海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アウンサン将軍の生涯に学びたいこと


【海外ニュース】

Abe’s Legal aide to be discharged for hospital soon
(安倍の法制局長が近く退院)

JCP not to field candidate in Osaka mayoral election
(大阪市長選で共産党は候補を擁立せず)

New Tokyo Gov Masuzoe to attend closing ceremony of Sochi Olympics
(東京の舛添新知事がソチオリンピックの閉会式に出席)

Peach stepping up efforts to hire pilots to boost flights
(路線拡充にピーチはパイロットの採用を拡大の用意)

Toshiba to invest 50 bil yen in infrastructure business in Indea
(東芝はインドのインフラビジネスに500億円を投資)

(New Light of Myanmar より)

【ニュース解説】

New Light of Myanmar の 2月16日付けの World コーナーの5面には6つの記事が掲載されていました。そのうち日本関連が5つ。そのヘッドラインをここに列挙しました。

まだまだ本格的な英字新聞のないミャンマーにあって、New Light of Myanmar は政府系のエージェンシーを通したニュースを中心とした記事を掲載する新聞です。記事は政府のプロパガンダ propaganda が多く、決してジャーナリズムにのっとった新聞ではありません。そんな紙面の多くが、このように日本のことに割かれている背景から、ミャンマー政府が日本からの投資にいかに期待しているかが読めてきます。政府の指示だから、なんでも日本のことなら載せなければという、余り意思のない記事の羅列がこの紙面から読み取れます。

確かに同国への日本の投資は増えています。
私も、そんな日本企業の進出にあたり、いかに日本人と仕事をするかというテーマでの現地の人向けの研修のため、首都ヤンゴンから北に飛行機で一時間飛んだマンダレーにやってきました。

マンダレーは、ミャンマー第二の都市。日本でいえば京都のような町で、ミャンマー最後の王朝の都も、ここにおかれていました。観光シーズンは結構賑わうのですが、私が到着した2月中旬は、そんなシーズンもそろそろ終わり。しかし、市内のホテルでは金曜日から日曜日まで、連日庭を借り切ったパーティーが続き、夜遅くまでレストランは満杯の状態でした。
「あれね。軍人の娘が結婚したためだよ」
タクシーの運転手が私にそう吐き捨てるように言ったことが印象的です。軍事政権下のミャンマーで、特権を持つ軍人に比べ庶民は決して豊かでありません。しかし、大きな違いはこうした政治や特権階級への不満を、人々が堂々と口にしている現状の変化です。
「お客さん。知っているかい。彼らはキャッシュをたんまり家に隠している。俺たちがこんなに働いても、僅かしか稼げないのに」

こう言ったのはマンダレーの別のタクシーの運転手。そして、彼らの間にアウンサン・スーチーの人気が根強いことも、実感します。
「アウンサン将軍は同じ軍人だった。でも彼は民衆からお金をとったり、利権を享受したりはしなかった。スーチーさんはあの将軍の娘だから、きっと俺たちを助けてくれるよ」と彼は付け加えます。

我々がミャンマーのことを考えるとき、このアウンサン将軍と日本との関係を理解しておくことは重要です。
アウンサン将軍は、イギリス統治下にあって、ミャンマーの独立運動を指導した若き戦士です。第二次世界大戦下では、日本の援助で対英戦線を指揮し、独立国家を樹立します。しかし、それは結局日本の傀儡に過ぎなかったのです。そこで、アウンサン将軍はイギリス側に内通し、抗日戦線を展開したのでした。
第二次世界大戦が終了すると、将軍は自らの軍事教練を行った日本軍の将校の戦犯訴追に激しく抵抗し、救済します。そして、イギリスに対して、再び激しく独立を迫るなか、1947年に 32歳の若さで、暗殺されてしまったのです。イギリスの暗躍が疑われたのはいうまでもありません。

今、ミャンマーはアジア最貧国の一つで、マンダレーのような地方中核都市でも、日本の携帯電話は使えず、インターネットも充分に機能していません。インフラの整備が遅れ、物価も極めて安い状態です。
しかも、民主化への期待のなか、海外からの投資が急速に進みながらも、先のタクシー運転手の言葉のように、軍人政権への市民の不信感には根強いものがあります。さらに、国の西部ではイスラム教系の人々と仏教を信じる人々との対立も顕著で、新たな火種ともなっています。

安く買い、高く売るのがビジネスの基本であるなら、今は正にミャンマーは買い時。それだけに、終始親日的であったアウンサン将軍が日本に幻滅した経緯を思い出し、それを教訓とした思いやりのある投資が今日本に求められていることは、いうまでもありません。
「タイの政情不安。このことは、ミャンマーにも大きな問題なんです」
私のビジネス上の関係者が、現地でこのように語ってくれました。
「多くの人が、タイを経由してミャンマーに来ますよね。ですから、今度の政情不安でミャンマーへの観光客は激減。しかも、軍事政権の行方が見えないミャンマーへの投資を疑う人もいるんです。タイのような政情不安があるのではと危惧してね」

ミャンマーの人は基本的に親日的で、その穏やかな国民性からも日本と親和性がありそうです。それだけに、政治的な変化を乗り越え、一時のブームに流されない、腰を据えた関係造りを今こそ進めたいものです。

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