ブログ

知っているようで知らない海外の日本人観に対応する必要性

It is a monoculture society, right? You have one language, one people, all of you look same. India, every place has different language, different people, Singapore is more…… It’s like a forest. Many different trees…… What should I do.

(日本は単一文化でしょ。言語も一つ。人種も同じ。すべてが同じように見える。インドはすべての場所で言葉が異なり人も違う。シンガポールはさらにすごい……)
― Bala Shetty氏のコメント より

日本人と仕事をした海外の人から見た5つの課題とは

 大学での講義のため、久しぶりにバーラ・シャティというシンガポールの友人と話をしました。彼はインドからの移民で、元『エコノミスト』のシンガポール支局でアジア市場に向けてのマーケティング・ディレクターとして活躍していた人物です。
 彼は、学生へのメッセージとして自分が日本人と仕事をしていたときの課題を5つ指摘してくれました。
 
 彼は言います。まず、日本人と仕事をした時に一番困ったのは、沈黙をどう解釈していいのかわからなかったこと。話をしてから質問やコメントはと言っても多くの人が黙っているので、どうしていいか戸惑ったというのです。
 
 次の課題は、日本人が変化に対して消極的に見えること。何か合理的な理由で物事を変える必要性を感じても、日本人は変化へのリスクを恐れ、また誰が責任を取るのかなどの問題もあって、すぐには応じてくれないのです。
 確かにこれは今の日本の課題でもありましょう。あまりにも会議の運営方法や会議体の持ち方、さらにそこでのコンプライアンスを重視し、完璧主義を取るため、そこから誰も率先して前に進もうとしない組織環境が生まれ、その弊害が指摘されて久しいからです。
 
 3つ目は、日本の会議には多くの人が参加するものの、そんな相手の誰がどの部門の責任者なのかがわからないことだったというのです。日本人同士ならそこに座っている人の序列や責任領域は会議への参加者の態度でなんとなく想定できます。しかし、海外から来た人は日本人の「沈黙」に翻弄されるので、みんな同じに見えて、特定の案件に対して誰がイニシアチブを取る人なのか見分けられないのです。
 よく日本では情報共有の観点から、会議に多くの人が参加します。メールにCCを多く付けるのも日本人の特徴です。会議に参加している人の中には会議中に一言も喋らない人もかなりいて、そんな様子に海外の人は戸惑うわけです。
 
 次に、質問がないこと、フィードバックがないことが彼にとっての問題でした。特にインドで生まれ育った彼にとって、質問することは日常茶飯事だったといいます。これは欧米でも同様です。例えば、大学の講義などでも、教授に向かって学生はどんどん質問し、時には自らの意見をもって講義をする人に問いかけます。こうしたアクティブな対応がないために、自分の提案を相手がどう受け止めているのかわからないというのです。
 
 とはいえ、次第に打ち解けてくると、日本人の反応も理解できるようになってきます。特に、夕食などに招待されると、日本人は驚くほどカジュアルになるので、その段階で「ああ、彼らともコミュニケーションできるんだ」と思いほっとするのです。この変化にはびっくりさせられると彼は言います。これが5番目の指摘でした。
 

スピードと競争を求められるビジネスに適したコミュニケーション

 これを聞いていたアメリカの友人のコメントも興味深いものでした。それは、バーラも長い間日本に住んでいれば、日本人とどのようにすれば情報共有ができ、意見交換ができるのかわかってくるはずで、これは明らかに異文化でのコミュニケーションギャップだと、その人は指摘するのです。しかし、そんな彼も、例えばアメリカの企業が活発な意見交換によって試行錯誤を繰り返し、失敗しながら前に進みつつ、変化に対応し、仕事を進化させてゆくことの強みを指摘します。日本がこれからのスピードが求められる競争社会を生き抜くためには、組織のあり方やコミュニケーション教育のあり方を変えてゆかなければならないと常に話しているのです。
 
 バーラの指摘は、ある意味で典型的な日本人のコミュニケーションスタイルへの感想といえましょう。
 自己主張を控えるために沈黙を好み、そのうえで変化によるリスクを回避するために、危険な要因を潰しながらコンセンサスをとって集団でビジネスを構築してゆくやり方は、確かに日本人の物事の進め方そのものでしょう。
 そのために多くの人が会議に出席しながら、そこに上下関係などがあれば、若い人などは何も言えず、質問や指摘も少ないことは海外の人々から見れば奇異なものです。なぜこれだけ多くの人が何も語らずに会議に参加しているのか理解できないのです。
 
 しかも、日本人には「場」の感覚があります。例えば夕食の席とか、会議の後の廊下での会話とか、「場」が異なれば人々は意外とカジュアルに本音を交換します。会議での建前と、会食などを繰り返して親しくなった人との本音の交換の組み合わせが、物事を前に進めるノウハウというわけです。
 
 しかし、こうした物事の進め方は、海外の人から見ればあまりにも複雑で、このカラクリを理解するには相当の経験が必要です。
 特にインド人のように、幼少の頃から自分を表現し、自己を主張することに慣れている環境に育った場合、日本のビジネス文化は彼らとは真逆のアプローチであるといえましょう。変化に即応し、試行錯誤を繰り返し、どんどん自己主張する欧米やインドのコミュニケーションスタイルが、スピード感をもって競争を生き抜く現在のビジネス環境に適しているのかもしれません。
 

グローバル環境に適応する人材を教育現場で開発するために

 それでは、どのようにすればよいのでしょうか。
 今回、とある有名大学で400名の学生を相手に5日間にわたって集中講義をしたときに、彼らも最初はバーラの指摘通り、沈黙し、質問やフィードバックもほとんどなく、誰がどんな専門を学習しているのかもすぐにはわかりませんでした。面白かったのは、そんな彼らを4人ずつのグループに分け、それぞれのグループで話し合ってもらうと、次第に意見を言うようになったのです。そして、だんだんと個人でも発言を躊躇しない傾向が見えてきました。
 
 こうしたグローバルな環境に対応するために、ウォーミングアップをする教育上のメソッドについても、今後は開発してゆかなければならないことを痛感させられた一週間でした。
 

===================
今回の記事に登場したバーラへのインタビュー動画を YouTube にて公開しています。
前半⇒ https://youtu.be/84HW-pwii6c?feature=shared
後半⇒ https://youtu.be/ICqjt7MRsBg?feature=shared
===================

* * *

『英語手帳 2024年版』有子山 博美、クリス・フォスケット (著)英語手帳 2024年版
有子山 博美、クリス・フォスケット (著)
毎日、英語にふれて、1年後には英語で話せる自分になりたい。そんなあなたを応援する『英語手帳』。スケジュールを管理しながら英会話の基本フレーズや英単語が自然に覚えられます。英語力アップのヒントも満載! 今年は携帯しやすい人気のミニサイズに、3色のニューカラーが登場しました! ぜひチェックしてみてくださいね。

===== 読者の皆さまへのお知らせ =====
IBCパブリッシングから、ラダーシリーズを中心とした英文コンテンツ満載のWebアプリ
「IBC SQUARE」が登場しました!
リリースキャンペーンとして、10月1日まで読み放題プランが無料でお試しできます。
下記リンク先よりぜひご覧ください。
https://ibcsquare.com/
===============================

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ

PAGE TOP