Top clerics said Mojtaba Khamenei will succeed his slain father, Ayatollah Ali Khamenei. The Israeli military said it was attacking Tehran and Beirut early Monday, and Iran said it had launched missiles toward Israel.
(イランの指導者は、殺害された
アヤトラ・アリー・ハメネイの息子である
モジタバ・ハメネイを後継者に指名。一方、イスラエル軍は月曜日未明にテヘランとベイルートを攻撃中。イランも、イスラエルに向けてミサイルを発射したと発表した)
― New York Times より
情勢変化と無関心にかき消されたイラン系移民の声
アラシュ・メフラビは、50年前にイランからアメリカに移住してきました。現在のイラン政権の強いイスラム化を嫌ってのことでした。最後の帰国は2010年です。以来、イラン情勢の悪化もあって、たとえアメリカ国籍を持っていても現地での安全が保証されないと考え、祖国には戻っていません。彼にはアメリカ人の妻と3人の子どもがいて、ロサンゼルス郊外で不動産の仕事に従事しています。
彼は、イランの現政権の崩壊をずっと望んできました。イスラム教を国民に強要し、暴力と恐怖で世論をコントロールしてきた政府への怒りは強く、一刻も早く民主化してほしいと願っていました。世界中の同じような仲間たちとネットを通してつながり、情報交換してきたのです。
アラシュには、子どものころ彼を可愛がってくれた兄をはじめ、家族や親戚がテヘランにいて、アラシュの両親の面倒もみてきました。今年の1月、イランで物価高騰と政府の抑圧に
抗議するデモが広がったとき、イラン政府はネットを遮断し、海外に住む反政府系イラン人との交信を妨害しました。そのため、テヘランの家族との連絡が途絶え、アラシュは海外の知人のネットワークを通してイラン情勢を追うしかありませんでした。
アメリカでは、イランの民主化運動への弾圧が何度もニュースで報道されてきましたが、一般の関心は薄いので、彼はアメリカで反政府デモがあれば参加し、少しでもイランの現状を伝えようと試みました。アメリカには100万人近くの同じ境遇のイラン系移民が住んでいるのです。しかし、大多数のアメリカ人はイランがどこにあるのかも知らず、自分の家族でさえも言葉では心配してくれても、祖国を思う実感までは共有できません。現実は思った以上に過酷でした。

体制転換への望みと米以による祖国破壊のジレンマ
アラシュが、いよいよアメリカが介入して、ハメネイ政権が崩壊するかもしれないという情報を海外の友人から得たのは、アメリカとイスラエルがイランへの攻撃をはじめる数週間前のことでした。イランは、今でこそイスラム至上主義の国家ですが、それ以前はイスラエルともアメリカとも友好関係を維持していたのです。ですから彼は、
イランと関係のあるヒズボラという戦闘集団の攻撃に悩まされてきたイスラエルが、アメリカに支援を求めてきたのだと即座に思いました。帰国できるかもしれない。テヘランで新しい民主化された政府の元で、残してきた家族と再会できるかもしれない。彼はささやかな期待を抱きました。
しかし、アラシュには、彼と同じような移民への厳しい政策を断行し、アメリカ至上主義を掲げるトランプ政権にはついていけないという思いもありました。だから、たとえイスラエルとアメリカがイランに介入したとしても、それをきっかけに一刻も早くイラン国内で再び反政府デモが拡大し、国民の力で政権を交代させてほしいと考えたのです。アメリカ国内で戦争での犠牲者が増え、物価が上がり、反戦ムードが広がって、イスラエルに踊らされて参戦したトランプ政権への評価が落ちる前に、国民の力でイランを変えてほしいと彼は願うのです。
そして、この1週間、圧倒的な力によってイランが破壊されている光景を目の当たりにしたときも、彼は政府を倒すには血が流れても、街が破壊されても、乗り越えるしかないと自分に言い聞かせ、その成り行きをみていました。
しかし、彼はそんな自分を全面的に正当化できないことにも、心の底では気づいていました。アメリカが、かつてアフガニスタンやイラクに介入したように、今また祖国の主権が蹂躙されていることに、やるせなさを覚えてしまいます。
たとえアメリカの思うようにイランが敗北したとしても、そこには憎しみと社会の混乱しか残らないのではないか。シリアやリビアのように、内戦が続き、伝統と歴史ある美しい祖国の破壊が続くのではないか、という不安もよぎります。そもそも、国民が組織化して武器を持てない以上、そして軍隊が政権から離れない以上、どうやって体制を変えることができるのかわかりません。
今のイスラム政権への怒りと、自分を他国に追いやった狂信的なイスラム教徒への憎悪はあっても、それでもなおアメリカとイスラエルが世界の世論を無視して続ける戦争に本当に与していいのか、心が揺れます。
そんな彼のもとには、今もSNSを通して、イラン系移民の活動家たちからメッセージが届きます。「がんばれアメリカ、イランの春はそこまできている」と。しかし、それ以上に、アメリカ国内の多くの人も、世界も、今回の戦争がいかに理不尽かと、トランプ政権を批判します。そのことを知っているイラン政府は、時間を稼ぎ、たとえ国が破壊されても降伏さえしなければ、世界の世論や
アメリカ国内の政治情勢の変化によって体制維持は可能だろうと踏んでいるのです。「降伏さえしなければ」という戦略は、トランプ大統領を苛立たせ、さらに事態をサディスティックな殺戮へと暗転させてゆきます。しかし、イラン政府はどんなに国が疲弊しても、国民を抑圧しコントロールできる組織と武力は維持しているのです。

個人の理想と理不尽な現実との間に揺れながら
ロシアによるウクライナへの攻撃を非難していたアメリカが、今度は自らが同じことをしていると、西側の主要国もアメリカの行動には非協力的です。カナダもスペインも、イギリスもイタリアも、そしてドイツでさえも、日本を除けばほとんどの主要国は、トランプ大統領の経済的報復を懸念しながらも、勇気をもってアメリカの非を外交的に表明しています。そして、アラシュが懸念する通り、中国やロシアもその波の恩恵にあやかろうとしています。
海外に亡命しているアラシュのような人々にも、その雰囲気はひしひしと伝わってくるのです。Facebookを通したやり取りの中にも、どんよりとした失望感がみなぎります。
政権は崩壊してほしい。独裁政権下のイランの国民に自由と民主主義の笑顔が戻ってほしい。アラシュはそう思いながらも、次第に家の中でも寡黙になり、家族との会話も少なくなりました。今、彼はよく公園に行って誰にも気づかれないように目を閉じます。革命のためには血が流れるのは仕方ない、そう自分に言い聞かせようと、必死に自分に語りかけます。しかし、その目にはいつのまにか涙が溢れます。
戦争と移民、理不尽な国際情勢と個人の幸福。理想と過酷な現実。そんな間にあって、彼はすでに70歳になろうとしている自分を見つめます。アメリカで暮らした時間が、イランで生きた時間より長くなってしまった自分を。そして、祖国で空爆の下にいる家族や親戚、友人の顔が次第に霞んでゆく現実を。来年、自分はどこにいるのだろうか。笑顔でイランに里帰りできるのだろうか。彼の心は揺れながら次第に沈んでゆくのです。
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21世紀に入って、25年が経過しました。社会の価値観は、SNSなどの進展によって、よりミニマムに、より複雑化し、ややもすると自分自身さえ見失いがちになってしまいます。
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