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グローバル・スタンダードでの「おもてなし」を考えよう

It was our pleasure having you on board of Vistadome train. We hope that you enjoyed the quality of attention and service offered by PeruRail during your journey.
(ペルーレイル)

ビスタドーム号にご乗車いただき、心からお礼申し上げます。ペルーレイルのサービスにご満足いただけたことを祈念します

これは、ペルーの観光列車に乗車した顧客にもれなく送られる電子メールの一部で、そこにはサービスに満足したかどうかのアンケートもついています。
ペルーレイルは、バーミューダに本拠地をおいて、世界各地でホテルや観光列車などを運営するベルモント社が資本提携している鉄道会社です。

ペルーは南米にあり、インカ文明の遺跡マチュピチュなどで知られた国です。
ペルーを含め中南米の国々は、アメリカに多くの移民を送り込んでいます。しかし、母国であるそうした国々へ行けば、英語が通じないことに驚かされます。ペルーも例外ではありません。
今回、たまたま、そんなペルーでの研修の仕事があり、首都リマにある顧客のオフィスに3日間滞在したあと、ペルー観光のゴールデンルートと呼ばれる、マチュピチュ、クスコ、そしてチチカカ湖へと6日間の旅ができました。

英語の通じないペルーにおいて、ペルーレイルのように外資と提携したホテルや、そうした施設と契約するガイドといった、観光地のプロの英語の質の良さには驚かされ、多くを学びました。
ペルーの東南部は、観光収入に経済そのものが頼っています。例えばチチカカ湖で水上生活をするウル族などは、その収入源のほとんどが、観光客からもたらされます。そうした場所で活動する観光ガイドが、極めて質の高い英語で、地元の文化を発信するのです。

日本人が観光をするとき、多くが通訳つきのグループで行動するため、こうした観光地での英語でのサービスの質について、気付くことは少ないかもしれません。そもそも、我々は海外でなされているサービスに対して鈍感になり過ぎているのではないでしょうか。
ペルーをはじめ、海外の観光戦略と比較したとき、日本の観光戦略は、自らがグループツアに依存しながら海外旅行をしているためか、外国人を受け入れる発想も、そうした団体旅行的な発想に偏っている気がしてならないのです。
しかし、観光収入を本気で考える場合、団体ではなく、家族やカップル、そして友人などとの目的をもった個性ある旅を求める海外の人の心をしっかりと掴むことの大切さを実感します。
そこの国の文化を自分に合った方法で楽しもうと、時には我々にとっては思いもつかないことに興味を持ち、深く入り込み、リピーターとなってくれる彼らへのサービスこそが、今日本の観光産業が最も磨かなければならないノウハウだということを、ペルーなどにくると実感するのです。

例えば、ペルーの鉄道は極めて不便で、インフラも遅れています。
しかし、チチカカ湖に面した都市プーノとインカの古都クスコを結んでのろのろと走る観光列車は欧米の人に大人気で常に満席状態です。その列車はガタガタの軌道を走りますが、その100メートルほど前を小さな作業車が先導して安全を配慮します。
私は、クスコとマチュピチュとの間を結ぶ同様の列車を使って、片道3時間の日帰りの旅をしました。列車の中での英語のサービスはもとより、帰りは夜のために車窓からは何も見えないため、退屈しないように現地の素材で造った衣服によるファションショーを列車の従業員が行うという気の使いようです。
ポイントは、それらのサービスが押し付けがましくなく、旅行者のプライバシーに立ち入ることもなく、さらりとなされていることです。
もちろん、英語の通じにくいペルーであれば、タクシーに乗れば、運転手の英語はカタコト以下です。しかし、手振り身振り、筆談で旅を続ける楽しさをそんなときは味わえます。オープンであることこそ、最大の「おもてなし」というわけです。

以前、福岡のあるホテルの支配人と話したとき、外国からの旅行者が田舎の旅館を体験したいといったところ、英語ができないので外国人は断っているといわれたことがあるというエピソードを思い出しました。
その支配人は海外の体験が長いこともあり、問題の旅館と交渉し、旅館としてできることとできないことを外国人に伝え、外国人も何を体験したいか事前に旅館に知らせることで、なんとか問題を解決したそうです。

しかし、旅館側が英語に不慣れで「おもてなし」ができないために外国人に迷惑がかかるという発想は、外国人からみれば、差別され、交流を閉ざされた冷たい対応と映るはずです。
外国人に優しい「おもてなし」を提供するには、英語ができないことにひけめを感じず、卑屈にならず、オープンで、相手を思い切って受け入れる深さが最も求められます。
そして、自分の常識で与えるだけではなく、相手の個性あるニーズをしっかりと理解して臨機応変に対応する融通性が必要です。

日本と比べれば、インフラ面では相当差を感じながらも、ペルーの観光戦略から我々はむしろ学ぶことの方が多いのではと、今回の旅を通して実感したのでした。

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