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ワクチン接種の遅れが見せつける日本という国の劣化とは

Book or manage your coronavirus vaccination appointments, you can read about the vaccine and what will happen on the day of your appointment.

(コロナウイルスワクチン接種の予約とその対応について、予約が取れたときにどのようにすればよいか、以下の予約をお読みください)
NHS(イギリス健康保険サービスの案内)より

政府の無力さに国民が声を上げない日本の不思議

 今回のヘッドラインは、イギリス政府のコロナウイルスのワクチン接種に関するアナウンスです。ここでの具体的情報から、イギリスではワクチン接種がどんどん進んでいることが伺えます。
 
 対照的に、日本は先進国といわれている国の中で、際立ってワクチンの接種率が低いとよく報道されます。
 しかし、その責任が政府にあることを強く指摘するメディアはあまりありません。国会でもそこを追求する議員を見かけないことも不可思議です。
 さらに、EU等がワクチンの輸出量を制限しているために接種が進まないという政府の説明を、国民がただ納得しているかに見えることが理解できないのです。
 
 今日、アメリカのある教育者とZoomで打ち合わせたとき、アメリカでは留学のために入国した学生にも接種を行なっており、すでにあらゆる世代にワクチンが行き渡ってきているということです。
 アメリカだけではありません。カリブの小さな国バハマの人口は35万人ですが、すでに1万5千人への接種が終わっていると、文化省の大臣を務める知人が話してくれています。それよりはるかに人口の多い日本での接種数と、さほど変わらないのです。
 
 日本では、どのように効率的にワクチン接種するかという予行演習ばかりが先行し、肝心な接種自体への具体的な情報すら届きません。
 先週、かかりつけのクリニックで定期検診を受けた際、そこの医師が彼らですらまだいつワクチンを受けられるのか全く情報がなく、今後どのようにワクチンを入手して接種ができるかもわからないとこぼしていました。海外との落差の大きさに驚かされるばかりです。
 
 それでいて、今回コロナの第4波がくるのではとメディアは騒ぎ、大阪などでは飲食店などへの営業時間の短縮要請に乗り出そうとしています。「マスク会食」という滑稽なアドバイスが横行し、メディアも第4波への対応のみに焦点が当てられています。もちろん、ウイルスの蔓延を防ぐために人々が協力しなければならないことはいうまでもありません。政府の怠慢の上に、こうした規制だけが先行し、それに対して誰も声を上げない状況を指摘したいのです。
 
 海外との交流経験のある人なら誰でも少しはおかしいと思うはずです。主要国の中で日本だけが、感染の有無を調べる検査にしろ、ワクチンの接種にしろ、何も本格的に進めません。そして、ただマスクの着用と他の人との距離、さらには飲食店の時短要請だけを1年以上、オウムのようにくり返す政府の無力さに抗議が高まらないのはなぜでしょうか。
 

政府・企業が海外とネットワークできない日本の劣化

 ワクチンの接種が遅れている理由は簡単です。政府のネットワーク力、海外との交渉力の脆弱さがその原因です。
 1年前からワクチンの開発を行なっている企業と先を読んだ強い商談を行い、同時に政府間でも外交課題として打ち合わせを行なえなかった国の力の問題なのです。さらに怖いのは、そうした状況を見抜いてはっきりと指摘し、抗議できるメディアも政治家もおらず、国民もただ国の言い訳を聞き、黙って耐えてばかりいる状況です。
 
 よく日本は自由主義の国で、言論の自由があるかのようにいわれていますが、実は日本ほど情報が共有されていない国は、主要先進国の中でもないのです。
 例えば、警察に拘束された被疑者は、取調室に弁護士も呼べません。ですから、犯罪や治安に対する情報も共有できてはいないのです。同様にコロナウイルスに関する情報開示も、一方的な国の発表や要請に従う以外に方法がないのです。
 
