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日本人の苦笑いとは。塩村議員の怒りを誤解なく世界に伝えるために

今回の東京都議会での塩村文夏議員への「早く結婚したほうがいい」などというヤジは、確かに日本の議会の品位を傷つけ、日本に根強く残っている女性蔑視を象徴した事件として、世界に波紋が拡がりました。悲しく、腹立たしい限りです。

その中で、一つの異文化体験があったことを、ここでお話しします。
それは、塩村議員にヤジが飛ばされたとき、彼女が笑ってそれを受け、着席した一幕へのコメントです。

「なぜ、彼女は笑っていたのだろう」

私のアメリカ人の友人が、即座に怪訝な顔をして質問してきたのです。

「わかんないの?あれは苦笑いだよ。戸惑い悲しいときに、笑みを浮かべ、その場を切り抜けたわけ。無意識に浮かべた苦笑いさ」

「そうなんだ。例えばアメリカで楽しかったり、おかしかったり、あるいはカジュアルに会話しているとき以外で笑みを浮かべると、思わぬ誤解につながることもあるんだよ」

「例えば?」

「相手を差別する意識があったり、偏見をもっている。ひどいときには女性などに対する性的侮蔑の意図など、いずれにしてもまともな状況ではないと思われかねない」

「それは大変だ。でも、今回はヤジをうけたのは女性だよ。アメリカではこうした場合、女性はそんなに毅然としてられるの?」

「人によるね。もちろん、中には困惑して苦笑いをする人はいるかもしれない。確かに男性より女性の方が、こうしたときは受け身のアクションになりがちだ。でも、多くの場合、その後で気を取り直して即座に、迅速に抗議をするんじゃないだろうか。そこの対応が今回の日本のケースとは違うと思う。つまり、英語でのやりとりの場合、問題の指摘はその場で直接本人にというのが一つのルールなんだよ。また、心の中と表情をできるだけ一致させるというのも、英語の世界、特にアメリカ社会では当然のことなんだ」

「ということは、笑みでそれを受け止め、その後で悔しそうな表情をしても、それだけでは、相手にそのメッセージは伝わらないということ?」

「移民をはじめ多様な人々が同居する社会では、阿吽の呼吸は伝わりにくい。だからこそ、問題点は直接本人に真剣な表情でということになるわけさ。しかも言いたい事も明快に表現してね」

「じゃあ、あの場合、もし彼女が抗議できないほど悔しく、腹を立てていたとしたら、どうするべきだった?少なくとも君の出身地のカリフォルニアでは」

「英語でのジェスチャーで言えば、相手を改めて睨む。そしてその後は完全に目を反らして、背を向けその場から立ち去る。これが多くの場合の向こうでのリアクションだと思うよ。その後は間違いなく、法的措置さ。日本と違うよね」

もし、アメリカの職場で、こうしたセクハラ発言があった場合、その場での有言、無言の抗議は当然ですが、殆どの場合は、被害者は後日加害者に法的なアクションを起こすでしょう。
また、会社などの組織がそうした問題を黙殺したり、取り上げて処分の対象にしなかったりした場合は、その組織が雇用機会均等委員会などの公の団体から提訴されるリスクもあるのです。
現に、三菱自動車がそうした訴訟に見舞われ、不買運動にまで発展したケースもあるのです。それに比べると、今回の都議会の問題の取り扱い方が極めて生温く思えるのは、私だけではないでしょう。

「いずれにしろ、塩村議員に対するあんな発言は許せない。でも、あの場での彼女の対応は、日本ならではと思ったわけ。それはいいとか悪いとかではない。文化の違いなんだね。でも、彼女は余程悔しかったんだろう。それは、日本に住んでいる僕にはよくわかった。でも、アメリカの普通の人には、あの一場面だけから、そこまでのメッセージを受け取れる人は、そういないと思うよ」

「なるほど。表情からくんでほしいとは期待できないんだ」

「まして笑みを浮かべていたから」

誤解を避けるために解説すると、普通の会話をカジュアルにかわしているときは、お互いに笑みを浮かべながら喋ることはとても大切。でも、深刻な問題のときは、それが深刻だと表情でも示すことが必要なのです。そんなときに笑みを浮かべると、苦笑いと解釈されず、誤解を与えるリスクがあるわけです。

最後に、「結婚しろ」と発言した鈴木都議に一言。
その発言をどんなに言い訳しても、女性は結婚するべきと考えている本人の意識の古さと低さは、正当な批判にも値しない愚かで悲しいこと。
それぞれの人が男女を問わず、人生の方向を自分で選ぶ権利があり、その機会を社会が分け隔てなく保証するということこそ、今日本社会がしっかりと知っておかなければならいことなのでは。
「女性は結婚するのがいい」というのは、そんな「基本的な人権」への発想から逸脱しているわけで、これこそは、異文化という視点から捉えてもレッドカードだと思うのですが。読者の方々はどう思われるでしょうか。

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