海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アベノミックスがポキッと折れた


【海外ニュース】

Japan to dissolve parliament, hold snap elections after news of recession
(CNNより)

「不況」のニュースに日本は衆議院を解散し、予期せぬ選挙に

【ニュース解説】

今週発表された日本での衆議院解散のニュースは世界でも大きく取り上げられています。その中で、CNNニュースでの snap elections という表現を、アナウンサーが何度も使用していたのが印象的です。snap はいきなりポキッと折れるという意味で、予期せず、物事が頓挫することを意味しています。

この表現は、そのまま世界の当惑を意味しています。あれほど勢い良く日本の再生を表明し、強く復活した日本の顔として外遊にも積極的であった安倍首相が、いきなり陸上競技のトラックの上で転倒したような印象を多くの専門家がもっているのです。

Abe also announced an 18-month delay in a controversial sales tax hike during a press conference Tuesday.(安倍は増税の実施を予定より 18ヶ月遅らせることもその理由であると火曜日の記者会見で述べている)としています。

私は、長年海外メディアの日本関連の報道をおいかけていますが、この snap という言葉には、彼らの心理がとてもよく表されていると思います。
つまり、日本のこれまでの行為が、「独りよがりの一人芝居」であるという印象を、多くのジャーナリストや専門家が感じているように思ってきたからです。それを象徴しているのが、この snap という言葉なのです。

日本人にとって一貫性のあるように思える「経済再生」のアドバルーンが、海外からこのように冷めてみられるのは何故でしょうか。
それには大きな理由があります。それは、今までの海外への経済政策などへのアナウンスが、世界との「行き来」というインターラクティブ interactive なベースに従ったプロアクティブ proactive な行為でなく、日本人が日本の目だけでみて、ただ勝手に世界に語っている「経済再選プラン」に過ぎないように見えるからです。

例えば、円安誘導からくる輸出の促進をしたいというアナウンスと、国際化で企業が海外投資によって資産の多くを海外に移しているという実情が矛盾していることは、よく指摘されていました。
ここをプロアクティブに考えるなら、同時に海外からの日本への投資を促進し、特に地価や人件費が下がっている地方への外資の工場や流通センターの誘致が重ならなければ、政策は海外からみてもインターラクテフィブに思えません。

増税による国家財政の増収も、上記の経済対策と対応して海外からの人材や労働者の導入と、彼らが積極的に納税でき、同時に優遇も受けられるよう、日本の受け入れ態勢の充実と、移民法の改正いったテーマの解決とそれに向けた PR が極端に不足しています。

海外から観光客を増やすという対策を国内では実施していますが、世界でも最も富裕層の集まるアメリカはロサンゼルス郊外の高級住宅街に住む友人によれば、日本への観光客の誘致に関するコマーシャルなどは一度も見たことがなく、いまだに東京は物価が高く、日本でどこを見たらいいかという PR も他の国に比べれば極端に不足しているということです。
これは、私も韓国やアイルランド、中国、マレーシアなどの国々をはじめとした海外での国家の PR 活動と比較しても、実感として理解できます。

役人の役所の中だけの政策が、役所という壁の外でネオンサインになっていないのです。さらに、先の「海外からの投資」というテーマでも、観光客の誘致と同様に、世界に向けて日本の魅力と日本に投資するメリットが全くアナウンスされていないのです。そうした世界の目からの現実を、日本のマスコミが非力過ぎ、全く気付いていないことも問題です。

今、日本の地方都市はシャッター通りが多く、実際に賃金レベルや地価レベルでは世界の「並」なレベルです。それが、企業家の集まるロサンゼルスの高級住宅街で、「日本は高く、コミュニケーションも難しい」という印象が蔓延していれば、投資政策どころの話ではないのです。

だから、アベノミックスを説きながら、世界に顔を見せようと歩き回りながら、それでいて韓国や中国とも緊張を促進した現政権がいきなり解散へと進んでいる姿を、「snap」と彼らは表現したのです。
世界に向けた一人での無言芝居 pantomime が続いているのです。

この不可思議 inscrutable な状況を変えてゆくには、ただ一つ、日本人の官僚や政治家、大手のマスコミが、一番苦手な、海外への PR や交流のあり方を根本的に考えなおしてゆく必要があるのではないでしょうか。

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