【海外ニュース】
The inventor of the iconic AK-47 assault rifle, Mikhail Kalashnikov, has died at the age of 94.
(ロシアタイムズ紙より)AK-47伝説の急襲型ライフルAK-47の発明者、ミカエル・カラシニコフ氏が94歳で逝去
【ニュース解説】
カラシニコフというと、今世界で最も流通している自動小銃です。元々ロシアで開発されたこの殺傷兵器は、扱い易く、耐久性にすぐれているということで、今や世界中で使用され、アルカイダなどの武装集団の手にも多くはわたっています。
この武器の親、カラシニコフ氏が、12月23日に亡くなりました。
彼は旧ソ連、そしてロシアにとっての英雄でした。
しかし、この新聞でも His ingenuity earned him widespread admiration, but his legacy became more controversial when his weapons were used in some of the world’s bloodiest conflicts.
(彼の天性の才能は、広く賞賛されている。しかし、彼の残したものには評価がわかれている。というのも、カラシニコフは、今世界で最も血なまぐさい地域で使用されている武器なのだ)とされているように、彼の業績への評価は別れています。
富農の子供とはいえ17人目の子供として1919年に生まれ、高校も卒業せず、全て自学自習で技術を学んだカラシニコフ氏。この銃を制作した動機は、第二次世界大戦でドイツ軍との闘いで負傷したおりに、敵の武器の殺傷能力の高さに衝撃を受けたからだといわれています。ですから、もし、彼が「祖国の危機」に接して負傷しなかったなら、平和的なものの開発に自らの能力を注ぎ込んだはずだと、彼自身は述懐していました。
“I invented it for the protection of the Motherland. I have no regrets and bear no responsibility for how politicians have used it. I’m proud of my invention, but I’m sad that it is used by terrorists,” he said once.
(私は、祖国の防衛のために、この発明をした。だから私は何も悔いていない。そしてそれを政治家達がどのように使おうと、それは私の責任ではないよ。もちろん、発明をしたことは誇りに思う。でも、それがテロリストによって使用されていることを聞くと心が痛む、と彼は以前話していた)と、同紙は紹介しています。無慈悲なナチズムから祖国を守るために開発した銃とその発明者。ダイナマイトを発明し、それが世界中で戦争の道具として使用されたことを悔やんだ、ノーベルの話を思い出します。
戦後武器商人によって、カラシニコフは世界の紛争地域に紹介され、今尚、実戦に適した武器として広く使用され、闇のマーケットでも取引されています。そして、この銃によって殺害されたり、恐怖や苦痛を受けたりした人は数えきれません。生涯質素なライフスタイルを通したというカラシニコフ。彼は、愛国者 Patriot で天才 Genius であると同時に、悪役 Villain としても、世間で評価されていると同紙はさらに解説していました。
ロシアにとって、カラシニコフの生きた時代は、本当に終わったのでしょうか。
ソ連が崩壊し、ロシアが新たな道を歩みだして既に22年。
多くのロシア人は、世界が未だに旧ソ連のイメージとロシアを重ねていることに違和感を持っています。この事実は、今年ロシアで仕事をした私にとっても印象的でした。今のロシアは、アメリカと変わらないよと、ある人は私に強調します。
しかし、一方でプーチン大統領の長期政権が続く中、彼が次から次へと政敵を排除し、時には罪に問い、時にはそんな人物が海外で殺害されたのではという憶測が流れているのも事実。中央政府が多くを管理し、統制しようとするロシアの現実もまた見えてきます。
ソ連とカラシニコフ。このイメージが過去のものになることを、ロシアの多くの人が望んでいる中で、これからどのようにロシアという大国が変化するのか。来年もさらにそうしたテーマを注視したいと思っています。
そして、日本。この記事を書くにあたって、会社の若い人に、「AK47 を発明した人が亡くなったよ」というと、「え、秋本さんが?」という答え。「それって AKB48 でしょ。違うよ、カラシニコフのこと」
「何ですか。それ」
こうした会話が交わされることこそ、日本が平和である証拠。
しかし、この会話の背景にある過去への忘却こそが、危険な未来を産み出す警鐘でもあるということを、今年の最後の記事の中で、強調しておきたいと思います。皆さん良い新年をお迎えください。