海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

個人とビジネス、そして公的立場


【海外ニュース】

French president ducks questions over affair allegations
(CNN より)

フランスの大統領が不倫問題に関する質問をさらりとかわす

【ニュース解説】

フランスのメディアを新年早々にぎわしたオランド大統領 Francois Hollande の不倫問題。
事実婚 common-law wife の状態でファースト・レディともされているバレリー・トリユルバイレール Valerie Trierweiler さんは、この騒ぎに苦しんだのか入院中で、二人の関係には深刻なひびがはいっているといわれています。

この手の問題がおきたとき、常に議論されるのが公人のプライバシーの問題。そしてさらに個人の不始末と公人としての評価の関係はどうかということです。
アメリカでは、1998年にクリントン大統領とホワイトハウスの実習生モニカ・ルインスキーとの情事が報道され、マスコミに追いつめられた大統領が、improper relationship「不適切な関係だった」と情事を認めたケースがありました。
このとき、クリントン大統領はアメリカの景気の波にのって高支持率を維持していました。そして、世論の殆どは、大統領として公務をしっかりとこなし、実績をあげている以上、個人の問題は大統領の資質に影響なしというものでした。それは、Business is business (ビジネスはビジネス) として、プライベートと分けて考えるアメリカ人ならではの反応だったといえましょう。

そしてもう一つ記憶に新しいのは、2011年にイタリアの首相であったベルルスコーニ氏が17歳の少女を相手に売春を行ったとされるスキャンダル。これは、さすがに法的な問題もからみ、同氏の失脚に直接影響を与えました。

では、今回のオランド大統領とジュリー・ガイエ Julie Gayet さんとの「不適切な関係」についての、フランスの反応はどうでしょう。
Only 23% of those questioned for the survey, conducted January 10 and 11, considered it a public matter. (1月10日と11日に行われた世論調査によれば、これは公にされてもかまわないケースだとしたのは 23%にすぎなかった) と CNN では報道しています。加えて、13パーセントの人しか、今回のスキャンダルは大統領への評価へは影響を与えないとしているのです。

この 23%が高いか低いかということを考えるとき、現在オランド大統領がおかれている政治家としての逆風を考慮する必要がありそうです。
高所得者への増税などを掲げ、財政再建を目指したオランド政権ですが、経済政策では高失業率に悩まされつづけ、外交でも旧植民地である中央アフリカへの出兵の是非などに揺れ、支持率は22%と低迷しているのです。
この低迷した支持率の中で、不倫どころじゃないだろうとシニカルに笑うフランス人有権者の顔がみえてきます。

とはいえ政治家 (公人) の資質と私生活での評価とは全く別であるというのが、アメリカでもフランスでも大方の見方であるということは間違いないようです。
1989年に、芸者とのスキャンダルが暴かれたことが、辞任への引き金になった宇野元総理大臣のケースと、こうした欧米でのスキャンダルへの世論の対応を比較すると、そこに文化の違いを見せつけられるのは私だけではないでしょう。

表題の Duck とは、ちょうど鴨 (duck) が水にさっともぐってえさをとるように、問題から身をかわすことを意味しています。
年頭の記者会見では、本来なら今フランスが直面している様々な政治、外交、そして経済問題への質疑応答が行われるはずでした。しかし、冒頭から多くの記者が今回の不倫問題を取り上げようとしたのを受け、大統領は、
“These are painful moments, but I have one principle: Private affairs are dealt with in private. This is not the place nor the time to do this.” (「今は痛ましい状況だといえます。しかし、大前提は私生活は私生活で、この場はそうしたことを色々と云々する場所ではないはずです」) といって、この問題への質疑を終えたのです。

面白いのは、アメリカのオバマ大統領が、2月にオランド大統領をカップルで招待していることです。アメリカは、フランスと違い、より厳格なプロテスタント系キリスト教徒の多い国。多くの人は不倫は「罪」と意識しています。そんなアメリカの大統領が、海外の要人をカップルで招待するときは、招待状は大統領と婦人のミッシェル Michelle、つまり夫婦の名前で贈られます。
これに対して、オランド大統領がどのように対応するか、今メディアは注目しています。オランド夫妻は、2月11日に、ホワイトハウスの公式晩餐会に招待されているのです。

こうした一連の状況をみる限り、いかに私生活と公的立場を分けたとしても、その双方の場でオランド大統領が「針のむしろ」状態であることは、変わりはないようです。

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