ブログ

予測できない海洋の異常事態

Scientists are freaking out about ocean temperatures.

(科学者たちは海洋の温度に驚愕)
― New York Times より

加速する温暖化によって異常気象に見舞われる人々

 東南アジアに出張していると、あちこちで耳にすることがあります。
 それは、東南アジア各地で、今まではいつからいつまでと、はっきり決まっていた雨季が、時には早まったり遅くなったり、あるいは思わぬときに雨季のような気候に変わったりといった、異常な変化に見舞われていることです。
 実際、今の時期は絶対に雨はこないと思って、傘を持たずに歩いていると、いきなりスコールに見舞われ、慌てて公共交通を利用した経験などが増えています。
 
 さらに、フィリピン北部を例にとれば、最も気温が高い時期といわれる4月から5月にかけて、一部の地域で摂氏50度を超えるケースもあり、近距離でも屋外を歩くのが危険な状況になってきている実態も体験しました。
 今は、3月初旬ですが、そうした熱暑期の予兆が今年も早々に出ているようです。
 
 異常気象の問題は、地球の温暖化という形で頻繁に報道されています。
 しかし、今年になってニューヨーク・タイムズなど、多くのメディアが取り上げている現象があります。彼らは、近未来に起こるかもしれない大変動のオーメン(予兆)ではと思われる異常気象が、最近顕著になっていると伝えているのです。
 昨年の状況は特に驚きだったと、多くの科学者が説明しています。昨年だけで産業革命以来、平均気温が1.5度以上も上昇したというのです。この温暖化のスピードにさらに加速度がつくかどうかは、専門家も予測できません。加速度のペースによっては、未来への影響はより深刻になるはずです。
 

崩壊した寒暖のバランスを取り戻すのは困難な課題

 特に、注目されているのが、大西洋をアメリカからヨーロッパに向けて北に流れる暖流が崩壊しつつあるという実態です。
 氷河などが溶けて真水が海洋に流れ込むことで、暖流の規則的な流れが阻まれ、そのことでヨーロッパでは異常な寒冷現象が、カリブ海等の南の領域では熱暑が予測されるようになるのです。
 つまり、我々が子供の頃に学んだ、ヨーロッパに温暖な気候をもたらす海流が停止することになるのです。マドリードと秋田とが同じ緯度にありながら、ヨーロッパの主要な地域が日本と同程度温暖だった気候のメカニズムが壊れてしまうのです。
 
 もちろん、カリブ海の方には熱い海水がたまります。これはアメリカ南部に熱暑をもたらすだけでなく、巨大なハリケーンを生み出すエネルギー源となるのです。
 実際、先月もハリケーンではないものの、テキサス州北部からオクラホマ州にかけて強風が続いたために、風に煽られた木が燃えて巨大な山火事となりました。火は東風に煽られて西進し、火災が発生している地域の高速道路からみえる風景は、火の柱や火炎によって、さながら地獄の光景です。
 
 この現象は北大西洋に限ったことではないようです。
 地球の温暖化によってもたらされる熱気は、海水に吸収されるため、例えばエルニーニョ現象(太平洋南東部の海水温が高温になる現象)は、今までになく顕著になっており、そのことが毎年日本で発生する異常気象の原因となっているわけです。
 温暖化を防ぐためには、公害物質の排出を制限しなければなりません。しかし、皮肉なことに、それを制限して大気中のチリが減ることで、より日射を海が吸収しやすくなることも、海洋の温暖化の一因かもしれないと指摘する科学者も多いのです。
 つまり、一度破壊された環境を元に戻す段階で、別のインパクトが自然現象に異常をもたらすことになるわけです。だからといって、公害物質を放出し続ければ、それはそれで温室効果が進み、健康被害も深刻になるはずです。
 

予測困難な地球のバイオリズムと人類の愚行

 一方で、地球が常に生き物のように、時と共に変化する複雑なパターンをもっている天体であることも、計算に入れなければなりません。
 縄文時代は現在よりも気温がかなり低かったという話や、中世初期のヨーロッパでは気温上昇があったために、海の氷が溶け、ノルマン人など北方民族の海の移動が容易になり、ヨーロッパでの民族大移動の原因になったという話も周知されています。この気象のパターンの変化と、産業革命以来の大気汚染がもたらす気象異変との関連を詳細に分析して予測することは、今の人類の知恵をもっても困難な作業だと専門家は指摘しているのです。
 知人の科学者の中には、むしろ地球のバイオリズムは寒冷化に向かっている可能性があり、温暖化と相殺しあっていることもあり得るとコメントしている人もいるのです。
 
 とはいえ、一つ言えることは、人類は愚かだということでしょう。
 ここまで環境問題が懸念されているなかで、化石燃料を最も浪費し、周囲の生命や財産だけではなく、自然環境をも取り返しのつかないまでに破壊する大規模な戦争が収束する気配もなく、国際政治の利害関係の中で、その解決の糸口も見えにくくなっています。
 化石燃料の削減や、海を航行する船舶の排気規制などが進んで、大気の質の改善に向けたアクションがようやく加速しつつあるときだけに、愚かな戦争が地球にどのような刺激を与えるのか、これも予測は困難です。
 
 欧米のメディアが頻繁に報道する、ここ数年間の気象条件の劇的な変化が今後も続くのか未知数であるとはいえ、仮に加速が続いた場合はどうなるのでしょう。「未来へのオーメン」という表現は不気味です。
 北大西洋での海洋温度の調査は、今後もより頻度を増して綿密に続けられると、関係者は語っていました。
 

* * *

『沈黙の春』レイチェル・カーソン (原著)沈黙の春』レイチェル・カーソン (原著)
“春が来ても、小鳥は鳴かず 世界は沈黙に包まれるだろう”
1962年に出版されたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、農薬等の化学物質が大量に使用された時に自然の生態系はどうなるのか、生物そして人間はどうなるのかを公にした警告の書。約60年前に記された同書は、現代においても人間が自然環境とどのように共生していくべきなのかを考えさせます。本書では、世界30ヵ国以上で出版され、環境保護や化学物質を正しく使うことの大切さを世界に知らせたその名著をシンプルな英語で読むことができます。

===== 読者の皆さまへのお知らせ =====
IBCパブリッシングから、ラダーシリーズを中心とした英文コンテンツ満載のWebアプリ
「IBC SQUARE」が登場しました!
リリースキャンペーンとして、読み放題プランが1か月無料でお試しできます。
下記リンク先よりぜひご覧ください。
https://ibcsquare.com/
===============================

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ

PAGE TOP