”So important questions first: Who exactly is Ayumu Hirano, and also, Is he single?”
今回は、平昌オリンピックでの選手の活躍を通して、アメリカ人にとっての「かっこいい」Coolとは何かというテーマについておいかけます。
よく、海外では日本人は何を考えているかわからないというコメントがあります。それは、日本人が海外の多くの人のように喜怒哀楽を表情に出さず、何か問題があったり、重要なことがあったりしたときでも、苦笑いという不可思議な笑みを浮かべながら、あまり相手にはっきりと対応しないことに起因しています。しかも、ことばの上でも海外の人からみれば、得てして曖昧で、自分の考えていることを言葉で表現しないために、さらに誤解が加速します。
平昌のオリンピックで銀メダルをとった、平野歩夢選手に女性をターゲットとしたアメリカのネット雑誌が注目した背景にはそんなところがあるようです。「HalloGiggles」は、平野選手には付き合っている人がいるのだろうかと問いかけます。彼女らは、オリンピックという大舞台で迫真の演技を見せたあとも、しかもライバルのホワイト選手に僅差で敗れ銀メダルになったときも、感情を激しくだすことなく、どちらかというと淡々とインタビューに応じている姿に惹かれたのです。
逆にショーン・ホワイト選手はまさにアメリカ人らしく、喜びを全身で表現しました。彼は彼で体調を怪我を克服しての奇跡的な勝利です。ですからその喜びもひとしおでしょう。ですから、ショーン・ホワイト選手のオープンな喜び方は、ある意味では当然なのです。
ただ、彼と平野選手の感情の表し方の違いが、なぜかアメリカ人には平野選手にクールな男性というイメージを与えたのでしょう。
直訳すればカッコイイということになりますが、苦境や障害を克服したあとも、平常心で淡々としている姿はまさにホットではなくクールです。
このイメージは、昔のカウボーイのイメージにつながります。孤独で、寡黙で、それでいてタフで力もちというカウボーイの理想的なイメージはクールといえます。昔の西部劇のステレオタイプなヒーローは、決闘のあとでも、自分の射撃の腕を誇ることなく、静かに街を去ってゆきます。そんな強い男のイメージが女性を惹きつけていたわけです。
しかし、我々はそんなコメントに、異文化でのコミュニケーションの深いギャップをみるのです。つまり、静かに寡黙でいることは悪いことではないのですが、日本人が曖昧な笑みを浮かべたまま、自分の気持ちをはっきりと語らないことは、人々から不可思議で付き合いにくい人というイメージを与えるのです。どちらも似た行動ですが、決定的に違うことは、「タスクフォーカス」という発想と行動との関係です。
仕事をしっかりとこなし、Jobを見事にやり遂げたあと、静かでいることは日本人の美徳とアメリカ人のクールという感情との共通点になるでしょう。平野選手はまさにその一点でアメリカ人の心を掴みました。
しかし、日本人が日本人だけとグループで活動しながら、仕事のプロセスや海外の仕事仲間との情報共有をせずに、曖昧なままにニヤニヤして寡黙であることはまずいのです。
「タスクフォーカス」とは、まず果敢に仕事に集中し、試行錯誤はあったとしても結果を通して仕事を評価してゆこうというスタンスを意味します。
日本では事前の準備や、人と人とのコンセンサス・ビルディングを大切にします。時にはノミニケーションなどでの人間関係や、事前の根回しなどに集中し、リスクを徹底的に潰して完璧な準備を尊重します。
まず与えられた職務や企画にチャレンジし、リスクが現れればそこでつぶしながら障害を克服する過程、つまり混乱Struggleを克服して成功を導き出す姿勢が海外では伝統的に求められます。
この「タスクフォーカス」なやり方を通し、結果を出し、タフな人物として寡黙であること。これが今回アメリカの女性誌が平野選手に抱いたcoolなイメージというわけなのです。
* * *
興味のある分野で英語に触れよう!
『英語で読む羽生結弦 The Yuzuru Hanyu Story』
土屋晴仁(著) 佐藤和枝(訳)
フィギュアスケーター・羽生結弦選手の物語を英語で読んで、聴いて、楽しむ! 2006年頃から現在にいたる10余年の間、日本はフィギュアスケートの世界でトップクラスの選手を輩出してきました。そしてこの流れを決定づけ、世界中の人々が“フィギュア大国・ニッポン”に注目するようになったのは、ひとりの若者の大活躍があります。
若者の名は、羽生結弦。世界ランキング1位に君臨し、世界の人々を魅了する選手となった彼のこれまでのストーリーを、読みやすい英語と日本語の対訳で楽しむ一冊です。
音声付(MP3)だから、リスニングのトレーニングにも最適。
* 各ページの下欄に重要語句・表現のワードリスト付きなので気になる語彙はその場で確認できます。
* スピーキングやライティングに役立つ英語解説付き。覚えておきたい英語表現や重要語彙を抽出し、解説します。
* 本文の英文はアメリカの言語学者の指揮のもとMP3音声をCD-ROMに収録
『英語で読む錦織圭 The Kei Nishikori Story』
松丸さとみ (著)、バーナード・セリオ (訳)
日本テニスの歴史と常識を変えた錦織圭の“挑戦”の物語。
ATP世界ランキング最高位4位という快挙を成し遂げた錦織選手。日本のテニス界のみならず、アジアのスポーツ選手たちの希望となった彼にも、さまざまな挑戦と挫折があった。5歳でテニスを始め、故郷を離れて言葉の通じない土地で練習にあけくれ、スター選手たちに憧れの眼差しをそそいでいた少年が、スターたちと肩を並べるまでに至る。そんな錦織選手の軌跡を、読みやすい英語と日本語の対訳で楽しめる一冊。音声付 (MP3) だから、リスニングのトレーニングにも最適。
* 各ページの下欄に重要語句・表現のワードリスト付きなので気になる語彙はその場で確認できます。
* スピーキングやライティングに役立つ英語解説付き。覚えておきたい英語表現や重要語彙を抽出し、解説します。
* 本文の英文はアメリカの言語学者の指揮のもとMP3音声をCD-ROMに収録。