カテゴリー別アーカイブ: その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

異文化ビジネスコンサルタント・山久瀬洋二の「その一言が!乗り越えよう異文化摩擦」 4000名以上の企業エグゼクティブへのコーチ、コンサルティングの内容を、実際の質問やアドバイスの実例にそって紹介。海外でのビジネス、留学、時には旅行などでも実際に起こる異文化が故のコミュニケーションの課題、誤解のプロセスについての、実践に即したアドバイス集です。是非皆さんからの実例やニーズも、私の Twitter にコンタクトしてください。日本人にとってのグローバルなコミュニケーションのあり方について、ご一緒に考えてゆきたいと思います。

異文化での誤解は喜劇そのもの、そしてそれは深刻な悲劇

“Life is a tragedy when seen in close-up, but a comedy in long-shot.”

「人生は近くで見れば悲劇だが、遠目に見れば喜劇である」
Charles Chaplin(1889-1977)

 文化が異なれば、人は異なる行動様式を持ちます。
 ですから、そんな行動様式に支えられたコミュニケーションスタイルも、自ずと文化によって異なってきます。
 そこから発生する摩擦は、このチャップリンの言葉の通り、一見滑稽でそれをネタにすればジョークにもなり、一人でクスクスと笑ってしまうこともあります。しかし、そんな摩擦に見舞われた本人にとっては、それが実に深刻なケースとなっていることも多いのです。

* * *

ケース1:アメリカ人彼氏と日本人彼女

 ここに一つの事例を紹介します。
 
 私のアメリカ人の友人が、日本に滞在していたときのことです。彼は一人の日本人の女性と仲良くなり、付き合うようになりました。
 ある日、二人はビーチに行き、夏の海を楽しみます。そして夕暮れ時に、彼はちょっとムードを盛り上げようと、夕日を見ながら、

「こんな美しい夕日をずっと一緒に見ていたいね」

と彼女に語りかけました。
 彼女は「うん」と頷いて、彼の肩に寄り添います。
 その翌週のこと、彼女は両親に会って欲しいと彼に言うのです。
 どうしてだろうと彼は思い、彼女に聞いてみると、彼からプロポーズをされたものと彼女は思い、両親に相談をしたと言うのです。
 私の友人は、そこまで真剣に彼女と付き合ってはいませんでした。それで、戸惑いながら「ちょっと待ってよ」と言うと、彼女は当惑して目からは涙。結局、二人はその行き違いがもとで別れてしまいます。これは実話です。

 ここで、問題になった「こんな美しい夕日をずっと一緒に見ていたいね」の一言は何だったのでしょう。
 日本人はコミュニケーションをするとき、とかく婉曲になってしまいます。直截に物を言うよりも、一呼吸置いて、比喩や周辺の様子などを語りながら、言いたいことを間接的に伝えることが多いのです。むしろ、そのようにした方が言葉に重みがあると思う人がいるほどです。
 それに対して、英語を母国語とする人は、直接語る内容をそのまま相手に伝える習慣があります。ですから、「夕日を見ていたい」というのは、本当に「一緒に美しい夕日を見て、またいつかこんな機会があればいいのに」と、言葉通りに自分の思いを直接伝えたに過ぎないわけです。
 しかし、日本人のガールフレンドはそのようには受け止めませんでした。彼が婉曲にプロポーズをしたと思い込んだのです。
 
 この話を聞いたとき、そこに集まった友人はみんな大笑いをしました。そして、お前は悪い奴だよねと彼をからかいました。そう、このエピソードは遠くから見れば喜劇なのです。しかし、彼女は傷ついたはずです。もしかしたら、私の友人に裏切られたと思ったかもしれません。彼女にフォーカスしてこのエピソードを見れば、それは深刻な悲劇です。
 

