海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

イスラム国の影:ロンドンを震撼させた4人の少女の失踪事件


【海外ニュース】

She loved Rihanna, clothes and make-up. Then she fell under the spell of Islamists: Jihadi girl‘s father tells how shadowy ISIS extremists targeted his daughter‘s iPhone.
(Mail On-Line Newsより)

「彼女はリアーナのファンで、洋服やお化粧が好きだった。それがイスラム原理主義者の呪文にかかり…」少女の父親は、イスラム国の過激な人物が、いかに影のように不気味に自分の娘の iPhone を通して彼女に接触してきたかを語っている。

【ニュース解説】

ネット社会に晒されている子供達が、犯罪やその被害者として悲劇に巻き込まれるケースは、日本でも大きな問題になっています。
川崎で中学一年生の上村さんが殺害され、日本中が何故未然に事件を防げなかったか悔やんでいた頃、イギリスでは4人の少女の身に、SNS が普及する以前では考えられないことがおきていました。

Sharmeena Begum は 15歳のどこにでもいる少女だったと、バングラデシュ出身の父親は語っています。
彼女はロンドンの北東部、イーストロンドンに父親と一緒に暮らしていました。2013年に母親が癌で他界。まだ 30代だった母親の死は、彼女に大きな衝撃を与えたということです。その後、Sharmeena は次第にライフスタイルを変えてゆきます。彼女のルーツであるイスラム教に興味を持ち、服装もイスラム風に変え、モスクに通うようになりました。

父親は、そのこと自体は気にしていませんでした。
元々イスラム教を信仰する一家であれば、少女がよきイスラム教徒になることを、父親はむしろ望んでいたのでしょう。
しかし、彼女は次第に狂信的なイスラム教信者とコンタクトをとり始めます。何らかの方法で、SNS を通してイスラム国の関係者、あるいは信奉者が彼女に接触してきたのです。
去年の 12月、Sharmeena はその後警察に拘束された人物と接触。その人物の手引きで、ロンドン郊外のガトウィック空港からトルコ経由でシリアに去っていったのです。父親には、もう帰らないというメッセージを残して。
Sharmeena は、現在イスラム国 (ISIL) の拠点であるシリアのラッカ Raqqa にいると専門家は分析しています。

しかし、事件はそれだけでは終わりません。
彼女には3人の親友がいました。
Sharmeenaの失踪後、父親は彼女らに異変がないかどうかチェックしたほうがよいと、警察に話したのです。そして警察も一応警戒はしていました。
しかし、2月27日に Amira、Kadiza そして Shamima という3人の少女は、Sharmeena を追うようにトルコへ渡航。そこからシリアへと国境を渡り、消息を断ったのです。
学校も警察も、この4人の少女の周辺におきた異変を充分にモニターできませんでした。なぜ、娘の失踪後、関係者は私の不安にちゃんと向き合ってくれなかったのかと、Sharmeena の父親は嘆きますが、今となってはどうにもなりません。

先週事件は新たな展開をみせました。
3人の少女がエージェントとおぼしき男に接触し、シリアに向けて越境しようとしている鮮明な映像が公開されたのです。
この映像を撮った男は、トルコ当局に拘束され、ISIL に関連して活動しているカナダのエージェント (諜報員) だと名乗っているということですが、真相は不明。もちろん、カナダ政府はその男との関係を否定しています。

4人の少女の失踪事件は、社会に大きな衝撃を与えました。
彼女達は、携帯や SNS で連絡を取り合い悲劇へと手を取り合って突き進みました。学校も両親も、そして警察もその実情を把握できなかったのです。
しかし、ISIL の関係者、そして彼らの活動を支援する Jihadist と呼ばれる人々は、たくみに少女たちを勧誘し、拉致していきました。
その目的はさだかではありません。彼女らを洗脳して、彼らの活動のために利用するためか、それとも単に西欧社会を震撼させるためか。憶測はあるものの回答は見いだせません。

これは、日本人にとって遠い国の話でしょうか。
成長期にあり、様々な不安や精神的な動揺に晒されがちな 10代の子供の心理を利用し、カルト的な宗教や犯罪組織へと誘い込むことは、いわばクラシックな犯罪の手口です。まして、子供たちも SNS で大人から隔絶したネットワークを持ちうる現在、日本でも ISIL の勧誘も含め、同様な事件がいつおきても不思議ではないはずです。
まさか日本でという心の隙こそが、大人が最も注意しなければならない油断なのかもしれません。

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