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戦争を続ける人類、地球に罰せられる人類

At least 260 bodies were found at the music festival site after Hamas attack, according to Israeli rescue service. Some attendees were taken hostage, seen in social media videos being seized by their armed captors.

(イスラエルの救助隊によると、ハマスによる攻撃のあと、少なくとも260人の遺体が音楽フェスティバル会場で発見された。参加者の何人かが、武装勢力に人質として連行される模様がSNSなどによって拡散した)
― CNN より

ヒンドゥー教の聖典で語られる普遍的な本質を考える

 私は特定の宗教を信じているわけではありません。しかし、誰でもそうでしょうが、我々にはわからない何か大きなもの、人知が及ばない力があることを感じているのは事実です。
 
 前々回の記事でも紹介したように、最近インドとの仕事が多くなり、よく彼らと話します。そして彼らは、インドの宗教ヒンドゥー教の原典ともいえる『バガヴァッド・ギーター』という聖典について語ってくれます。それは神の世界での賢者の会話を通して人の生き方を説いているもので、ヒンドゥー教徒であるインド人のほとんどが一度は触れる、彼らにとっての聖書のようなものです。
 その中に次のような一説がありました。
 
「人がその知識により、万物の中に唯一普遍な状態を認め、区別されたものの中に、区別されないものを認めるとき、それを純真的な知識と知れ」(上村勝彦氏 訳、岩波文庫 より)
 

世界が荒廃する背景に共通する人類の欲深さと愚かさ

 世界が荒廃しています。ウクライナにロシアが侵攻し、多くの命が奪われているときに、今度は中東でパレスチナの武装勢力ハマスとイスラエルとの戦争が始まりました。同時に、アフリカ各地ではあちこちでクーデターや民主化運動への抑圧が報道されています。
 それぞれは「区別されたもの」のように見えて、その背景には共通して世界の複雑な利害や権益争い、つまり人の欲が絡んでいます。イスラム教徒で長年難民としての地位を余儀なくされてきたハマスによるイスラエルへの攻撃をアメリカやイギリスが非難すれば、多くの人は70年にわたるパレスチナの人々に対するイスラエルの抑圧や差別を指摘し、そんなイスラエルを支えるアメリカを非難します。
 
 もちろん、中国やイランは、こうした中東の状況はアメリカが作り出したものだと指摘します。さらにロシアは、この混乱でアメリカがイスラエルにまで武器援助を余儀なくされることで、ウクライナ支援が鈍化することを願っています。そうした中でイスラム圏のライバルともいえるイランとサウジアラビアとの接近を中国がお膳立てすると、アメリカはサウジアラビアや湾岸地域でのプレゼンスの低下を嫌い、対抗しようとサウジアラビアとイスラエルとの接近を促します。ハマスはそんな動きに危機感を覚え、自らに中東での世論を引きつけようと、イスラエルに攻撃をしかけたのかもしれません。イランはそんなハマスの動きをイランと関係の深いレバノン南部の武装勢力ヒズボラを使って後押しし、イスラエルへの攻撃を支援します。さらにロシアはレバノンの隣国シリアとの関係を梃子に、ますます不安定になる中東情勢を利用して、アメリカへの牽制を強めるのです。
 
 これと似たようなことが、中東だけでなく、アフリカ各地、ミャンマーなど世界のあちこちで起こっています。その結果、人は殺し合い、憎しみが憎しみを生み、再び命や生活が奪われ、嘆きや涙が溢れます。一方で、先進国と呼ばれる日本など多くの国の人々は、そんな世界の苦痛はまったく他人事かというように、無関心なままに日々の生活を送っています。
 
 バガヴァッド・ギーターのいう「区別されたものの中に、区別されないものを認める」ということ、つまりこの世界情勢の混沌の中である普遍的な真実を考えると、それは「人間はなんと愚かなのか」という一言に集約されるように思えます。
 キリスト教であろうが、イスラム教であろうが、はたまた仏教であろうが、あらゆる宗教がいう神とは、実は宇宙の一部としての地球そのもののことではないかと思えます。愚かな人間が戦争を繰り返し、それに無関心な人々が享楽を追い求め、結果として環境破壊が続けば、旧約聖書の「ノアの方舟」などの物語のように、地球が人類を害悪の塊とみなすのではないでしょうか。その結果、温暖化が加速化し、洪水や干ばつ、異常気象を通して人類を破滅へと導き罰してしまうのではと思うのです。ほんの数週間前まで異常に暑かった夏が過ぎると、今日はセーターなしでは暮らせないほど冷えています。秋と春はこの世から消えて、灼熱と極寒だけが世界を覆い、食料が不足すれば、人々はさらに戦争を繰り返し、宗教や政治的スタンスを利用して殺戮を繰り返すのです。
 

人類の愚かさがもたらした混乱によって奪われる命

 国連は機能していません。善意ある人々の声が社会の分断の音にかき消され、多くの人は心に余裕を失い、語って解決するという知恵も放棄しています。サファリの動物のように、しかし、動物とは比べものにならない破壊力のある武器をもって、人類は地球を食い荒らしています。人類の知識が破壊を加速させているのです。
 
「もしかすると、今の世界の指導者の多くは宇宙人じゃないの? 人間としての感情があれば、あんな殺戮はできないでしょ。そんな連中に人類は操られ、いつか奴隷にされてしまうのでは?」
 
 イランから亡命してきている友人とお茶をしたときに、彼はつぶやいていました。まさかと思いながらも、これをSF小説の戯言として笑い飛ばせない何かが今、世界を苦しめているようです。
 
 日本は平和です。しかし、この平和も世界がこれ以上混乱すれば、維持することが困難になるかもしれません。わけがわからないままに、多くの人が日常の生活を奪われてしまうかもしれません。それだけ、莫大な物資が燃やされ、資産が破壊され、生命が奪われているのです。それと並行して地球が傷ついているのです。モンスターのような武器だけに頼った人類が、逆にそんな武器に操られ、この週末には今わかっているだけで、数千人の命がイスラエルとパレスチナ自治区との国境で奪われたり、危機に晒されたりしました。
 同じ週末にアフガニスタンでも、貧困であえぐ二千人以上の命が地震で奪われました。その原因も人災と天災との相乗作用によるものにほかなりません。
 これらと似たようなニュースが毎月のように世界のあちこちから届いてくるなか、日本ではそんな事実自体も知らない人々が、明日も同じ日が続くものと思い込んで、連休明けを迎えようとしているのです。
 

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『日英対訳 世界の歴史[増補改訂版]』山久瀬 洋二 (著)、ジェームス・M・バーダマン (訳)日英対訳 世界の歴史[増補改訂版]
山久瀬 洋二 (著)、ジェームス・M・バーダマン (訳)
シンプルな英文で読みやすい! 世界史の決定版!
これまでの人類の歴史は、そこに起きる様々な事象がお互いに影響し合いながら、現代に至っています。そのことを深く認識できるように、本書は先史から現代までの時代・地域を横断しながら、歴史の出来事を立体的に捉えることが出来るよう工夫されています。世界が混迷する今こそ、しっかり理解しておきたい人類の歴史を、日英対訳の大ボリュームで綴ります。

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