 これは国に限ったことではありません。
 企業の将来を考えれば、それはそれでぞっとします。多くの日本人が日本企業の実情に気づかず、将来を楽観しているからです。
 日本企業が海外とネットワークできない状況は、今ではワクチンと同様に、海外からの先端技術の導入やそれに関連した製品の供給の遅れとなって顕在化しています。
 問題はそれが世界共通の現象ではなく、日本だけに起こっている課題であることに、多くの人が気付いていないことなのです。
 
 具体例を挙げるならば、自動車業界は今、アメリカからアジア、そしてヨーロッパに至る横のネットワークなしには、技術開発を単独で行うことは不可能です。
 日本人だけが経営し、日本人だけで造り、海外の支社ですら日本の本社だけを見て業務を行う、「ジャパン・インク」と呼ばれた閉ざされたピラミッド型ネットワークでは、将来に向けた競争力に大きな限界があるのです。あと15年もすれば、その限界が現実となって日本全体を見舞うはずです。
 
 それにもかかわらず、例えば日本人の英語力の低さを改善しようとしても、中等教育や高等教育の現場では、いまだにコミュニケーション型の英語教育へと移ることすらできずにいます。ですから、今後もネットワークできない日本人が量産され、それが国力の劣化へと直結しようとしています。そんな情報すらも国民の間に共有できていないのです。
 怖いことには目を閉じていればいいという発想なのか、国民は本当に大人しく、情報を求めて抗議行動を起こせば、それが和を乱す行為として、行動した人が孤立するという現象が今でも続いているようです。
 

「英語が話せる」ことよりも多様な人材と「英語で語り合う」こと

 では、ネットワークがより大切な時代に取り残されないためにはどうしたらいいのでしょう。アメリカやオーストラリア、イギリスやシンガポールといった、海外から人が集まる国での教育現場を見るとそれは明白です。
 2年前にハーバード大学の授業を聴講しました。教授は中国系です。そこでのワークショップの参加者は20名ほどで、アメリカ人はほんの5名だけ。あとは世界の様々な地域の留学生や、海外に強いルーツを持つ学生でした。
 海外に強いルーツを持つという意味は、彼らが移民の1.5世だからです。彼らは、幼少期に両親とともにアメリカにきて、そのままアメリカに残って成人した学生です。理屈の上では移民2世ですが、2世よりは母国との絆が強く、かつ自身のアイデンティティにも二つの国が混在しているのです。
 
 留学生や1.5世の繋がりは貴重です。彼らは将来それぞれの国で活躍するか、アメリカの業界でサバイブしてゆくのです。一つの授業や教室の中に、そんな人材が凝縮しているのが、海外の大学などで勉強することのよさなのです。
 授業では、教授と学生が活発に語り合います。したがって、文法などにはこだわらず、様々なアクセントの英語が飛び交います。事前に課題を出し、それに対して議論をするわけで、そこで活発な討論がくり広げられます。講義はまさに学生の個性や才能の交流の場となるわけです。
 
 日本の政治家や官僚、産業界にもこうした経験を積んだ人が希少です。そして悪いことに、英語が話せて、ちょっと日本人に「かっこよく」見えるスピーチをすれば、そこに喝采が集まり、その質や内容を冷静に見極める人材も不足気味です。
 
 ワクチン流通の遅れは、そんな日本の状況を象徴しています。
 副作用に慎重となるためだとか、開発国での接種の需要の多さのためだという言い訳に、我々はもっと疑問の目を向けるべきなのです。
 

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『どうすれは日本人は英語を話せるようになるのか!?』アンドリュー・ロビンス (著)どうすれは日本人は英語を話せるようになるのか!?』アンドリュー・ロビンス (著)
日本では英語学習が義務づけられているのに、なぜ実際に英語を話す日本人がこれほど少ないのだろう?絶対確実な言語習得法とはなんだろう?他の国では言語教育をどのように行っているのだろう?
本書では、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学で学んだ著者が、学習者や教師が英語学習でぶつかる障害から、必ず言語学習に成功できる方法までを網羅。「なぜ」そして「どうしたら」言語能力の向上をコントロールできるかを具体的に伝授します。

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