Violence broke out across France on Saturday during the latest day of demonstrations against conditions in schools and the cost of living.
フランスでは土曜日、学校環境の劣化や物価高に抗議するデモで、各地で暴力的な衝突が起きた。
BBCより
アメリカでの中間選挙が迫る中で、世界中のメディアはトランプ大統領の選挙に向けた言動を日々報道しています。今、アメリカではトランプ大統領への支持率は確実に低下しています。そして、ヨーロッパでのトランプ氏への批判と警戒感は、どこの国に行っても根強いものがあります。
「公開処刑」の発表が与えた衝撃
その中で、アメリカのみならず、ヨーロッパでも大きく取り上げられたのが、ヘグセス国防長官の発表でした。テキサス州の米軍基地でアメリカの中東政策への不満から13名を殺害したニダル・ハサン元陸軍少佐の死刑を、事件現場の基地で公開して執行するというのです。
無差別殺人という凶悪な事件ではあるものの、死刑の執行を公開で行うことが文明国ではあり得ないというのが、報道の主旨でした。また、死刑囚がイスラム教徒であることもあって、福音派右派のヘグセス氏の個人的な感情が執行に関係しているのではないかという疑念も報道されました。このことは、アメリカの民主主義の崩壊であるという論評にもつながりました。
ローマ教皇は自らが病気療養中でありながら、アメリカでの死刑執行はキリスト教の精神に反すると、教皇としては異例の強いメッセージを送り、そのことが今度はアメリカでも大きく報道されることになりました。
多くのアメリカ人は、イランとの戦争に大義を見出せず、物価高に拍車をかけただけだとトランプ政権を批判します。トランプ大統領としては、この批判をかわすためにロシアに接近し、急遽ディーゼル燃料(軽油)をロシアから輸入すると発表し、ウクライナが執拗に抵抗を続けていることへも批判を加えました。
これが、アメリカとヨーロッパ諸国との関係に影を落としていることは言うまでもありません。そうした中で、アメリカの内政で起きた野蛮ともいえる公開処刑の発表が、世界各地に衝撃を与えたのです。

ロシアが突く日欧の温度差
ただ、ヨーロッパ諸国がアメリカを懐疑的に見るようになったとはいえ、ヨーロッパがアメリカ抜きでウクライナを支援することには限界があり、その矛盾をロシアもよく知っていることは事実です。ですから、ロシアはこの機会に苦悩するトランプ政権を利用し、ある意味で手玉にとろうと懸命です。
そんなロシアにとって、このところのトランプ政権の混乱は、日本に楔を打ち込む絶好の機会ともなりました。日本は、ヨーロッパとただ足並みを揃えるには、地理的にも政治的にも遠すぎるからです。北海道新聞の記者をスパイ容疑で拘束し、日本を単独で牽制した背景には、このような複雑な国際情勢がありました。
ヨーロッパ諸国にとってはロシアが直接の脅威であり、中国は遠くかつ経済的には有力な市場です。日本にとっては中国との緊張が大きな課題で、ウクライナの問題はヨーロッパほど切実な問題ではありません。この温度差をロシアは巧みに突いてきているのです。
さらにこの温度差は、中間選挙後、トランプ政権を震源とするアメリカの外交政策への対応をめぐって、日本とヨーロッパとの間で続いてゆく可能性があります。それだけに、日本の最近の対中外交は、無用な緊張を煽った大きな過ちであるといえましょう。
物価高が火をつけた欧州の社会不安
今、ヨーロッパの主要国では、潜在的な社会不安というガスが国内に充満していたところに、トランプ政権のイランをはじめとする中東戦略による石油価格の高騰が、発火装置の役割を果たしてしまいました。
フランスでは、強権的な年金改革や生活に直結する脱炭素政策(燃料増税等)、劣化した就学環境に対する労働者や市民の怒りに、物価高が火をつけました。その怒りが、マクロン政権の選ばれたエリートによる政権運営への反発として爆発し、極右勢力ともいわれるル・ペン氏の国民連合への追い風ともなりそうな雰囲気です。冒頭の英文はそれを報道するBBCのテロップです。
ドイツでも、もともと旧西ドイツとの経済格差が大きい旧東ドイツを中心に不満が充満したところに、同じく最近の物価高が点火剤となり、極右グループの政治的な躍進が続いています。似たような現象はヨーロッパの他の地域でも見られ、気になる動きといえます。
つまり、ヨーロッパではトランプ政権が生み出した不安定な経済状況に、冒頭で紹介した民主主義の後退を象徴するかのような公開処刑の発表などの暗いニュースが加わって、フランスやドイツといったEUの帰趨を握る国々の指導者を悩ませているのです。
今、アメリカでは、共和党の内部でもトランプ離れが起きていることはよく報道されます。冒頭の公開処刑のニュースに加え、新任のホワイトハウス報道官が会見であまりにも素人ぶりをさらしたうえ、経歴を詐称していた疑いも浮上し、わずか数日で辞任に追い込まれたことも、大きなダメージとなりました。しかし、アメリカ社会のマジョリティはイデオロギーや国際情勢以上に実利で動きます。好調な株式市場を維持でき、イラン問題が有利に解決された場合、トランプ政権の支持率が再び上向くことも、2年後の大統領選挙までを見据えれば、あり得ないことではありません。
一方で、ハンガリーのように、右派政権の内部分裂によって、新たな中道右派政権が誕生した事例も無視できません。ドイツやフランス、そしてアメリカも、どのようにハンガリーの事例を参考にするかが注目されます。そして、共和党内部の右派と中道の間に、トランプ政権に対する温度差が生まれるかどうかは、アメリカの今後の物価や経済状況に大きく左右されるのです。
そしてロシアは以上のすべての動きに注目しています。その上で、対日政策も検討しているはずです。ロシアは、兵力は北朝鮮にまで頼り、経済的には中国にラブコールを送っています。そしてトランプ政権がウクライナ支援を抑制するように、物価問題をだしにして誘惑しています。さらに、極東におけるロシアと中国は、人間の上顎と下顎とに例えられるように、常に影響し合いながら外交政策を展開しているのです。
ヨーロッパは民主主義の論理に挑戦するかのようなアメリカの内政への警戒心を強めながら、それが外交にどのようなハレーションを生むか注視しているわけです。それは、ロシアと中国も同様で、これらすべてが日本の外交問題として跳ね返ってくることになります。
一つ言えるのは、そうした状況を日本のマスコミにはもっと頻繁にかつ詳細に報道してもらいたいということです。日本の主要メディアが国際関係を扱う量があまりにも少ないことに、海外から帰国するたびに驚かされているのです。
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