岸戦争でクェートを奪還しただけで、サダム・フセインを追いつめなかったのでしょうか。
“Once you got to Iraq and took it over, took down Saddam Hussein’s government, then what are you going to put in its place?” Today, Iraq is unstable and its future uncertain.
(もしイラクに侵攻し、サダム・フセインを失脚させ、イラクを手中に収めたら、そこをどうするつもりですか。イラクは不安定になり、将来が見えなくなるはず)
当時国防長官をしていた Dick Cheney ディク・チェイニーは戦後にそのようにコメントしていました。敢えて混沌とした中東の深みにはまらなかったのです。
実際、アメリカは、中東政策において常に二つの異なった方針を打ち出し、その結果混乱を招いているケースが見受けられます。
The United States has a history of often picking sides in Middle East conflicts to its own detriment.
CNN の論評では、二つの異なった方針を打ち出すことを picking sides という言葉で表現していますが、その結果状況が暗転してしまったケースが過去に多々あったのです。

サダム・フセインとの戦いもその一つ。この戦争で誰が一番得をしたかといえば、それはシーア派の国家であるが故にスンニー派であるサダム・フセインのリードしたイラクと対立してきたイランであることは間違いありません。
その結果イラクの中には混沌としたテロとの消耗戦が残り、一方でアメリカが嫌うイランは安定し、核開発をもってアメリカを牽制できるという恩恵にあずかったわけです。
こうしたことは、イスラム圏以外でも以前からありました。
朝鮮戦争への介入、ベトナム戦争への介入などがその典型的な例と言えましょう。朝鮮戦争では、アメリカは大量の人員と兵器を導入しました。しかし結果として中国の介入で北朝鮮が国家としてできあがり、未だに朝鮮半島には2つの国が存在しています。この戦争で一番得をしたのは、戦時需要で沸き立った日本と、北朝鮮への影響力という意味で、アメリカへの外交カードを維持している中国かもしれません。
ベトナム戦争ではさらに多くの犠牲を払いながら、結果として北ベトナムがベトナムを統一し、アメリカは撤退を余儀なくされました。

実は、20世紀後半以降、アメリカが戦争を行い、その利権を守ったのはパナマとカリブの小国グレナダへの介入のみで、他の大規模な戦闘では常に泥沼化する中で大きな傷をアメリカ自身が被ってきたのです。
アメリカが第二次世界大戦で日本を破り、そのことから、日本を同盟国として育てていった成功物語に依存しすぎた結果、その後のアメリカは、概ね連戦連敗の憂き目をみてきたのでした。
アフガニスタンでも、イラクでも、その状況は変わらず、未だにアメリアはテロの脅威にさらされています。
そうした中、現在シリアでは、ヒズボラやアルカイダというテロをも辞さない急進的なイスラム戦線が様々な形で政府軍を支援しています。これらのリスクを意識しながら、同時にアメリカは、シリア領内にあって、迫害の脅威にさらされているキリスト教徒への支援も考えなければなりません。

朝鮮戦争、ベトナム戦争、そしてイラク戦争のようにアメリカが全面介入すれば、逆に状況が泥沼化し、その結果、アサド政権に対抗する反政府勢力の中にもアメリカに対して敵愾心が産まれる可能性ですら否定できません。そうなれば、アルカイダなどの国境を越えたイスラム急進派の思うつぼとなる筈です。

こうしたあらゆるリスクと過去の教訓を踏まえながら、また、エジプトをはじめ、イスラム保守派が中東での勢力を盛り返すなか、オバマ政権がシリアにどのような対応をしてゆくか。その手腕が真剣に問われるときなのです。

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