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アメリカ大統領選挙の争点とは

【海外ニュース】

Vice President Joseph R. Biden Jr. and his associates have begun to actively explore a possible presidential campaign, which would upend the Democratic field and deliver a direct threat to Hillary Rodham Clinton. 
(NY Timeより)

ジョセフ・バイデンと彼の関係者は、大統領選挙への出馬を積極的に検討。これは民主党の大統領選挙への大きな変化となり、ヒラリー・ロッダム・クリントンへの直接の脅威となるようだ

【ニュース解説】

来年のアメリカでの大統領選挙 a presidential election を巡っては、共和党 The Republicans ではメキシコ系移民の排除などを歯に衣着せず言明し、毒舌によって却って人気を集めている Donald Trump が、どちらかというと穏健派として知られる Jeb Bush を脅かすなど、その混戦模様が話題となっています。

そうした中で、民主党 The Democrats はといえば、圧倒的な人気を博す、Hillary Rodham Clinton がアメリカ発の女性大統領を目指して独走しているような印象を与えていました。しかし、ここにきて、現職の副大統領の Joseph R. Biden Jr が立候補するのではという憶測が流れ、状況が一挙に混沌としてきたのです。

こうした状況の中、今回の大統領選挙の争点について考えてみましょう。
私は、今回の争点は一言、「本音と理性」との闘いなのではと思っています。

では、本音とは何を意味しているのでしょうか。
例えば、あなたがもし「白人の男性」、しかも中産階級に属しているとします。すると、あなたは仕事の上でも、日常生活ですら「平等」という概念に常に過敏に反応しなければならないという重圧を感じます。
つまり、元々社会的に優位な地位にあった白人であり、かつ男性であるあなたは、そうでない人種を差別していないことを常に行動で社会にアピールし、女性に対しても、気を遣って法に触れず、社会からも制裁を受けないように行動しなければならないというわけです。

移民社会であり、資本主義の本家を自負するアメリカは、人種差別をいかに排除し、平等で自由な社会を造ってゆくかという課題と常に取り組んできました。
ですから、少なくとも法律上、そして社会の表面では制度上もあらゆる人が人種や国籍、さらに性別や宗教的背景などによって人が差別されない仕組みが出来上がっています。
そのとき、元々差別していた側の白人男性はより、ちょっとした誤解から加害者となる可能性に晒されているという風に思っている人は結構多いのです。

一方現実の社会は混沌としています。
本音でいえば、経済格差の問題と、人種の問題とは常に深くリンクしていて、アフリカ系アメリカ人の居住区は低所得で犯罪率が高いと一般的には思われています。
そして、カリフォルニアなどでは、メキシコや中南米からの移民の流入が、新たな社会上の差別や不平等を産み出しているとされているのも事実です。
そんな格差社会と、建前だけの平等の原則にうんざりしている人が、今アメリカ社会の中に新しい保守層として台頭してきているのです。
彼らの多くは、表面上はごく普通の社会人です。
しかし、心の中ではそうした不満が鬱積し、時には人種偏見にも同情的です。ただ公にはそれを口にできないため、こっそりと Donald Trump のメキシコ系移民への強烈な批判といった過激な言動に同情するのです。

この本音の行動に対して、あくまでも社会が目指す理想をかなぐり捨てては元も子もなく、そんなことをすれば、世の中が再び暗黒時代へと逆戻りするという脅威を感じている人々が、Hillary Rodham Clinton を支持するリベラス層というわけです。

この本音と理想との対立は世界のあちこちでもおきています。
自分たちを迫害してきた者へ容赦なく鉄槌をというイスラム原理主義者の本音と、あくまでも多様性を支持し人権を重んじた社会を目指す理想。経済的に行き詰まるギリシャなどを切り捨てて、ユーロを守るべきとする本音と、先の二つの戦争などによって分断されたヨーロッパを一つの共同体として成長させるべきとする理想など、そうした対立事例は様々な形で世界に拡散しています。

人類が、理想を目指さず、それぞれの本音のニーズだけで動き出す時、そこには戦争や迫害がついてまわることは、長い歴史が証明しています。
今回の大統領選挙は、そうした本音にどこまで妥協しながらも、アメリカがしたたかに理想を目指してゆけるのかというテーマに、国民が敏感に反応する選挙となるはずです。
すなわち、本音と理想との対立が、過去にないほど鮮明になっている現代社会を象徴する選挙になるのではないでしょうか。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。

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