ケース2:ドイツ人上司とアメリカ人部下

 もう一つの実話を紹介しましょう。
 
 これは、アメリカに駐在したドイツ人マネージャーの話です。ドイツではビジネスとプライベートを、アメリカ人よりもはっきりと区別します。よほど気の合った相手でもいない限り、ビジネス上の関係者と食事に行くことはありません。ビジネスはビジネス、プライベートはあくまでもプライベートなのです。しかも、ドイツ人はアメリカ人のようにあまりジョークを言わず、ビジネス上のミスに対して細かく指摘しがちです。
 そんな異なったビジネス文化があるために、そのドイツ人マネージャーはどうしてもアメリカ人の部下とうまくコミュニケーションがとれないのです。その悩みを友人に相談すると、友人はアメリカでは相手に注意をするときでも、まず相手の良いところを褒めなければダメだよとアドバイスしたのです。それは確かに正しいアドバイスでした。
 
 しかし、問題はその翌日に起こります。
 彼は、出社してきた彼の秘書に、彼女がアレンジをしたスケジュールのミスを注意しようと思っていました。しかし、アドバイスの通りにまずは褒めようと思い、

「今日はとても綺麗なスカーフをしているね。素敵だよ」

と言って、にこりとしたのです。

 さて、アメリカ人の秘書からしてみれば、普段仕事で褒められることもなく、嫌な上司だと思っていたわけです。しかし、彼は彼女の服装のことを褒めました。ということは、彼は彼女にビジネスのパートナーではなく、女性として接しているか、あるいは別の意図があってそんな風に言ってきたのではないかと思います。その翌週、彼女は会社を辞めてしまいます。その後、ドイツ人のマネージャーに対してセクハラ訴訟を起こしたのです。
 
 この話も、アメリカ人とドイツ人の行動様式をよく知っている人から見れば、滑稽極まりない喜劇です。しかし、本人たちにとって、これほど深刻な悲劇はありません。
 

 我々は、文化の違いに起因する習慣やコミュニケーションスタイルの相違から、多くの誤解を相手に与えています。それはお互い様ですが、問題はどちらもそれが文化の違いだと気付かずに、相手の性格や悪意と解釈して、相手を誤って評価してしまうことにあるのです。
 国家間の摩擦の多くは、こうした行き違いに端を発して、それが深刻な誤解へと繋がってしまうのです。
 確かに、喜劇こそは、最も深刻な悲劇なのです。
 

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その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

日本人が知っておきたい国際舞台でのタブーとその回避術とは

Offer your information voluntarily to create a comfortable environment to work in the global community.(山久瀬 洋二の Twitter より)

自らの情報を積極的に語り、世界の人と働きやすい環境を創造しよう。

北アイルランドに進出している国際企業の多くに規則があります。
それは、会社の中で政治の話題をもちださないこと。このタブーをおかすと解雇されることもあるのです。
どうしてでしょうか。
北アイルランドでは、イギリスからの分離独立運動が伝統的にあり、それがテロ行為にまで発展した経緯があります。しかも、この対立の背景にはカトリックとそうでない人々との宗教上の確執もあるために事情は複雑です。
そして、イギリス側に立つ人と、独立した上でアイルランドに帰属したいと思うこれらの人々が同じ職場に混在しているのです。
北アイルランドの職場でそのタブーを破ると、会社が深刻な混乱にみまわれてしまう可能性があるのです。

最近話題になっているスペインでのカタロニアの独立問題についても同様です。スペインではカタロニアのみならず、北部のバスク地方にも独立運動が根強くあります。こうした事例は世界のいたるところでみられます。

このように、海外では政治の話題を職場に持ち込むことは非常識な行為とされるケースが多いのです。

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その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

英語を使って意思を伝えるとき知っておきたいことがあれば教えてください。

エグゼクティブ・コーチング(36)

我々が文化背景の異なる人と意思疎通をするとき、相手の国のことばができればとよく思います。英語が苦手な人は、英語さえできればと嘆くわけです。

しかし、実際は英語ができても、相手のコミュニケーション文化が理解できないかぎり、思うように意思疎通はできないのです。
海外の人が日本人とビジネスをしたとき、どこが一番困難かと聞いてみると、多くの人が、「日本人とは情報が共有できないんです」と苦情をいいます。
そこで、日本人にきいてみると、日本人なりにしっかりと相手に自分の意思や意図を伝えているのに、相手がそれに対して期待通りに動いてくれないんだと、逆に悩んでいることが多いのです。

