Harris ahead in Pennsylvania and Tied Nationally? Unpacking an Unexpected Result.
TV討論会でハリス氏が見せたコミュニケーションの本質
最初の場面で、彼女がトランプ氏に歩み寄って握手をしたのです。2016年の選挙以降、二名の候補者が討論会の最初と最後で握手をすることがなくなりました。実は、この一見たわいもないようなことが、アメリカの政治や社会での常識がいかに大きく変化したかを物語っていたのです。
このなかで、話者はかなり激しいやり取りを展開します。ただし、あくまでもそれはスポーツと同様で、テニスや卓球での激しい撃ち合いのように、お互いがどのようにこのゲームに挑み、勝利するかを見極め、聴衆もそのやり取りを楽しんでいたのです。
これはアメリカのコミュニケーション文化の本質にかかわることだったのです。今回、カマラ・ハリス氏はこの過去を意識してか、自ら歩み寄って、にこやかにトランプ氏の目を見て握手をし、同時に私がカマラ・ハリスですと名乗ったのです。
この3つの行動、つまり握手とアイコンタクト、そして自らの名前を相手に伝えたことは、それぞれに大きな意味があります。
討論会を制してもなおハリス氏の前に山積する課題
しかし、ここでさらに課題が残りました。それは選挙の行方を占う上で大切なペンシルバニア州での支持率の拮抗が、カマラ・ハリス氏に大きな重石となってのしかかっていることです。すでに触れたように、ペンシルバニア州のような伝統的な重工業地帯における労働者の支持率低下に悩んでいる民主党にとって、環境問題を強調するカマラ・ハリス氏が有効な政策を打ち出せるのか、という懸念が払拭できないのです。そこで、カマラ・ハリス氏は日本製鉄のUSスティール買収に反対し、以前の脱化石燃料の推進策にブレーキをかけて、同州での石油の掘削を容認する妥協策を打ち出しました。しかし、逆にこれに失望した有権者も多くいるはずです。
ミシガン州は北部の農村地帯に行けば行くほど、保守の岩盤支持層が増えてきます。都市部で十分に票をとれなければ、カマラ・ハリス氏はミシガン州を落としてしまう可能性があるのです。
政策課題への対応と無党派層の動きが占う選挙の行方
しかし、無党派層は彼女の妥協に失望するかもしれません。彼らが選挙に行って投票することがハリス氏には絶対に必要です。この無党派層は全米に拡散してつかみどころがありません。
それだけに、これらのスイングステートと呼ばれる民主党と共和党の支持が拮抗している州での対応と、無党派層の支持を維持することの双方のバランスをどう取るかという、極めて困難な舵取りを強いられるのです。
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『Heart & Soul of the Japanese』山久瀬 洋二 (著)
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