I don’t want our faculties to teach how to get the Nobel Prize. I want them to teach the subjects based on the real needs of the business world.
(私は本校の教授たちに、ノーベル賞をとるための授業はしないように指導している。彼らには実際の実業界が求める分野について教育してほしいのだ)
― 龍華大学学長のコメント より
台湾の産学連携と日本に求められるビジネス人材の育成
先週の水曜日(11月16日)から4日間、九州で台湾の66の大学の連合体を率いる学長数名と、いろいろと打ち合わせ、交流の機会を持ちました。
台湾には科技大学という実学を教える4年制大学があり、そこでは、文字通り科学技術の分野に加え、マネジメントやマーケティングなど、さまざまなビジネススキルを学ぶことができます。また、これらの大学は産学の連合によって数多くのプロジェクトを動かしています。それも、大学内でのプロジェクトではなく、学生の実際の就職などに直結した、大学から企業に向けた、つまり学内から外に向かった連携戦略なのです。
台湾には科技大学という実学を教える4年制大学があり、そこでは、文字通り科学技術の分野に加え、マネジメントやマーケティングなど、さまざまなビジネススキルを学ぶことができます。また、これらの大学は産学の連合によって数多くのプロジェクトを動かしています。それも、大学内でのプロジェクトではなく、学生の実際の就職などに直結した、大学から企業に向けた、つまり学内から外に向かった連携戦略なのです。
一つの実例を紹介します。
台湾企業のTSMCが世界の半導体の供給における一大拠点となっていることは周知の事実ですが、台北を中心としたいくつかの科技大学は、TSMCへの人材供給をTSMCと共同で進めています。
そんな戦略を担う台北にある大学の学長は、日本からの留学生が今求められていると言います。
台湾企業のTSMCが世界の半導体の供給における一大拠点となっていることは周知の事実ですが、台北を中心としたいくつかの科技大学は、TSMCへの人材供給をTSMCと共同で進めています。
そんな戦略を担う台北にある大学の学長は、日本からの留学生が今求められていると言います。
TSMCは2024年の日本での生産開始を目指し、熊本県に工場を建設しています。それに伴って、数多くの関連企業も進出を始めています。この動きに対応するためにも、台湾華語(中国語)と日本語がわかり、双方のビジネス文化を理解できる人材の雇用が必要です。そこでこれらの大学では、4年間の留学期間を通して、語学と技術指導を行い、最後の半年は日本に学生を送り、TSMCやその関連企業でインターンとして活動させたあと、実際にそうした企業に就職してもらうという人材育成のフローを構築しようとしているのです。
台湾は9月から新学期となるので、語学研修は日本で高校を卒業したあと、9月まで行い、加えて新学期になったあとも半年かけて集中的に行うのです。
台湾は9月から新学期となるので、語学研修は日本で高校を卒業したあと、9月まで行い、加えて新学期になったあとも半年かけて集中的に行うのです。
こうしたプロセスを経て就職する人材は、台湾と日本との双方のビジネス環境で働くノウハウを習得しているわけで、初任給などの雇用条件も当然よくなります。かつ、台湾は台湾華語と英語を国の言語としているために、卒業生の多くは日本語も加えた場合、トライリンガルになるわけです。人材価値としては極めて高くなります。
海外への留学といえば、コストが親に重くのしかかってくることが課題ですが、台湾への留学の場合、欧米などに比べ、その課題も解消でき、ともすれば日本の大学に入学するよりも負担が軽くなります。
海外への留学といえば、コストが親に重くのしかかってくることが課題ですが、台湾への留学の場合、欧米などに比べ、その課題も解消でき、ともすれば日本の大学に入学するよりも負担が軽くなります。
国際競争力を高めるために必要な教育と企業の柔軟性
興味深いのは台湾の教育の柔軟性です。
科技大学が66校集まる台湾の大学の場合、学ぶ科目を学生がそれぞれの大学から選び、他の大学で学んだ単位も認定できる制度があります。さらに、他の国の学校制度を加味した上で、就学する条件などにも柔軟に対応するよう、連合体の中で情報共有が行われています。インドネシアからの留学生がこうした制度を活用して台湾で学んだあと、母国のみならず世界で活動している実例もあるようです。
台湾は、国として強いビジネス基盤を持つことで世界と連携することが、中国の脅威を克服する手段であると、国家を挙げてこうしたプロジェクトに注力しているのです。台湾をはじめとする東南アジアの経済力の伸長の背景には、こうした制度疲労のない柔軟な取り組みが各地で育っていることも、我々は知っておくべきです。
科技大学が66校集まる台湾の大学の場合、学ぶ科目を学生がそれぞれの大学から選び、他の大学で学んだ単位も認定できる制度があります。さらに、他の国の学校制度を加味した上で、就学する条件などにも柔軟に対応するよう、連合体の中で情報共有が行われています。インドネシアからの留学生がこうした制度を活用して台湾で学んだあと、母国のみならず世界で活動している実例もあるようです。
