【海外ニュース】
What is happening with Japan Inc? Japan has long been held up as a shining example of integrity, assured quality and reliable products…
(BBCより)日本は誠実で、質がよく、安心できる商品を提供できるという輝かしいイメージを維持してきた。しかし…。いったい Japan Inc. に何がおきているのか
【ニュース解説】
神戸製鋼や日産など、日本企業のスキャンダルが相次いで報道されています。
今回の衆議院選挙の結果と照らし合わせ、保守化する日本と、そんな日本を代表する企業での不正に、海外の報道機関は複雑な視線を投げかけています。
Japan Inc. という言葉があります。文字どおり「日本企業」を示す言葉ですが、この表現の向こうには、80年代に政財界が一体となって日本という企業集団を運営し、成功へと導いていったときのイメージが残っています。
当時、高度成長以降、さらに破竹の勢いで拡大を続けていった日本企業の姿を、欧米の人々は Japan Inc. という言葉で表現したのです。
バブルがはじけて以来、そうした Japan Inc. のイメージが変化しました。構造改革に乗り遅れ、低迷に悩む日本の産業界の姿を、人々は Japan Inc. と表現しはじめたのです。
CNN などでは、今回の選挙のあと、安倍政権の長期化が予測されるなか、この Japan Inc. の「負のイメージ」を、いかに日本が変えてゆけるのか特集を組みました。
日本にはもっと若くリーダーシップをとれる企業人が必要とされているのではないかと彼らは問いかけます。
高齢化、財政赤字という二つの大きな課題に、日本政府は本気で取り組み、社会を変えてゆくことができるのかとも海外のマスコミは問いかけました。
海外での日本企業のイメージには、残念ながら構造疲労に苦しみながらも、未だに海外に対して鉄のカーテンを下ろしている閉鎖的な印象がつきまといます。
日本語で、日本人によってのみ運営できる企業、それが日本企業、Japan Inc. のイメージなのです。
日本企業の多くは、こうしたことへの危機感がないわけではありません。しかし、そのことへの解決策として、日本企業の人事部は、TOEIC などのテストを通して社員の英語力の向上に取り組み、英語が話せるようになれば、企業は変化するものだと勘違いをします。しかも、TOEIC を導入している企業の多くは、その点数を上げることのみに腐心し、企業ぐるみで新たな受験戦争を社内に作り出しています。
根本的な問題は、日本企業内の英語力の低さではないのです。
まず、理解しなければならないのは、日本と外国とを分けて考える企業人の閉鎖性なのです。海外に進出している日本企業は、海外を外国人に仕事を教え、自らの製品を販売する場所としてしか考えず、海外の知恵を組織に注入し、日本人と外国人とを分けるのではなく、同じ企業の仲間として多様性を共有してゆく姿勢をもてないのです。
日本企業はもっと海外から役員を招き、かつ海外のことは海外に任せる姿勢が必要です。
日本企業のスキャンダルが報道されるとき、いつものように、マスコミに向かって幹部が深々と頭を下げる映像が世界を飛び交います。こうした映像を通して、まさにセレモニーのように深く頭を下げながらも、未来へのしっかりとしたソリューションを公にできない伏魔殿のような組織のイメージが、世界の消費者に植え付けられてゆきます。
別に、日本企業はアメリカなどの企業の真似事をする必要はありません。それぞれ独自の企業文化があって何ら問題はないのです。個性ある企業があり、そこに個性ある企業文化が培われていることはむしろよいことです。ただ、それが海外と共有されないことが問題なのです。Japan Inc. は Japan Inc. の方程式のみを海外に伝授しようとしがちです。しかし、それは誰にも受け入れられないのです。
日本企業に勤務し、日本人に好かれる外国人には、そんな Japan Inc. に従順な羊のような人材が多く、彼らは高給で優遇されますが、便利屋としてしか活用されません。
逆に、個性が強く、どんどん自己主張をしてくるような人は、日本企業では長続きできません。しかし、彼らの方が世界的な視野でみれば、はるかに優秀で発想力も豊かなケースが多々あるはずです。
日本社会は高齢化が進んでいます。
それだけに、企業内でも組織を活性化させる新たな血液がいずれ不足してくるはずです。海外からの輸血はどうしても必要なのです。外国人と日本人との血液を分けて使用している多くの企業が、その方針を転換でき、世界に対してリベラルに対応できるようになったとき、世界から Japan Inc.の負のイメージが払拭されてゆくのです。
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山久瀬洋二・著
IBCパブリッシング刊
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