【海外ニュース】
The Republican national convention is in the history books, and now the Democrats are about to kick off their gathering in Charlotte, N.C.(サンフランシスコ・クロニクルより)
共和党の全国大会は終了。今、民主党の大会がノース・カロライナのシャルロットで始まろうとしている
Former Secretary of State Condoleezza Rice gave a prime-time speech that appealed to both the hearts and the minds of the audience.(サンフランシスコ・クロニクルより)
コンベンションが最も盛り上がったときに行われたコンドレーサ・ライス前国務長官のスピーチは、聴衆の心情と理性に強く訴えかけた
【ニュース解説】
秋の大統領選挙が近づき、共和党の追い上げはオバマ陣営にとって脅威となっています。今回の共和党全国大会で、ミッド・ロムニー氏が正式に大統領候補に指名されたとき、その支持率はオバマ大統領を上回ったといわれています。そんなコンベンションで特に注目されたのが、前国務長官コントリーザ・ライスのスピーチでした。
ライスは、スピーチの冒頭で、ワールド・トレード・センターに旅客機が激突したあの瞬間から、世界の安全保障そのものが変化したと強調しました。彼女は強い軍事力の維持によって、アメリカの価値と世界の安定が保証されると主張します。そして、アメリカだけでなく中東などで叫ばれた自由への要望こそが、アメリカが守り、かつ世界が求めるものだと語りました。加えてそんな動きに逆らうロシアや中国を批判し、その中で Everybody ask where does American stand? つまりアメリカの立ち位置が、今明快に求められているとしたのです。
得意な外交上のキャリアからスピーチをはじめ、彼女は内政の課題へと話を転じます。締めくくったのは、自らが育った南部アラバマ州の町のこと。当時そこにあったのは Jim Crow law (ジムクロウ法)。この法律は黒人が立ち入れない場所などを規定したもので、60年代以前のアメリカ南部にあった黒人への差別と人種隔離政策 (アパルトヘイト apartheid) 政策を象徴する悪法でした。彼女はそんな逆風の中で、自分でも大統領になれると信じてキャリアをアップさせ、国務長官になったことに触れたのです。
つまり、アメリカの価値は人が出生に関係なく努力次第で夢をつかめるという、チャレンジに門戸が開かれた「自由」にあるというのです。ライスは、こうしたアメリカのビジョンを守るためにも、経済や教育を立て直そうと訴えかけ、今のオバマ政権は後手に回っていると批判したのでした。
今週は、民主党 Democrat のナショナル・コンベンションが、ノースカロライナで開催されます。この文章が掲載されるころには、コンベンションの状況も報道されているはずです。
最も重要な争点は、果たしてこの4年間でリーマンショック以来のアメリカ経済がどれだけ立て直されてきたかという一点でしょう。
現在アメリカの失業率が8パーセントを越えている中、民主党はゼネラルモーターズを救済した実績などを強調します。しかし、4年前のオバマ旋風は冷え込んで、今回はどこまで共和党の攻勢に耐えられるかという「守り」の選挙となることは民主党も覚悟しているはずです。華やかなスローガンではなく、具体的な治癒への道標 milestone が示されるか、国民は注目しています。
選挙の度に、アメリカの政治家は、自由や平等というアメリカの価値を国民に強調します。国際的にも強いアメリカを維持し、国内的には経済と教育、人種や貧富の格差による人々の溝を埋めてゆこうと問いかけます。
共和党は極東の軍事力の維持やアメリカのプレゼンスに対しても積極的。それは近隣諸国に脅威を感じる日本政府にとってはありがたく映ります。
しかし、共和党の政策は昔ながらの「偉大なるアメリカ」の幻想で、より内政の矛盾に目を向けた政策をと民主党は主張します。アメリカが健全であることが日本の利益につながるという意味では、民主党の主張も無視できません。
この矛盾を咀嚼して、いかに日本の立ち位置を決めてゆくか。沖縄の基地問題や領土問題をからめてみれば、アメリカの選挙の行方は人ごとではないのです。
アメリカ人の多くも、独立戦争から南北戦争、2つの大戦と公民権運動といった過去の栄光への執着より、未来へ向け経済や社会問題が山積する厳しい現実をどうハンドルするかといった視点で今回の選挙にのぞむはずです。その一点に共和党と民主党がどのようにアピールするか。来週も、民主党大会の結果もふまえ、再び今回の選挙についてまとめてみたいと思います。