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パンデミックが黒船だと考えれば

Think out of the box

(箱の外に出て考えてごらん―枠に囚われずに)
― 英語の格言より

誰もが考える進学、就職の「常識」を見直せば

 もしあなたが高校生、そして大学生だったら、あるいはその親だったら、どのように将来の進路を考えるでしょうか。
 誰もが考えることが進学と就職です。
 日本では、このルートが基本的に一本の「常識」で繋がっています。
 それは、できれば現役で良い大学に行って、新卒でそのまま知名度のある企業に就職したい、と。しかし、ここでいろいろな問いかけをしてみます。
 
 今、有名銀行では多くの人が、40代を過ぎると取引先や関係他社などに出向するケースが増えています。また、金融マンを目指して銀行に就職しても、実際の仕事といえば、融資のための同じような書類を何枚も作成したり、経営不振の企業を回って融資返済の交渉に明け暮れたりという毎日で、それにうんざりして途中退社というケースも多く見られます。
 こうした、新卒時に考えた未来とかけ離れた毎日に失望する人も多くいるのです。
 加えて、これからの AI の進化によって、今安定している職種の多くが不要になるということもよく言われています。
 
 それでも、多くの子供たちや親はそうした未来にあえて耳と目を塞ぎ、受験勉強で大学を目指し、その先はできれば新卒での就職を視野に入れて競争社会に埋没します。
 最近、ユネスコが「子どもの幸福度」という指標で分析したところ、日本は先進国38ヵ国のうち、精神的な豊かさや満足度では最下位の部類に属しているという指摘もありました。
 

「常識」という枠の外に出てみた二つの事例

 ここで一つの事例を紹介します。ある専門学校の学生の話です。
 彼女は、日本の大学受験をあきらめ、東京の専門学校に通っているとき、英語に興味を持ち、英会話を学びながらいろいろと未来について考え、検索もしてみました。
 その結果、アメリカのコミュニティ・カレッジ(2年制で様々な技能を習得できる大学)であれば、2年間で様々な専門領域を学習できることを知りました。しかも、英語力は自分が思っているほど達者でなくても、とりあえず入学できることがわかりました。入学してしまえば、あとは英語環境に浸かることができるので、自然に英語力も身につきます。しかも、入学することに必要な学力は、多少の英語力だけで大丈夫なのです。
 
 さらに彼女は調べました。その2年間の在学中にしっかり単位を取れば、その多くを4年制の大学が認定してくれ、4~5年経てば、アメリカの海外の学生の受け入れ体制があり、教授陣や設備も整っている大学の卒業資格も取れるのだと。
 実際、片言の英語でアメリカに渡った彼女は、4年後に中西部の有名な私立大学を卒業し、そこで学んだマーケティングとビジネスマネージメントのノウハウを活かして、今では日本とアメリカとの間で活躍しているのです。
 
 次に、さらに面白い事例を紹介します。
 この男性は、親の意向もあって、高校生のときに通常の大学進学を目指しました。それでも勉強には集中できず、一浪して都内の一応名の知れた私立大学に入学。退屈な学園生活だったと言っています。卒業後、中堅の商社に勤めたものの、そこでの先輩や上司との人間関係に悩み、退職を決意しました。
 しかし、ただ退職しても、先は真っ暗です。そこで退職の前に色々と調査をして、まずはセブ島の英語学校に3ヵ月通って、英語の基礎を学ぼうと決意。その準備として Skype での英会話レッスンも始めました。
 退職してセブに渡った彼は、極力日本人留学生との交流を避け、そこにいる外国人と積極的に友達になり、英語学習にも専念しました。
 
 そして、その後マレーシアでの求人に応募したところ、片言の英語と日本での営業経験を買われ、マレーシアの現地企業で日本企業の担当要員として採用されます。
 11ヵ月間、しっかりと現地でのビジネスを勉強しているうちに、次第に英語力にも自信がつきます。その段階で、マレーシアの求人サイトを通して、アメリカの世界的なシステムサポートの会社に転職ができたのです。勤務地は同じくマレーシアですが、やがてその会社は誰もが知っているような大手のコンピュータメーカーに買収され、彼は英語と日本語が堪能であるということで、給与も大幅にアップ。現地に進出した日本企業に向けたサービスでも成果をあげたのです。
 今、会社は彼にさらに投資をしようとしています。具体的には、次のキャリアアップのために、MBA を会社の負担で取得するように話し合っているのです。
 

パンデミックの「黒船」が切り開く、新しい波に乗って

 この二つの事例は、人生設計をちょっと日本の常識の外で考えれば、大きく変わるのだということを示しています。これが、今回の表題となった Think out of the box. の本当の意味するところなのです。
 日本人は、box の中でしっかりと生きることだけが未来につながる道筋だと信じ込んでいます。しかし、現在その box 自体が壊れようとしていることを見ないようにしがちなのです。
 よく学習塾などでは、学生を集めるために有名大学への進学者数を広告していますが、それも box の中での狭い常識に過ぎません。しかも、人生という長い道のりの中で、その box の中で本当の幸福が得られるかどうかは何も保証がないのです。
 
 おおむね海外では、10代の段階で、全ての教科に精通することを求めません。好きなことをしっかりと学習でき、課題や仮説を自分で設定して、まず大学に行きます。そして、後のさらなる教育課程や実業の中で、より幅広い知識をつけてゆくのです。それが自分に合わないなと思えば、キャリアを途中で変えることも簡単です。
 もともと出版社に勤務していた人が、パイロットになったという話を私は知っていますが、それと似たケースはいくらでも転がっています。
 
 今、コロナパンデミックで社会は大きく変わろうとしています。
 ここで紹介したコミュニティ・カレッジや大学でのキャリアアップを、日本にいながらオンラインで行うことも可能になろうとしています。つまり、以前に比べて留学のコストも下がろうとしているのです。
 むしろ日本の大学に4年間いて、さらに就職の準備まで行うコストを考えたら、どちらの方が簡便かわからなくなっています。
 ポイントは「柔軟性」です。Box の外に出て、今までの既成概念に囚われず、柔軟に発想することが大切なのです。そして、一度決めたらそれを維持するためのモチベーションを自身が持ち続けること。つまり、信じれば道は開かれる、というわけなのです。
 
 コロナパンデミックは、そうした意味では日本の教育や就職の常識を変える「黒船」となり、そこに新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけになるかもしれないのです。
 

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今回の記事に関連したインタビュー動画をYouTubeにアップしています。
日本にいながらアメリカの大学の授業を受講できる、「オンライン留学」の実状について語っています。
https://youtu.be/byEI7vvqMCc
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『あたらしい高校生 海外のトップ大学に合格した、日本の普通の女子高生の話』山本 つぼみ (著)あたらしい高校生 海外のトップ大学に合格した、日本の普通の女子高生の話』山本 つぼみ (著)
著者は、英語がまったく話せない普通の高校生でした。そんな彼女が地方の公立高校に通いながら、米国最難関大学と呼ばれるミネルバ大学を含めた日米豪のトップ大学の合格を勝ち取りました。 本書は、日本人が海外名門校を受験する苦労や、入学してからの体験談も豊富に紹介され、海外留学を目指す高校生にとって【必要な心構え】や【やるべき準備】を知ることができる、貴重な情報が満載です。
帰国子女でも有名進学校の生徒でもない彼女の挫折と成功体験の記録が、これからの時代に生きる高校生に、あたらしい選択肢を示す一冊です。

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