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アグレッシブに見える海外での様々なコミュニケーション

“Every person has a unique communication style, a way in which they interact and exchange information with others. There are four basic communication styles: passive, aggressive, passive-aggressive and assertive.”

(全ての人は、他人とやりとりをするときに、それぞれ独自のコミュニケーションスタイルを持っている。それは大きく「受動的」、「積極的」、「その双方」、あるいは「断定的」といった4つに分類できる。)

「自分」を主張するコミュニケーションスタイル

 中東の人はコミュニケーションスタイルが強いとよく言われます。
 商談などをするときに、強く相手に迫り、激しいやりとりを繰り返すので、周りにいる人がびっくりすることもよくあるようです。
 私の友人にイラン系でアメリカ人の女性と結婚して、アメリカに移住した人がいます。
 彼の奥さんは最初、夫がイランで何かものを買うとき、あまりに大きな声で怒鳴り合うために、喧嘩をしているのではないかと誤解し、時には涙を流すこともあったと話します。
 
 ところが、そういうアメリカ人が仕事などで白熱した議論をするとき、日本人からすると、彼らもあたかも喧嘩をしているかのように見えるのです。アメリカ人も自分の意見を語ることに躊躇しません。日本人的に考えれば、もう少し空気を読んだり、他人のことを考えたりして発言してはどうかと思うわけです。
 基本的にアメリカでは、何か言わなければならない人は、そのニーズを口にして語らない限り、誰も相手にしてくれない文化があると言われています。ですから、ニーズを察してもらえると期待する日本人の気持ちは、相手になかなか伝わりません。
 
 では、そうした文化があるのはアメリカだけかというと、そうではなかったわけです。冒頭で紹介した中東の人のコミュニケーションスタイルが、アメリカ人よりも激しいものだと聞けば、それはそれで興味深い発見です。
 そこで思い出すのが、インドです。
 インド人は自分たちのことを、極めて Individualistic(個人主義的)であると表現します。Individualistic な人といえば、誰もがまずアメリカ人を想像するのですが、インド人は自分たちの方がその点では上を行っていると言うのです。
 

文化で異なる「Individualistic」な行動様式

 ここで、面白いエピソードを紹介します。
 それはすでに20年ぐらい前のことです。当時、私はニューヨークに住んでいました。カリフォルニアまで出張し、夜遅くニューヨークに戻ってタクシーに乗ったときのことです。忙しい出張を終えた後の長いフライトだったこともあり、タクシーの中ではただぼんやりと窓の外を流れる景色を眺めていたかったのです。
 ところが、タクシーに乗るや否や、運転手さんが話しかけてきます。

「お前はどこから来たのか」

という質問から始まって、いろいろなことを聞いてくるのです。私はとっさに、この人はバングラデシュからの移民だなと思いました。言うまでもなく、バングラデシュはインドの隣国で、住んでいる人の多くはインド系です。どうしてそう思ったかといえば、彼の風采はもちろんですが、なんといっても私に対して話しかけてくるそのスタイルがヒントだったのです。
 そして、ついに彼は私に対して、

「日本人はお金持ちで羨ましい」

と話してきます。
 やれやれと思って適当に受け流していると、

「お前の月収はどれくらいなんだい?」

と聞いてきます。
 これには流石にうんざりして、

「Well. I think it is not your business…right?(それって君には関係ないことだよね?)」

と答えたのです。
 すると、彼はとたんに不機嫌な声で、

「わかったよ」

と言うと、そのまま黙り込んでしまいます。私はもちろん、そのまま彼をほったらかしにして、こちらも黙って窓の外を眺めます。ほっとしたのを覚えています。

 
 とはいえ、このように自分の好奇心をそのまま表現するインド系の人々のコミュニケーションスタイルは、確かに特異です。おそらくこの運転手さんは、どうして私が自分の月収を尋ねられたことにうんざりしているのか、理解していないのかもしれません。
 言い換えれば、インド系の人々の Individualism とは、自分の好奇心や、自分がやりたいこと、あるいは人にやってもらいたいことを、はばかることなく表明するコミュニケーションスタイルを意味しているのかもしれません。
 
