日本の「お国自慢」のリスクと落とし穴
日本のことを、海外の人にいかに説明するかということは、我々にとって永遠のテーマです。
我々の殆どは、生まれてこのかた日本の文化や日本人の習慣につかって生きてきました。そう、我々の殆どは、日本という漬け物の桶に漬かってきたのです。
だから、海外の人が日本のことをどのように感じ、理解しているかを我々が客観的に感じること自体がなかなか難しいのです。
まず注意したいことは、海外の人に日本を語るとき、日本を余り特別視して語らないことです。
日本人が日本文化を誇りに思うことは悪いことではありません。でも、それをことさら強調すると、間接的に相手の文化への否定と思われることがあることを意識しておきましょう。
「どうだ日本はすごいだろう。お前の国にはないだろう。こんなことは」と相手にとられないように、話をすることが大切なのです。
常に、日本は世界の中の一つの国というスタンスで、自らを敢えて日本の外におくぐらいの意識で解説する方が、相手の心にもよく浸透します。
最近、「おもてなし」という言葉をよく耳にします。
オリンピック招致でもこの言葉が特に取り上げられました。
しかし、「日本には素晴らしいおもてなしの心があります」と言えば、世界のリアクションは、「私の国だっておもてなしの心はありますよ。世界のどこでも同じじゃないですか」となってしまいます。
以前、ある国の人に、「日本には美しい四季があります」と言った人がいましたが、「僕の国だって、四季はあるよ」と怪訝に思われたことがありました。これと同じリアクションを受けないようにすることは日本を紹介する上で、何よりも大切なことなのです。
また、日本が島国で、海外とは異なりユニークなのだと意識しすぎることも問題です。
よくビジネスの世界などで、日本独特の商習慣などを説明するときに、「日本のシステムは他と違ってユニークですから」という人がいます。
これも、「どこの国だって、その国ならではのユニークさはあるよ」ということになってしまいます。
では、具体的に、どのようにすれば相手にうまく説明できるのでしょうか。
最初に意識しなければならないことは、できるだけ具体的な事例をもって説明することです。
おもてなしを説明するとき、日本ならではのおもてなしの実例を具体的、そして客観的に説明します。
日本の商習慣についても同様で、何が相手の国と異なり、どこに注意しなければならないかを、具体的な事例で語るのです。
形容詞で感想を述べるのではなく、客観的な事実を解説しましょう。
次に、相手との共通項から話を進めることもおすすめします。
例えば、アメリカから来た人に、「アメリカも秋は綺麗だときいています。実は、日本も秋はとても素敵で、観光にはおすすめです」
という言葉で切り出します。そして、その後は具体的に。「例えば、11月に京都に行けばお寺の周辺がみんな紅葉して、散策にはもってこいです」という風に、具体性と客観性をもって説明します。
最後に、日本を紹介するときに、We Japanese という表現は、控えましょう。それは役所などによるプロパガンダのイメージを与えてしまいます。
次回は、こうした中で、特に今回取り上げられた「おもてなし」について、本当に日本流の「おもてなし」が海外の人に受け入れられるのかどうか、掘り下げてみたいと思います。(「日本を紹介するノウハウについて」その2へ)
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