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厳しく弾劾される韓国のフェリー事故が語るもの

【海外ニュース】

Indications of shocking negligence in the ferry disaster off the southwest coast have spread dismay throughout Korea.
(朝鮮日報より)

南西海岸での今回のフィリーの事故からみえてくる様々な無責任な現実は、韓国中にどうしようもない幻滅感となり、広がっている

【ニュース解説】

韓国の旅客船セウォル号の沈没事故は、事故の経緯とその後の関係者の対応のあり方を巡って、韓国では国難級のショックとなって報道されています。

この事故の報道を受け、同船の船長が真っ先に退避した経緯が伝わってきたとき、私は 2012年の1月におきたイタリアでの海難事故で、乗客を置き去りにして現場から逃げた船長が逮捕された事件について、解説したことを真っ先に思い出しました。
その時に紹介したニューヨークタイムズのヘッドラインは次の通りです。

The captain, Francesco Schettino, 52, of Naples, Italy, was detained for questioning by the Italian police on charges of manslaughter, failure to offer assistance and abandonment of the ship.
(ニューヨークタイムズより)

イタリアナポリ出身の船長フランセスコ・セテーノ (52) は、警察当局に船長として適切な処置を怠って船を放棄したことによる致死罪容疑で拘束された。

Captain goes with the sinking ship という言葉を再び強調します。船が沈むとき、船長は船とともに海に沈むという言葉です。洋の東西を問わず、これは多くの人名をあずかる船長の心構えを説いた言葉です。
こうした常識が既に過去のものとなっている悲しい現実を再び突きつけられたのが、今回の海難事故だったのです。

この事故をみるとき、こうした個人の責任感 a sense of responsibility への課題と共に、救難という緊急時の国や組織の行動のあり方という2つの視点を、我々は冷静にみてゆく必要がありそうです。
事件の全容の解明とは、単に何故船が沈むに至ったかということだけではなく、その後の救助の状況、さらには事件後の韓国政府の対応など、多岐に渡っていることはいうまでもありません。

それにしても、何故韓国政府は日本やアメリカからの援助について即応しなかったのでしょうか。
この問題を考えるとき、日本が東日本大震災と、その後の原発事故に苦しんでいたときのことを思い出します。
私は、震災の3日後に成田空港にいました。震災当日のフライトでサンフランシスコに飛ぶ予定でしたが、それがキャンセル。3日後の便に乗り換えての出発でした。
成田空港のカフェに沢山のドイツからのレスキュー隊が集まり、搭乗時間を待っていたのです。彼らは日本に到着したものの、支援ができないままに帰国することになっていたのでした。
瓦礫を取り除き、行方不明者を救命し、などなど、一人でも多くの人が必要なときに、日本も海外からの援助に対して消極的だったのです。
その理由は、命令系統の分散や、統率が必要な救援活動での混乱への懸念だったと聞いています。今回の韓国政府の対応の背景にも、そうした懸念があったのかもしれません。右から進めというときに、言葉や対応への常識の違いから、いや左からという風になれば、緊急時に混乱が拡散し、却って救援が遅れるのではというわけです。

しかし、犠牲者の家族や一般の国民はそうは考えません。
必要な援助なら有り難く受け入れ、一刻も早く被害を食い止められないのかと誰もが思います。通訳なら派遣すればいいし、指揮系統ぐらいちゃんと打ち合わせる能力はないのかと考えます。他国の援助を嫌うというプライドなど、あってはならないとも思うはずです。

そもそも、災害時に備えた国際間の演習や、訓練、基本的なルール造りがこの時代になっても行われていないことに大きな問題があるのではないでしょうか。
政治も絡み、日米合同演習や米韓の演習など、軍事面での協力はあっても、多国間での災害救難のための合同の準備は全くなされていないのです。そうなれば、それぞれの国が持つ緊急時に対応する技術やノウハウの交流も実質上ありえなくなります。emergency measures (非常時の対処法) を international emergency measures へと up-grade する必要性をことあるごとに Make us realize keenly、すなわち痛感させられます。

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