 しかし、こうしたコミュニケーションスタイルは、当然アメリカでは摩擦を起こします。アメリカの Individualism は個人と個人が別々で、それぞれにプライバシーがあることを前提としているからです。月収を尋ねることは、日本ではもちろんですが、アメリカでもタブーなのです。しかし、インドではこうしたやりとりがよくあることは、インドに行ったことのある人ならおわかりでしょう。
 そして、彼らは自分の思い通りの反応を得られなかったときは、実に残念そうな、あるいは不満そうな表情をします。しかし、それが本当に彼らの心を傷つけているのかと言えば、そうとも言い切れず、単純に思い通りにいかなかったことへの不服の気持ちだけなのだと、あるインド人は語ってくれました。
 Individualism と一口に言っても、その単語の意味する行動様式は文化によってかなり異なるのです。
 

主張せず「空気を読む」日本人のコミュニケーションは…?

 昨日、イラン人の友人に、明日は彼の知っている二人の人物に会いに行くんだよと話しました。まさに Individualistic なキャラクターを象徴する二つの民族、アメリカ国籍のイラク系の人と、アングロ・サクソン系のアメリカ人にこれから会いに行くのです。彼らは仕事の上でも個人的にも深い絆のある友人です。
 しかし、彼らは二人でいると、いつもお互いに自分のニーズを主張し合い、なかなか譲りませんいつ二人が大げんかを始めるのかとハラハラします。
 
 「いえね。彼は特に自分と違う意見をどんどん言って切り込んでくる人の方を、むしろ信用するんだよ」と、イラン人の友人は、そのアングロ・サクソン系のアメリカ人のことを解説します。
 
 日本人は、人と意見が異なれば、あえてそれを口にせず、波風を立てません。自分のニーズが相手に伝わらなければ、泣き寝入りすらして、自分だけが犠牲になることもしばしばです。このイラン人の友人との会話を通して、そんな日本人のコミュニケーションスタイルの方が、世界的に見れば奇異なのかもしれないなと、つくづく思わされたのでした。
 

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タクシー乗務員の中山哲成氏は、英語の接客を競い合う『英語おもてなしコンテスト』の最優秀賞受賞者。さらにプロの通訳者や有名予備校の講師らが参加する国内最高峰の英語スピーキングコンテスト「ICEE 2018」では、決勝トーナメ ント進出の大活躍。
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見えない組織から生まれたアメリカの新たなうねり

“The more you can make your organization invisible, the more influence it will have.”

「あなたの組織が見えなくなれば、より多くの影響を与えることができるようになる」
― Douglas Coeの講演より

Invisible organizationが思い描くキリスト教の再組成

 Invisible organization「目に見えない組織」という言葉があります。これは通常ビジネスなどで、バーチャルな連携によって発生する組織を意味する言葉です。
 しかし、この言葉は元々宗教活動などにおいても使用されていました。
 例えば、キリストが最初に伝道を始め、その後彼の弟子たちが教えを広め始めたとき、それは Invisible organization でした。しかし、その組織は確実に拡大し、やがてローマ帝国末期に国家の宗教として崇拝されるに至りました。
 
 この Invisible organization の運営者であることを自認した人物が主催し、大統領をはじめとするアメリカの政財界の大物が、任期中に必ず一度は参加するイベントがあるのです。それは毎年2月の最初の木曜日に、朝食からランチ、さらにはディナーに至るまで開催される ”National Prayer Breakfast” です。2017年の冬に他界したDouglas Coe という人物が運営する、The Fellowship というキリスト教系の組織がそれを主催します。Douglas Coe は、オレゴン州出身のプロテスタント系の伝道師で、終生自らのことを Invisible organization の主催者だと語っていました。実際、彼の主催する組織の活動に参加した政治家は民主党共和党を問わず、直近ではヒラリー・クリントンジョージ・W・ブッシュなど、アメリカのほとんど全ての指導者を網羅しています。
 そして、Douglas Coe はネットワークを通じて、世界中の政治家とアメリカの指導者とのミーティングをアレンジし、イスラエルやアフリカ諸国、ソビエト崩壊後のロシアなど、様々な地域とアメリカとの紐帯に貢献したのです。これは、日本ではあまり知られていない事実でしょう。彼はその組織を通じて一つの目論見を果たそうとしていたように思えます。それは、キリスト教の再組成という遠大なビジョンです。
 

