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下請けからメーカーに至る自動車業界の未来への課題とは

“Multiple parties are already at work developing autonomous-driving technologies, and the trend toward putting SDVs on the road is rapidly gaining momentum across a broad front that encompasses OEMs, suppliers, mobility providers, technology companies, academic institutions, governments, and regulatory bodies.”

(自動運転への対応は、様々な業種や変革に対応する企業、テクノロジー関連や学術部門から政府や規制を行う部門に至るまで、広範な領域を巻き込んで、来るべき変化に向けてすでに迅速な稼働を開始している)
― ボストンコンサルティング・グループ より

自動車産業に押し寄せる変化の波

 「IT革命」と言われるようになって、すでに20年以上の年月が経とうとしています。
最初は通信革命から始まりました。そしてAIITとが融合するようになり、革命の波は通信からあらゆる産業へと波及しようとしています。
よく今後30年でなくなる業種のことが云々されています。人間はその瞬間になるまで、変化が自分の生活にどのような影響を与えるか実感できません。人ごとのように思え、まあいつかは来るだろうけれど慌てなくても…と思っているうちに、波は津波のように一気に産業を変えてゆきます。
 日本の基幹産業である自動車業界には、この津波の轟音がすでに聞こえてきています。電動化、自動運転カーシェアリング、さらにAIと直結したコミュニケーションシステムの改革によって、自動車のあり方が大幅に変化しようとしているからです。それはすなわち、内燃機関に頼っていた自動車産業そのものの体質が変わることを意味しています。
コンパクトなボックスが、シャーシーと呼ばれる自動車の骨組みの上にぽつんと置かれ、そこから発信する信号でタイヤへ動力が伝達され、ハンドルとも連結されるようになります。また、車は「所有する」時代から消費者が「シェアする」時代に突入しようとしています。これらの変化に対応したインフラ整備、法的な整備も必要になってきます。
 ここで課題になるのが、日本の下請けとメーカーとの関係です。
今まで、自動車業界はメーカーが下請けに君臨していました。メーカーはエンジンのピストンを磨く研磨技術から、ドアノブの触感に至るまで、下請けをコントロールしながら厳しい競争に打ち勝つために技術を磨き、コストを抑えてきました。同時に、阿吽の呼吸で業務ができるように、下請けとの関係自体を密にしてきました。
90年代に、そんな自動車産業に最初の波が襲ってきました。日産マツダといった日本を代表するメーカーが経営危機に見舞われ、下請けのピラミッド構造そのものを見直す動きも出てきました。

問われるメーカーと下請け企業のあり方

 しかし、これから日本の自動車産業を見舞う波は、90年代のものをはるかに凌駕しているはずです。
まず、今まで必要不可欠であった部品のほとんどが不要になります。内燃機関から電動で駆動する自動運転へと車が変化すれば、ボンネットの中を埋め尽くしている機材の多くが無用の長物と化すからです。
問題はそれだけではありません。今まで下請けの上に君臨していたメーカーの部品調達のノウハウそのものが、これから問われることになるのです。購買部門は下請けに対して絶対の力を持っていました。購買部門は「納期・品質・コスト」の三種の神器すべてを自社の都合でコントロールし、下請けに伝達していたのです。また、メーカー内でも、もともと躯体とエンジンこそが自動車の中心という意識のもと、設計においてもまずこの二つの要因に合わせてすべてが調整されていました。ところが、これからはプログラムや電子システムの方がはるかに重要になってきます。これらの調達は、今まで経験したことのないグローバルな視野での新しい交渉が必要となります。
 今までは英語と無縁であった技術者も、調達部門と一緒にシリコンバレーなど世界各地のハイテクメーカーに開発と協力を求めなければなりません。そうしたネットワークによる調達のノウハウは、従来の下請けに対する調達のノウハウとは根本的に異なるフラットなものとなるでしょう。つまり、上下関係ではなく、横のネットワークによる対等な交渉が求められるのです。
阿吽の呼吸で言うことを聞いてくれていた企業に要求する調達部門のあり方そのものが問われるようになるのです。
しかも、技術革新は分刻みで進み、技術の供給は自動車のみならず、人の生活に関わるありとあらゆる産業に共有されるため、自動車メーカーとはいえ、今までのように優遇されることはありません。
 下請けはさらに大変です。その昔、ランプの部品を作っていた企業が、電灯が拡販されるようになったときにどうなったかを想像すればよくわかるはずです。実際はそんな変革どころの騒ぎではないかもしれません。ランプから電灯へと変わるときは共有できていた部品も、内燃機関から電動による自動運転へと変化するときには共有できないからです。
下請けの多くは、自動車産業以外にも自社の技術を応用した販路を求めなければなりません。また、陶器メーカーが特殊なセラミックやその製造技術を応用した未来型の製品を開発してきたように、精密なエンジンのピストンを作っている会社も、同様な対応を求められるに違いないのです。しかし、そうした新たな分野を先取りするには、現在の自動車メーカーの要望に応えるのが精一杯で、時間、人材、資金のすべてに余裕がないかもしれません。二次、三次下請けとなればなるほど、激しい変化に対応する舵取りは難しいはずです。

波の到達を前に求められる国際化

 このように、日本の自動車産業全体、つまりピラミッドの頂点であるメーカーからその最底辺の町工場までのあらゆる人の耳に、津波の轟音が聞こえ始めているわけです。
課題はその波の到達予測、そして到達地点にいる人々の予測の甘さ、つまり自分たちは大丈夫だろうと安心している、企業の管理職や調達部門などの楽観的な意識です。下請けは仕事を失い、メーカーは新たなニーズに合わせた調達ができなくなるという日がやってきたとき、日本の自動車産業の足元が崩れてしまうのです。そのことは、自動車産業に支えられている日本経済に今までにないインパクトを与えるはずです。
 海外の企業の強みは、こうした変化への柔軟性と迅速な対応力です。まず、言語でいえば英語で即座にメールをし、交渉をし、相手とフラットな立場に立って、妥協しながら商品開発を進められることです。これは、重厚なピラミッド型の産業構造に慣れている日本企業が一番苦手とするノウハウといえましょう。
 教育のあり方、過去の常識へのこだわりなど、日本の産業構造を変えてゆくためのバリアは、日本社会のいたるところに存在しています。それを変えるには時間がありません。であれば、なおさら、海外から直接人材を含めたノウハウを引っ張ってくる国際化が、企業内部にも求められているのです。また、企業そのものが従来の下請けと改めて対等な立場に自分を置いて、それぞれの弱点を補いながら資金と人材の双方で新規事業を育成してゆく協力姿勢を構築することも求められているはずです。

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『シリコンバレーの英語: スタートアップ天国のしくみ Silicon Valley Buzzwords』ロッシェル・カップ、スティーブン・ガンツ(共著)シリコンバレーの英語: スタートアップ天国のしくみ Silicon Valley Buzzwords』ロッシェル・カップ、スティーブン・ガンツ(共著)
排他的で閉鎖的。世界が注目するシリコンバレーの奇妙な英語とは?!
アップル、グーグル、フェイスブックなどの名だたるインターネット企業が本社を置く場所としても知られ、IT企業の一大拠点となっているシリコンバレー。そんな世界中が注目する場所で生き抜くために必要な100のキーワードを徹底解説。世界で活躍するために最先端の英語を身につけよう。シリコンバレーでエンジニアや ITべンチャーを目指す人はもちろん、世界最先端の企業が集う場所で使われる英語に興味のある人におすすめです。

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