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イタリア観光船事故—欧米と日本の責任の取り方の違い

【海外ニュース】

The captain, Francesco Schettino, 52, of Naples, Italy, was detained for questioning by the Italian police on charges of manslaughter, failure to offer assistance and abandonment of the ship. (ニューヨークタイムズの記事より)

イタリアナポリ出身の船長フランセスコ・セテーノ(52)は、警察当局に船長として適切な処置を怠って船を放棄したことによる致死罪容疑で拘束された。

【ニュース解説】

今日は最近話題になっているイタリアの観光船の座礁事故についてです。船長が乗客をおいて船から逃げたことに皆びっくり。

英語では Captain goes down with the ship「船長は船と共に沈む」という格言があり、有名なタイタニック号の船長など、船が沈没するときに船と共に海に沈んだ船長は数多くいるというのに。今回の事件は、Responsibility、つまり「責任」という言葉の意味を考えさせられますね。この機会に、Responsibility の捉え方に、日本と欧米とで大きな違いがあることについてみてみましょう。船長は、職責として「船とその乗客乗員の安全のために最善を尽くす」という義務がありますね。その義務を怠ったことが今回の問題。

He did a poor job (仕事をちゃんとやらなかった) を通り越して、He did a terrible job. (なっちゃない仕事のやり方だ) ですよね。ところで、日本では、会社のトップが、部下の不祥事に対して責任をとって辞任するということがあるけど、この日本的な「責任」と、今回の船長の「責任」を混同しては、英語のニュースは正しく理解できないのです。欧米では、社員の不祥事などに、トップや上司が直接かかわっていない限り、責任はあくまで個人に向けられるのみ。でも、その結果会社の業績がダウンすると、「会社の利益をあげるという職責を全うできなかった」ために、トップはその手腕を追求されるのです。今回は Get the job done、(仕事を全うする) ということへの厳しい目が、トップである船長に向けられたのです。事件がおきて、ただトップが責任をとって辞任し、譴責されても、欧米流にみれば、何の解決にもなりませんね。だから、日本流の責任の取り方は、彼らからみると不可解です。今の政治の世界でも、部下の失言などで、首相の責任がいつも取り上げられていますが、これも海外からみれば不可解ですね。

東京電力の原発問題があそこまで海外で批判された理由の一つは、あの時の社長が、社長としての職務を怠って、丁度今回の船長のような行為をしたためだったのです。辞任しても、意味ないのです。

最後に、本文中の manslaughter は、直訳すれば、「人殺し」。しかし、ここでは「重大な過失による致死」となります。緻密に計画して殺人を犯した場合は、「murder」。「manslaughter」はそこまでひどくはないが、かっとして人を刺して殺してしまった、あるいは今回のように結果が予測される行為の上で人が死んでしまったときなどに使用する単語なのです。

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