アメリカで静かに進行するキリスト教の融和

 アメリカ人の多くはキリスト教を信仰しています。アメリカ人の最大多数が所属する様々なプロテスタント系の宗教組織に加え、アイルランドやイタリア系のアメリカ人を中心にローマ・カトリックも深く社会に浸透しています。
 今、そんなキリスト教を一つにまとめようとする動きが静かに進行しているのです。その輪は、キリスト教の母体として旧約聖書を共有するユダヤ教にまで及ぼうとしています。元々アメリカの友好国ではあるものの、トランプ政権はさらにイスラエルとの同盟関係を強化し、中東諸国に衝撃を与えています。さらに、アメリカとロシアも決して以前のように激しく敵対するライバルではなくなりました。ロシアがソ連の主軸国であったころ、アメリカは共産主義への脅威から、ソ連と激しく対立していたことは周知の事実です。しかしソ連が崩壊し、ロシアに伝統的に根付いていたロシア正教の活動が活発になると、アメリカとロシアは猜疑心を持ちながらも静かな接近を始めたのです。
 
 西暦395年にローマ帝国の国教となって以来、ローマ帝国に保護され、国家の精神的支柱となったキリスト教を、人々はローマ・カトリックと呼びました。そしてローマ・カトリックは、自らの教義に相容れないキリスト教徒を異端として追放し、以来長年にわたってそうした人々に厳しい迫害を加えてきました。そして、キリスト教ではないにしろ、キリスト教の母体ともいえるユダヤ教に対しても同様の迫害を加え、その伝統は近現代にまで至りました。帝政ロシアナチス・ドイツでのユダヤ人への迫害は、20世紀の記憶として人々の心に焼き付いています。さらにローマ・カトリックは、東ローマ帝国が主催するキリスト教に対しても、教義の違いをもって絶縁し、それがロシアやギリシャなどで信仰される正教会と呼ばれるキリスト教の母体となりました。
 16世紀以降、そんなカトリックの権威に対抗して広がったプロテスタント系の人々の活動も、神聖ローマ帝国とつながるカトリック系の国王や領主などからの厳しい弾劾を受け、プロテスタント系の人々の多くが新大陸に避難し、アメリカ合衆国成立の原動力となりました。このように、キリスト教の様々な分派は分裂と対立を繰り返し、お互いを強くけん制しながら、現代に至ったのです。
 
 過去に一度、そんなキリスト教世界がまとまろうとする動きがありました。それは、イスラム教国であったセルジューク朝トルコが東ローマ帝国を圧迫したときのことでした。時の東ローマ帝国皇帝が、絶縁状態にあったローマ・カトリックの教皇に救援を求めたのです。それが世に名高い十字軍が始まった原因となりました。一瞬とはいえ、キリスト教が対立から融合に向かった瞬間です。1096年のことでした。
 それから1000年近くを経た現在、キリスト教の多様な組織が共存するアメリカ社会の中で、それまでの対立から融和へと向かう静かな活動が再び始まったのです。それは、共産主義の脅威に起因し、現在ではイスラム教との対立軸の中で政治とも融合する一つのうねりとなりつつあります。それがトランプ政権でのイランや中国との対立、さらにはイスラエルとの同盟強化の向こうにあるパレスチナの人々やアラブ社会との対立などを生み出しました。こうした静かな動きを支える組織こそが、Douglas Coe などに代表される Invisible organization なのです。
 

