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トルコとフランスの諍いがアメリカ大統領選に与える影響

【海外ニュース】

Turkey warned the French president on Tuesday against signing a law that makes it a crime to deny that the killings of Armenians by Ottoman Turks nearly a century ago(サンフランシスコ・クロニクル紙より)

フランスが100年近く前に当時のオスマントルコ帝国がアルメニア人を虐殺した事実を否定することを禁止。法制化した。これに対し、トルコはフランスの大統領に抗議した。

【ニュース解説】

この一見日本人には何も縁のないような記事が、いかに世界情勢、そして大統領選挙をひかえたアメリカにも影響を与える記事か、考えたいのです。

映画 East of Eden (エデンの東) や、A Street Car Named Desire (欲望という名の電車) の監督、Elia Kazan (エリア・カザン) が、1964年にアカデミー賞を受賞した作品に、America America (アメリカ、アメリカ) という映画があります。
この映画、日本ではあまり知られていませんね。映画のテーマは、オスマントルコ帝国下で虐げられるギリシャ人の青年が、アメリカに移住するまでの物語。エリア・カザンは、トルコ系ギリシャ人の移民である自らの前半生を、この映画でオーバラップさせました。

映画の中で大きく取り上げられたのが、20世紀初頭にトルコ中部でおきた、アルメニア人の迫害事件。当時数えきれないアルメニア人が、トルコで虐殺されたり、財産を奪われたりし、ヨーロッパ各地やアメリカに移住したのです。彼らの中には裕福な人々も多く、移民した各地でトルコへの抗議を行います。

Diversity (多様性) という言葉が、アメリカ人にとっての重要な価値観としてあることは、以前にも説明しました。Diversity とはいうまでもなく、アメリカが多様な移民社会であることを意味します。アメリカが中東の問題など、世界各地の紛争に首を突っ込むのも、アメリカの中にそうした地域からの移民が流入してきた過去と無縁ではありません。これは日本にはみられないアメリカ政治の一つの特徴を形作ります。例えば、大統領選挙では、常にそうした多様な移民のパワーバランスへの配慮が必要です。Minority (少数派) という言葉がありますが、今のオバマ大統領は、Minority の代表である African American、すなわち黒人票をその基盤にもっていたことは周知の事実。
しかも、今やアメリカのそうした Minority の総人口は、決して Minority とはいえなくなるほどに膨張しています。

一方、中東では不安の種が絶えませんよね。中東の anti-American sentiment (反米感情) は、現地の強いイスラム回帰の原動力にもなっています。トルコも例外ではないんです。フランスがトルコの過去を刺激するような法律を制定すれば、トルコ国内のイスラム勢力のさらなる台頭につながり、その影響は中東各地に飛び火。新たなアメリカの外交問題へと発展します。

アメリカには、膨大な Greek American (ギリシャ系移民) が生活しています。その人口は全米で300万人近く。彼らは選挙に大きな影響を与えるニューヨークやデトロイトなどの都市部に住んでいて、祖先の多くはトルコで迫害を受けた人々です。次にトルコや、中東、旧ソ連からやってきた Armenian American (アルメニア系移民) は、50万人近くに及んでいます。しかも、彼らは教育レベルが移民グループの中でも最も高いといわれ、アメリカの中東政策に影響を与えている要因の一つにもなっているのです。

大統領選挙を追ってゆくなかで、この Diversity、そして Minority、さらに Immigrant’s right (移民の権利) という言葉は、選挙の成り行きを理解するキーワードとなってゆくことを、是非知っておきましょう。

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