“A day after NBC announced his firing, Matt Lauer said Thursday that he is “truly sorry” for the pain he has caused.”
(NBCの解雇通知を受け、マット・ロワーは火曜日に彼が与えた苦痛について心からおわびしたいと表明)
CNNより
ここで開示する内容は、レストランでの極めてプライベートな会話です。ですから、ここでの会話が良いか悪いかはあえて論じません。
性的差別に苦しむ女性とそれに対する男性の意識のギャップを考えさせられる内容と思い、あえて掲載したことをご了解いただいて、ご一読いただければ幸いです。
「最近アメリカで報道されている一連のセクハラ問題をみてどう思う?」
「次々にセクハラ疑惑で有名人があげられて、マスコミは大わらわ。ありゃ大変だね。皆、次は自分の過去が暴かれるんじゃないかって戦々恐々だろ。マスコミの餌食になるんじゃないかってね」
「チャーリー・ローズ。あいつもだよ。俺は奴のニュースショウをいつもみていた。日本でもこういったことってあるのかい?」
「そりゃあるさ。報道はいつでもネタを探しているしね。でもこんなに過激に暴かれることはあまりないよね。ウエインスタインのケースにはちょっとびっくりだけど、日本だったらそのあたりで幕引きかな」
「おいおい。冗談じゃないよ。俺たち男どもは、皆びくびくしているんだ、誰もがちょっとしたことで変態扱いだ。身に覚えの”ある”ようなことでね」
俺はね。実は週末は子供達のサッカーチームのコーチをやっている。でもね。絶対に子供たちとトイレにはいかないよ。何を言われるかかわならないからね」
「考えてもみな。長年仕事を一緒にしてきた女性がいるとする。何年もね。そんな中で、ちょっとやばいぜといったような雰囲気になることはあるよね。男なら誰だって叩けば埃がでるさ。それをさ、或る日突然暴かれて、テレビで取り上げられ、皆の前で謝罪だよ」
「でもね」
と私が続けます。
「問題は、公ではここで話しているようなことは決して言えないということだよ。だって、彼らに同情したようなことをいえば、途端に大変なことになるしね。日本では最近逆に女性議員などの不倫が騒がれてね。無菌室培養でもされなければテレビなんかにはでるもんじゃないと感じることもあるよね」
「これは魔女裁判、いや魔男裁判だよ。いいかい?恋も浮気も、ちょっと胸の割れ目がみえてぞくっとしたときにニヤリともできない。かなわないぜ」
すると、トムが、
「おいおい。声が大きいぞ。ここはレストランだよ」とたしなめます。
ここはステーキハウスで、男同士の酒の上での会話だからこそ、本音が出てしまうというわけです。
「そりゃ、例えば痴漢はいけないし、上に立つ立場を利用して女性に迫ったりすればまずいだろう。でも、今回のマスコミの騒ぎ方は異常だよね。本当に調査をしてやっているのかね。きっと大物議員や映画俳優、著名なキャスターたち、みんなドキドキじゃないのかね」
ダンがそういうので、私は頷きながら話を引き取ります。
「アメリカは日本以上に長年にわたって人種差別や性差別などに取り組んできた背景があるよね。それはいいことだと思うよ。今回の問題は、女性への差別と男と女の問題を混同しているようにみえることにあるんじゃないかね」
「それだよ。でも、男が女に興味を持つって悪いことなのかい。俺が若かった頃はもっとおおらかだったね」とダンが言います。
「おいおい、スキャンダルは男と女の問題だけじゃないよ。この前取り上げられた映画俳優はゲイの間のセクハラだったよね」
これはトムのコメント。
そして、多様なアメリカの中で最も気をつけなければならないのは白人の男性、それもある程度社会的地位のある男性だと言われます。
人種差別、性差別、さらには年齢への差別など、様々な観点から突っ込まれやすい人達だからです。ここにはまさにそうした三人が集まって鬱憤を晴らしているというわけです。
今であれば彼は辞任となったでしょうか。
「おい、知ってるかい?ジョン・エフ・ケネディと弟のボブはとてもお盛んだったようだよ。あの頃は職場での恋なんて当たり前だった」
「そうしないと、会社の価値が落ちて、投資が台無しになるからな」
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山久瀬洋二の「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜・目次へ
『日英対訳 アメリカQ&A』
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊
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