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スノーデンは国家の威信と面子の宿敵

【海外ニュース】

Snowden Used Low-Cost Tool to Best N.S.A.
(New York Times より)

スノーデンは、N.S.Aを凌駕するために、安価なツールを使用

【ニュース解説】

以前、同時多発テロがおきたとき、さらにそれ以前にアメリカがテロの標的になったとき、FBI や CIA が何故事前にそれを察知できなかったかが話題となりました。我々は例えば Mission Impossible (スパイ大作戦) などの映画を通して、高度な国家機密に対して、それ以上のハイテク技術や様々な罠をしかけて挑んでゆくスパイ達の様子を通し、国家というものがいかに最高度の機密保持システムで何重にも守られているかというイメージをもってきました。
しかし、こうした FBI や CIA の失態をみたとき、それは本当だろうかと疑問を抱いたものでした。

しかし、同時多発テロがおきた時点では、その原因が機密諜報システムにあるのではなく、組織間の連携の問題であると結論づけられたはずです。つまり、FBI と CIA とが情報を共有していなかったことが問題であったとされたのです。
こうしたことは、一般の犯罪捜査においてもよく指摘されてきました。アメリカでは、それぞれの州内の捜査はその地方の警察が行い、州をまたいだ犯罪や、連邦政府の機関への犯罪は FBI が担当します。そうしたとき、よくローカルの警察は、「お高くとまっている」FBI を嫌悪し、捜査情報を出し惜しみしたりするといわれています。同じようなライバル意識が FBI と CIA との間にもあったのだというわけです。

しかし、今回のエドワード・スノーデンの事件では、そうした組織の問題以上に、アメリカの諜報組織の技術そのものの脆さが露呈されたと New York Times は報道したのです。
Intelligence officials investigating how Edward J. Snowden gained access to a huge trove of the country’s most highly classified documents say they have determined that he used inexpensive and widely available software to “scrape” the National Security Agency’s networks, and kept at it even after he was briefly challenged by agency officials. (諜報機関の調査によれば、エドワード・スノーデンは、国家の最高重要機密に属する書類へのアクセスを行うにあたって、安価で一般に広く使用されているソフトウエアをもってのぞみ、国家安全保障曲のネットワークを反古にし、事後に諜報組織が本人に立ち向かってくるにあたっても、しばらくそれを使用していた模様) と同紙は報道しています。

彼が使用したソフトとは web crawler と呼ばれる、複数の情報を同時に入手できる検索エンジン。同紙は、中国やロシアなどからのサイバーアタックに対しても万全を期していたはずの国家機密管理機能を、内部の人間がオフィスでいともかんたんに市販のソフトウエアを使って打ち破ったことの衝撃は甚大だとコメントしています。Mission Impossible 的な神話が見事に崩壊したのです。

震災がおきたとき、政府の関係者も民間の報道機関が放送するテレビをみながら情報を把握するように、今や国家は民間の協力なくしては機能できません。国家が独自に何かを造り出すことのできない状況は、自らの弱点をも自力で管理できない現実を示しています。もしかすれば、商社や銀行といった民間機関のセキュリティシステムの方が、国家のシステムよりも優れているかもしれません。SECOM のシステムを破れれば、同じノウハウで国の中枢の情報へのアクセスもできるかもしれないと、スノーデン事件は我々に囁きます。

通常、不自然に大量のデータにアクセスしていることが察知されれば、即座にその張本人を拘束できるシステムが働く筈だと、関係者は証言します。しかし、現実には、そのシステムのアップグレードの狭間をぬって、スノーデン氏は膨大な量の機密情報を自らのコンピュータにダウンロードしたのでした。

では、いったい誰のために。今のところ、スノーデン氏が誰かに頼まれた形跡は見当たらないと当局はコメントしています。その動機の真相は未だに闇の中。
アメリカの面子を潰し、同時に回復不可能といわれるまでに他国に利した今回の事件。今では、そうした現実と、そこで得られた情報を使った外交上の駆け引きが国家間で画策されているはずです。

スノーデン事件の余波は、まだまだ続きそうです。

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