海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

日本は知るべきエジプトの不満。超大国の思惑の狭間で


【海外ニュース】

Foreign countries did not heed Egypt’s calls for greater coordination to fight terrorism and have not shared intelligence with Cairo about the crash of a Russian passenger plane last week, Foreign Minister Sameh Shoukry said on Saturday.
(New York Times より)

諸外国はエジプトとテロとの闘いにおいてエジプトの意図を留意しない。そして先週のロシアの航空機の墜落事故でも情報を共有していないと(エジプトの)サメショークリ外務大臣は土曜日にコメント

【ニュース解説】

今日、アメリカのビジネスパートナーとフェイスタイムで話し合いました。
そして彼は、近いうちに一緒にイランに出張し、中東が穏やかであればレバノンに寄って一緒に仕事をしようと誘ってくれました。

ロシアの旅客機が墜落し、それがテロによるものではないかという憶測が流れています。残念ながら中東はなかなか平穏にはなりません。
今、アメリカはこの中東問題ではロシアと、東南アジア地域の島々の領有権問題では中国と鍔せり合いを繰り返しています。

アメリカは戦後、世界の警察官とまでいわれていたように、その軍事力と経済力とで国際政治をコントロールしてきました。
しかし、世界が戦後復興し、アジアなどの経済が伸長する中で、今まで通りアメリカが世界に影響力を行使できなくなってきています。それだけに、中東問題への強い姿勢や南シナ海での中国の進出に楔を打つことは、アメリカの世界戦略の維持という意味からも、絶対にひくことのできない、重要な課題となっているのです。

ロシアからみるなら、そんな必死なアメリカに対して、自らのプレゼンスをしっかりと打ち出して対抗する必要があります。そこで、混乱するシリアを救済し、元々彼らと強い同盟関係にありながら、アメリカなど西側諸国から独裁体制を批判され、引導を突きつけられているシリアのアサド政権を崩壊から救おうと考えます。そのためには、ISISといういわば世界の共通の「敵」への軍事行動をもってシリアそのものに介入してゆくことが、最善の戦略だったわけです。

一方、目を東に向け、中国に焦点をあててみるなら、元々ベトナム戦争などの過去の経緯からアメリカが軍事的に介入しにくいベトナムや、一度アメリカとの軍事同盟を希薄にしたフィリピンなどの状況を利用して、露骨に南沙諸島の領有権を奪ってゆくことは、尖閣問題をも含めたこの海域でのアメリカの影響力を決定的に排除する最も有効的な手段だったといえそうです。

ユーラシア大陸の西と東とで同時に発生しているこの二つの摩擦からは、あたかもロシアと中国とが密約によって動いているかのような奇妙な一体感を感じてしまいます。

そうしたときにおきたロシアの航空機の墜落事故。
アメリカは即座にその原因を諜報します。ところが、彼らはロシアを意識し過ぎ、テロによる攻撃であった可能性を異常な早さでエジプト政府などへの事前通告なしに公にしてしまいました。
これにはもう一つの当事者であったエジプトが、自らが置いてきぼりにされていると当惑します。というのも、今回の事件は犠牲者はロシア人ですが、エジプトの空港を離陸し、エジプトの領空内でおきた惨事だったのです。
つまり、アメリカは建前でもエジプトと連携した事故処理と対外対応をするべきだったのです。今回のアメリカのテロ関与の可能性ありという政府見解の発表は、それが事実であったとしても、エジプトへの気遣いを忘れたフライングだったように思えます。

ロシアの航空機墜落事故でのエジプトの状況に、南沙諸島の問題での沖縄や日本の立場を重ねてみると、ロシア、中国、そしてそれに対抗するアメリカという超大国同士の対立の中で、ともすれば当事者でありながら国々が蚊帳の外におかれかねない点で、共通項があるようです。

アメリカにとって、日本もエジプトもそれぞれの地域での戦略拠点であり、日本とエジプトからみても、アメリカは重要な同盟国となります。しかも、中国やロシアと比較した場合、我々にとってアメリカは民主主義や言論の自由、人権の尊重等、イデオロギーの上でも価値観を共有できる同盟国であることには変わりありません。しかし、これとは全く別の次元で超大国同士の利害の対立が、周辺の国々に思わぬハレーションとして返ってくることもあるのです。

伝統的にアメリカのビジネス文化は個人主義によって裏付けられます。つまり、彼らは自らのニーズによってどんどん動くことに日本ほど躊躇はありません。つまり他国や他人に気を遣うのではく、気になる方が積極的に働きかけてくるべきだという発想が、アメリカの政治、ビジネス文化の中には伝統的にあるのです。ですから、日本側も積極的に日本のニーズを伝えない限り、阿吽の呼吸ではアメリカはそのニーズに気付いてくれません。
安全保障の問題でも、集団的自衛権などという前に、日本がアメリカに何を求めているのかという強い要求を明快に伝えてこそ、アメリカはそのニーズに気付き、同盟国として配慮してくれるのです。
エジプトと同じようなアメリカのフライングに晒され、さらにその後で集団的自衛権での義務の履行を求められたとき、日本は中国やロシアを含め、様々な国の思惑の中で思わぬ苦境に晒されてしまうのです。

今回のロシア機墜落という悲劇を巡るそれぞれの国の動きを見詰めるとき、それがそのまま日米関係へも投影されているということをどれだけの人が実感しているのでしょうか。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。

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