(左から) ポパイ,スーパーマン,トムとジェリー

日常の小さな営みから巨大なうねりへ

 人は、生まれながらにしてその地域の文化の影響を受けて育ちます。
 例えば、アメリカの漫画を思い出してください。スーパーマンでも、トムとジェリーでも、ポパイでも、そこには常に正義のヒーローと悪人とが存在し、正義が悪をやっつけるというテーマが底流しています。子供の頃から、人々は無意識に、この二元論を植え付けられてしまうのです。その背景には宗教での正邪の発想があります。この正義と悪との二元論は歴史を通して人々の心に刻まれ、人々を敵と味方とに引き裂きました。古くはキリスト教内での異端への弾劾に始まり、近年では第二次世界大戦において、ドイツ人が自らを正義として、ユダヤ人は悪人であるというレッテルを貼って虐殺しました。今、アメリカ社会の中には、共産主義を経て、イスラム教への脅威が新たな善と悪という対立項を人々の心の中に植え付けています。この善と悪という二元論が浸透する過程を見れば、最初の段階ではどこにもそれを指導するリーダーは存在しません。それは町の教会での日曜日の礼拝や、学校での道徳の授業、あるいは家庭教育などといったごく日常の中で培われてゆく価値なのです。そして、それがある程度社会の価値として認知されたとき、そこに指導者が現れ、一気に社会や国家を統率するようになるのです。Invisible Organization とは、そうした日常の小さな営みを巨大なうねりに変化させる見えない触媒の役割を担っていることになります。
 キリスト教が過去の対立から融合へと向かうのが良いことか、それとも新たな二元論へ向けて人々を駆り立てる危険な行為かは、我々一人一人がしっかりと判断しなければならないことでしょう。
 
 ただ、現在問題となっている政治の世界でのポピュリズムが、この日常の価値を巨大なうねりへと変化させる強力な触媒となっていることは事実です。日本と韓国との対立、中国とアメリカとの対立、イスラム社会でのシーア派スンニ派との対立、さらに宗教に起因するインドとパキスタンとの対立など、二元論が社会に浸透するとき、常にそこには Invisible Organization という触媒があり、それによりガスが充満したときの起爆剤の役割を担おうと、チャンスを狙う指導者がいることを我々は注視しなければならないのです。
 

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『アメリカ史 / A Short History of America』西海コエン (著)アメリカ史 / A Short History of America』西海コエン (著)
アメリカの歴史を読めば、アメリカのことがわかります。そして、アメリカの文化や価値観、そして彼らが大切にしている思いがわかります。英語を勉強して、アメリカ人と会話をするとき、彼らが何を考え、何をどのように判断して語りかけてくるのか、その背景がわかります。本書は、たんに歴史の事実を知るのではなく、今を生きるアメリカ人を知り、そして交流するためにぜひ目を通していただきたい一冊です。

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テロの悲劇、なぜスリランカかと問われれば

Eranga Jayawardena / AP

“Sri Lanka attack death toll rises to 290.”

(スリランカが標的となり、死者は290名に至る)
― CNNより

平和な日常を突如脅かすテロ行為

 先日、ソウルで知人と夕食を共にしました。そのとき、夜一人で散歩ができ、ホテルに金属探知機も置かれていない、日本や韓国の安全について話し合うことがありました。
 そもそも韓国は、長年にわたって北朝鮮からの攻撃の脅威に晒されてきたはずです。
 しかし、彼を含め、多くの韓国人は北朝鮮の脅威について、別に差し迫ったことではないと思っています。
「韓国も日本と同じように、平和の中で人々の心が麻痺しているのですよ。朝鮮戦争が終結して以来、今まで何度もいろいろなことが起き、そして何度も統一について話が出ました。でも、その度に結局何も変化なく、現在に至っています。北朝鮮のことは、あまり日常的になりすぎて、誰もが慣れっこになっているのですよ」
その人はそう言います。
 実は、以前インドで知人にパキスタンのことについて尋ねたときも、同様の答えが返ってきたことを覚えています。
「これは日々の生活の一部のようなものなんですよ」
そのインド人は、このように話していました。
 

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

ムンバイのトイレ論争が語るもの

【海外ニュース】

In Mumbai, a battle over toilets for women
“We all feel that is a basic civic right, a human right,” said Minu Gandhi, a social advocate.
(International Herald Tribuneより)

ムンバイで女性用トイレをめぐる紛争が
これは基本的な権利、人権の問題ですと、社会運動家のミヌ・ガンディはコメントする

【ニュース解説】

シンガポールから羽田への機上でこの新聞を読んだとき、あの灼熱の大都会ムンバイの混沌とした喧噪とエネルギーが瞼の中によみがえりました。
2000万人を越すのではないかと思われる人の住むムンバイ。そこは、単に貧富の差が著しいというだけでは言い表せない深刻な社会問題を抱えています。一方で、この街はハリウッドを模してボリウッド Bollywood と呼ばれるインドのエンターテインメントビジネスの中枢であり、経済的にもインドを牽引する商業都市です。この繁栄の光と闇の醸し出す混沌が、この街の特徴なのです。

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