About 71,000 soldiers from Britain and the Commonwealth died in the war against Japan, including more than 12,000 prisoners of war who died in Japanese captivity.
戦後80年で問われる日本の「反省」と向き合い方
日本では首相が久しぶりに前の戦争を「反省」という言葉で表現したことが話題になっています。
また、多くの人はもう80年も経過していて、日本は何度か戦争の責任についても言及しているので、韓国など諸外国はどこまでしつこくこの問題を追及するのかと思っているはずです。
しかし、今回はその後半の文に注目して欲しいのです。記者はあえて、その犠牲者の中に日本軍によって捕らえられた1万2千名の捕虜が含まれていることに言及しています。この後半の部分こそが、日本人がどのように思おうが、海外から向けられている日本の戦争との向き合い方への厳しい批判を象徴しているのです。
「対日戦勝記念日」に海外メディアが報じる日本
そして、彼らはいつも日本の戦没者追悼式の様子に違和感を抱きながら報道します。というのも、日本の追悼式では日本に起こった不幸を語り、戦没者を慰霊するのみで、戦争そのものの世界規模での惨禍について触れることがないからです。VJ-Dayにはイギリス国内でもセレモニーがあります。そして、そこでは日本軍の捕虜になって虐待を受けた人々に報道陣のマイクが向けられます。
ヨーロッパでの戦争の大きな転換点になった連合軍のノルマンディー上陸作戦が行われた日(D-Day)には戦争に関わった国々が集まり、大きな記念式典が毎年行なわれます。そこにはドイツの首相も積極的に参加して、第二次世界大戦での犠牲者に敬意を払います。
さらに、ドイツは言論の自由が保障された民主主義国家であることはいうまでもないことですが、一つだけ違法となっているのがナチス党の結成です。
反省といっても具体的な事例も指摘されません。このことが、日本がどんなに平和を希求する国家であると自負しても、世界の多くの国々がそれを冷めた目でみている理由なのです。
式典にも日本に駐在する外交官が招かれます。しかし、ここで注意したいのは、彼らは原爆という核の悲劇と向き合うために参列しているのであって、当時、広島や長崎で被害に遭い、熱線を浴びて苦しんだ犠牲者の痛みや悲しみを共有してはいても、原爆投下の責任がアメリカにあるという意識を持っている人はほとんどいないという事実です。
もう一度見つめ直したい戦禍への思いと積極的な発信
しかし、それ以上に第二次世界大戦は、最低でも5,000万人以上ともいわれる犠牲者をだした戦争で、その主要な参戦国であった日本の位置付けへの表明が足りなければ、他の国の同じような犠牲者の遺族たちや実際に傷つき生き残った人々が抱く思いへの癒しは訪れないわけです。
もし、海外の冷めた反応や隣国の批判が続くとしたら、それはこうした日本の外交方針、そして長年日本人に植えつけられている国内だけに向けられた戦災への思いを、もう一度見直してゆく必要があるのではないでしょうか。
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『日英対訳 英語で読む地政学』
山久瀬洋二 (著)、エド・ジェイコブ (訳)
国の位置や地形、海路などの“地理的条件”が、国家の戦略や国際関係にどのような影響を及ぼしてきたかを考察する「地政学」。そのような一般的な「地政学」とは少し視点を変え、気候変動などの気象や、そこから発する海洋への影響、文明の発達による山や川の環境変化などに着目。それが人々の生活にどのような影響を及ぼし、そして人類の歴史をつくってきたのかを解説します。科学の進歩とともに、旧来の地政学がすでに時代遅れになりつつある時代に、環境問題の深刻化や社会に広がる分断、それらを背景に問われる国家戦略のあり方を日英対訳で考察します。国境の向こうを理解する教養が、英語とともに身につく一冊です!
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