All Members shall refrain in their international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any state, or in any other manner inconsistent with the Purposes of the United Nations.
国際連合の機能不全とキッシンジャー氏の死
これらの事例を通して、一体何が問題なのかと問いかけたとき、我々にはたった一つの大きな課題がみえてきます。
それは、本来国際紛争を解決し、世界の平和の番人として設立された国連が、機能不全に陥っているという現実です。
キッシンジャーの功績は、国連の理念と現実との間を繋ぎながら、冷戦時代の軋轢の解消に努力してきたことにありました。
世界でも有数な先進国であったドイツが、どうしてあそこまで野蛮で残虐な独裁国家になったのかというテーマを解決できない限り、世界の恒久平和と人類の繁栄はありえないというのが、彼の外交活動を支えたモチベーションでした。
ヘンリー・キッシンジャーは海外で生まれ、のちに米国籍を取得した関係で、大統領になる資格は持っていなかったものの、アメリカで最も優れた政治家として、冷戦下の国際政治に大きな影響を与えてきた人物だったのです。
しかし、彼はニクソン政権下で機密裏にアメリカと中国との雪解けを達成し、ソ連ともデタント(軍事力の削減による緊張緩和)の道筋を模索しながら、中東問題の解決にも貢献してきました。彼のアメリカの国益を中心に据えた現実的な政策には賛否両論あるものの、時にはアメリカのために自身の育てた諜報機関の特別なルートを通してダイナミックにアメリカの外交政策の舵取りをしたことで知られています。
改革に立ちはだかる拒否権行使と圧倒的な人材不足
新冷戦と呼ばれる現在、戦後間もなく戦勝国の主導で設立した国際連合は、常任理事国が拒否権を持つことで、何か事が起きても迅速な対応ができなくなったのです。
拒否権を防ぐには、該当する国家がそれを使わないようにするための強い外交力が必要です。それには世界各国との太い人脈が必要で、同時に世界の指導者がその言葉を聞こうとする影響力のある人材も必要です。これが足りていないことが、国連の機能不全の直接の原因になっています。
キッシンジャーの死は、そのまま国連の死を意味するのではと思わせるほどに、戦後に生まれた国連の構造疲労が目立つようになってしまいました。
しかし、その組織に一つの大きな瑕疵があることはあまり問いかけられていません。それは、民主国家であれば当然持っている三権分立の制度が機能していないことです。国連は世界に向けた大きな行政機関で、司法機関、立法機関との住み分けが明快ではないのです。それは国連が複雑な国際政治の課題を解決する軍事力をもった国際機関、つまり国際行政機関として機能しているためで、国際法によって相手を裁くときにも、行政の長としての安全保障理事会の承認が必要となるからです。特に常任理事国には大きな権限が与えられ、多数決ではものごとが決まりません。
そんなロシアを正し、ウクライナから撤兵させるか、休戦へと持ち込むことのできる人材が世界的に不足しているのです。
国連なしに世界秩序を創造するためのスタートライン
同様の動きが中国とロシアとの間にはないものの、アフリカや中央アジアといった地域を中国やロシアが取り込もうとしていることは周知の事実です。
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『日英対訳 世界の歴史[増補改訂版]』
山久瀬 洋二 (著)、ジェームス・M・バーダマン (訳)
シンプルな英文で読みやすい! 世界史の決定版!
これまでの人類の歴史は、そこに起きる様々な事象がお互いに影響し合いながら、現代に至っています。そのことを深く認識できるように、本書は先史から現代までの時代・地域を横断しながら、歴史の出来事を立体的に捉えることが出来るよう工夫されています。世界が混迷する今こそ、しっかり理解しておきたい人類の歴史を、日英対訳の大ボリュームで綴ります。
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