Sundar Pichai says ethicists and philosophers need to be involved in the development of AI to make sure it is moral and doesn’t do things like lie.
AIが進化する現在、そして未来にこそ哲学の思想が必要
しかし、ジョン・ロックの思想が本格的な自由と平等を基盤にする社会制度として取り入れられたのは、第二次世界大戦以降のことだといえましょう。もしかすると現在も、権威主義と民主主義との戦いや、世界各地で起きている人権の蹂躙をみると、ジョン・ロックやそれ以前から語られていた発想が未だ結実していないのではないかとも思われます。
実際、先端企業の中にはそうした人材を求め、助言を得ているところが見受けられます。
ピチャイ氏は、人間のモラルや道徳に加えて、人間の価値観とAIとの連携、社会への脅威の除去、技術の暴走の阻止、異文化や多様な世界への配慮などを考慮して、人間が開発したAIが、我々が思いもよらない結果を社会にもたらすことを懸念して、このような発言をしたのです。
科学と哲学が一元的であったかつての考え方を今こそ求めて
しかも、ジョン・ロックがそうした思想を持つに至った背景には、さらに200年以上前の宗教改革、中世の殻を打ち破ったルネサンス運動などがありました。ジョン・ロックの理想とした社会では、その後産業革命が起こりました。実は科学(science)という言葉が、哲学(philosophy)という言葉と分離して使用されるようになったのは、18世紀から19世紀にかけてのことで、まさに産業革命により、技術のみがサイエンスであると人々が思い始めたことが背景でした。
サンダー・ピチャイ氏の発言は、我々が科学と哲学とを分離し、その結果我々が生み出したAIの進化をみたときに、あえて未来のために過去の科学のあり方に学ぼうとしたものだったといえましょう。
人間の業が深く、万能ではないために、その混乱を制御できないとき、例えば人々は20世紀の二つの世界大戦などを経験し、多くの犠牲者を出してしまいました。AIやIT技術、さらには個人のニーズが直接他のシステムと連結できるような、未来を予測できるブロックチェーンなどに代表される現在の科学技術は、まさにそれに見合った新しい社会制度を再び蘇生するきっかけになろうとしています。それは希望であるとともに脅威なのです。ですから、サンダー・ピチャイ氏の言葉には重みが感じられるのです。
AIの進化とともに我々のあり方をもう一度見直すことが求められる
人間の意識の探究は、単に視覚や聴覚といった五感から脳に送られる信号とその反応のみでは解き明かされません。
その反応への判断には、ジョン・ロックのいうように個々人の経験や意識へのアプローチが大きく影響します。ですから、サンダー・ピチャイ氏が指摘する通り、異文化や多様な世界観への配慮も不可欠でしょう。
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