台湾は、国として強いビジネス基盤を持つことで世界と連携することが、中国の脅威を克服する手段であると、国家を挙げてこうしたプロジェクトに注力しているのです。台湾をはじめとする東南アジアの経済力の伸長の背景には、こうした制度疲労のない柔軟な取り組みが各地で育っていることも、我々は知っておくべきです。
今、何十年もその内容に変化の少ない受験勉強を克服して大学を卒業しても、日本ではそれほど高い賃金は望めません。しかも多くの企業では年功序列や男女格差などの課題もまだ充分に解消されず、企業や教育業界の組織自体も柔軟性を失い、将来に向けた持続性が問われることも多くなりました。加えて、日本で高校を卒業するまで英語を学んでも、実際の仕事や交流の場ではそれがまったく役に立っていないことも、教育の大きな課題として長年にわたって指摘されてきました。しかも、その実情を変えようとすると、教育制度や教育者の意識にブロックされた大きな抵抗の壁にぶつかってしまいます。
そんな少々出口の見えないなかで、これから日本の若者が厳しい国際競争で淘汰されないためには、こうした台湾の制度などを謙虚に研究し、留学を通した進路も指導できるような教育人材の育成も求められます。
大切なことは、日本では賃金がこの30年ほとんど上昇していないという痛ましい事実です。この犠牲を最も強いられるのが、新卒の高校生や大学生であることは言うまでもありません。人材の価値を上げることが、こうした課題を克服できる唯一の方法であることも、我々は直視する必要があるのです。
大切なことは、日本では賃金がこの30年ほとんど上昇していないという痛ましい事実です。この犠牲を最も強いられるのが、新卒の高校生や大学生であることは言うまでもありません。人材の価値を上げることが、こうした課題を克服できる唯一の方法であることも、我々は直視する必要があるのです。
産学での人材育成や枠にとらわれない柔軟な姿勢をもって
台湾もアジアの一員であることから、そこには日本にも共通したコミュニケーション文化が存在します。もちろん、若年層と年齢を重ねた人との意識や価値観の相違も日本と同様に顕著です。しかし、逆に日本と類似した状況のなかで、それを柔軟な制度改革によって改善しようとする姿勢が教育者に見受けられることは、今回大きな刺激となりました。
ある大学の国際教育部門の責任者は、元英国航空のパイロットでした。ユニークな人材活用です。また、今回4日にわたり意見交換をした学長が経営するある科技大学は、そこから巣立った人材の一人が、シャープを買収したホンハイ精密工業の創業者として知られる郭台銘(かく たいめい)氏であることもあり、科技大学の持つ人材交流の深さを知ることができました。
ある大学の国際教育部門の責任者は、元英国航空のパイロットでした。ユニークな人材活用です。また、今回4日にわたり意見交換をした学長が経営するある科技大学は、そこから巣立った人材の一人が、シャープを買収したホンハイ精密工業の創業者として知られる郭台銘(かく たいめい)氏であることもあり、科技大学の持つ人材交流の深さを知ることができました。
いま、我々はノーベル賞を受賞する人材を育成しようとするのではなく、企業で実践的に活動できる人材育成をするように教授陣にも指導をしているのです、と学長の一人は強調していました。それが今回ヘッドラインで紹介したコメントです。これは、アカデミックな分野を軽視しているわけではありません。逆に、アカデミックな研究と実学との特性をわきまえて、人を育てるための役割分担をしっかりと意識している大学であればこそ、あえてこうした指摘もできるのだと思います。
将来に向けた人材育成は日本の課題です。日本のお決まりの進学と就職では解決できないこうした問題を本気で考えなければならないのは、学生自身とその学生の将来に不安を持つ親たち、つまり個人個人なのではないでしょうか。
将来に向けた人材育成は日本の課題です。日本のお決まりの進学と就職では解決できないこうした問題を本気で考えなければならないのは、学生自身とその学生の将来に不安を持つ親たち、つまり個人個人なのではないでしょうか。
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『単独世界一周フライトを成し遂げた隻眼のパイロットが語る「夢を実現するための方程式」』前田 伸二 (著)
夢をあきらめるな! 片目を失明しながらもパイロットになり、世界一周を成功させた男の物語。
社会的状況や身体的な理由で、自分の夢や目標を諦めてしまう人もいるかもしれません。本書の著者は、パイロットを目指し勉学に励んでいた18歳の時に交通事故により片目の視力を失いました。一時は自暴自棄になりながらも、アメリカに渡ってパイロットになるという夢を実現し、さらには世界一周フライトも成功させました。夢を叶える途中で直面した挫折や困難をいかにして乗り越えたのか。「生きるための勇気と希望」を一人でも多くの人に届けるため、過酷な現実を克服することで見つけた「夢の実現への方程式」を綴ります。