つまり、日本人は英語を使ってちゃんと伝えたつもりなのに、海外の人にはそれが伝わっていないということになるわけです。であれば、そこから思いもよらない誤解が生まれる可能性があります。
実際、このことが原因で、日本人が「なんでお願いしたことを、ちゃんと実行してくれないんだ」と文句をいい、それに対して、「あなたの指示が曖昧なので、私は私の判断で物事を進めたまでだ」と応酬されるなどといった行き違いがあちこちでおきているのです。

この行き違いの原因は英語に起因するのでしょうか。
それを分析するためには、英語力そのものではなく、我々日本人がどのように英語を使っているのかを考えてみる必要があるのです。

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アメリカ (欧米) との交渉術について特に知っておきたいことを教えてください。(その1)

エグゼクティブ・コーチング(35)

今ほど、アメリカのビジネスカルチャーについて真剣に理解しなければならない時はないと思います。
それは、何と言っても、アメリカのビジネスの中でも最も保守的で、かつアメリカのビジネスマインドを行動原理としているドナルド・トランプが大統領になっているからです。

例えば、アメリカ政府は、円安を誘導する日本を強くけん制しています。その一方で、日本はとても大切な同盟国として、北朝鮮や中国の脅威に対する連携を約束します。そして、同時に中国には今後信頼関係を築いてゆくと発表します。複雑な国際政治や経済関係の中で、過去にもアメリカは同様な一見矛盾したアプローチを続けてきましたが、これからはさらにそうした傾向が強くなるはずです。

では、この背景にあるアメリカ人のビジネスマインドとはどのようなものでしょうか。
まず、理解しなければならないのは、アメリカはモノクロニック monochronic なアプローチをとる国民性があるということです。モノクロニックとは文字どおり「単色的な発想」ということを意味しています。
常に、背景の異なる移民社会の中で育ってきた彼らは、メッセージはできるだけ単純に明快に伝えたがります。例えば、同じ交渉相手と複数の課題について打ち合わせなければならないとき、それを一つ一つ別の議題として、分離して、個々に分けて片付けながら前に進みます。
それに対してアジアの多くの国々は、ポリクロニック polychronic です。
例えば「恩と義理」という概念が日本人にはありますが、恩があれば自動的に義理が発生するわけで、人々は恩と義理とを同時に話し合い交渉することが可能です。
しかし、こうした複数のことを同時に混合させながら進行させるやり方は、複数の価値観が絡まり長年にわたって文化を形成してきた人々特有の発想法なのです。

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エグゼクティブ・コーチング(34): 日本人の「おもてなしの精神」って本当に海外に売り込めるのですか?

東京オリンピックが近づくにつれ、日本をどのように PR するかと、多くの団体が取り組んでいます。
ただ、このところ、とても気になることがあります。
それは、オリンピック招致の頃から、やたら日本人の「おもてなし文化」や、伝統工芸での「匠の心」などといった事柄が、大げさにアピールされていることです。

最近地下鉄で、「東京はミュージアム」と題して、東京という都市自体が日本人の「人を気遣う心」の生きたミュージアムだという趣旨の広告を目にしました。
人々がきちんと整列をして電車に乗る様子、渋谷の交差点ですれ違うとき傘をすぼめてゆずり合う人の姿などが動画で紹介され、日本人の人を思う心をアピールしているのです。

実は、こうした取り組みにうんざりしている外国人が多いことに気づいている人は意外と少ないようです。
冷静に考えてみましょう。自分が何かよい行いをしたとします。そうですね、通勤電車でお年寄りに席を譲ったとしましょうか。その行為をあなたは人に自慢して、「私の人を気遣う心の美しさ」と言ってまわるでしょうか。また、もし自慢したら、それを聞いた人はどうリアクションするでしょうか。

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