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アフガンで米兵が市民に銃乱射

【海外ニュース】

President Hamid Karzai said on Friday he was at “the end of the rope” over what he termed America’s lack of cooperation in investigating the rampage that killed 16 civilians.(New York Timesより)

ハミッド・カルザイ大統領は金曜日に16名が虐殺されたという非道な行為の調査にアメリカが協力しないことに対し、万策が尽きたと表明した

【ニュース解説】

もう20年近く前のこと、ベトナム中部の、ダラットというリゾート地で、ゴルフ場の芝を管理している50代のアメリカ人に出会ったことがありました。
町からは、遠くにはベトナム戦争のころ激しい戦場となった熱帯雨林の山々がのぞめます。
男の名前は最早覚えていませんが、彼はその山々を転戦し、生死をかいくぐってきたのです。
戦後、アメリカ南部の故郷に戻ってから、戦争の鮮烈な経験がゆえに普通の生活ができなくなり、ベトナムにまいもどり、ゴルフ場の芝の管理をはじめたのだということでした。無口で、どことなく悲しげな眼差しが印象的でした。
2週間ほど前、アフガニスタンで米兵が子供を含む一般市民16名を殺害した、痛ましい事件がおきたというニュースをテレビで知ったとき、なぜかあの元米兵を思い出したのです。

私はサンフランシスコからフランクフルトまでのフライトを終え、フランクフルト空港のラウンジでこれを書いています。このような事件が起きた後に、大西洋を越えるフライトに搭乗するたび、多くの乗客はテロを畏れ、空港の警備も強化されて、様々な不便が伴います。

サンフランシスコでは、アフガニスタンなどで命の危険におびえながら警備にあたる兵士の精神状態が限界にきていると、評論家が解説していました。ダラットで出会った男の話によると、アメリカに戻ってからは、何かにつけ怒りが込み上げ、故郷の人と全くうまくいかないばかりか、夜になると落ち着かず、何度もふらふらと外を歩いていたということです。

アフガニスタンでも、アメリカ兵への攻撃の多くは夜おきます。
そこで、アメリカ軍は村々に夜捜索をいれ、タリバン兵を見つけようと懸命です。カルザイ大統領は、そうした行為が現地の人を刺激するとして、夜の捜索の禁止と米兵を基地の中に留めるよう要求しました。
しかし、アメリカからみれば、それではテロの封じ込めができなくなります。
カルザイ大統領にとっては、タリバンを押さえ込むためにはアメリカの協力は必要。しかし、最近おきた、タリバン兵の死骸に米兵が放尿したり、コーランを焼いたりという事件に続き、今回の rampage (暴挙) は、まさに the end of the rope、(万策尽きた) という気持ちであるというわけです。

問題は二つ。一つはアメリカが犯人を拘束して、アフガニスタンに引き渡さず、帰国させ裁こうとしていること。これでは、現地の世論は硬化します。そしてもう一つは、16人の虐殺が一人の兵士ではなく、組織的に行われたのではないかという疑いが残っていることです。

明治時代、日本は extraterritorial rights (治外法権) に悩みました。
国内での外国人の犯罪を処罰できなかったのです。西欧諸国は、日本は法の整備が不十分で、江戸時代のような残虐な刑罰に自国の国民がさらされることを懸念し、治外法権存続を主張。日本は刑法や民法を整えて、改善に努めました。
そして、戦後、米軍兵士は日本では裁けませんでした。沖縄で少女が米兵に暴行される事件がおき、The Japan-U.S. Status of Forces Agreement (日米地位協定) がやっと見直されるきっかけとなったのは最近のことです。この地位協定が今アフガニスタンで問題になっているのです。
そうしてみると、この事件は決して日本に無縁なことではありません。

アメリカの西海岸にはアフガンからの移民も多く、アフガニスタン料理が静かなブームにもなっています。そんなエスニックな香りと、イラク侵攻や近年のイランとの対立、9.11事件などによるイスラム圏への偏見は、アメリカ人の気持ちを示すコインの表と裏というわけです。

そして、イスラム圏の人々に、自らが治外法権の対象として扱われているかのようなアメリカや西欧への不満が増幅しているはまぎれもない事実です。

今回のアフガン問題にどう対処するか。これは大統領選挙の行方のみならず、今後の世界の治安を考える上でも無視できない課題なのです。

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