A force of nature on and off stage, Seiji Ozawa brought the BSO to new heights of international recognition and acclaim in his almost three decades as our Music Director. He inspired audiences, fellow artists, and generations of music students through his extraordinary artistry and his adventurous and generous spirit. Seiji’s deep commitment to excellence, education, and service will continue to guide us as we move forward.
言葉の壁を超え音楽への情熱で世界を照らした名指揮者
彼の訃報や過去の業績は、すでに多くのマスコミで報道されています。しかし、ここでは特に、彼が我々に示してくれたとても大切で、それでいて多くの人があまり気づかなかったことについて、まとめてみたく思います。
私から見て、彼は決して一般に想像されているような、指揮棒をもって世界をカッコよく駆け回るスーパーヒーローではなかったように思えます。実はそれが私の小澤征爾への賛辞であり、最もわかってほしい彼の功績なのです。
しかし、小澤はそうした人々と華やかな社交界で、英語やドイツ語を使って華麗に振る舞っていたわけではなかったのではないでしょうか。
海外の人とのインタビューを聞く限り、彼の英語は決して流暢なものとはいえないように思えます。おそらくヨーロッパでも言葉の壁は大きかったはずです。しかし、それで充分なのです。彼は言葉が足りない分、ジェスチャーなどを交え、全身で感情を表現して、そのメッセージが見事に海外の人にも伝わっていたのです。
「型」にとらわれる日本人の「思考の壁」
彼はインタビューで、「日本人は楽譜にとらわれ、楽譜に記されていることを忠実に音にすることには長けているものの、楽譜の向こうにある感情や思いを受け止め、楽譜を超えて表現することがなかなかできない」と言っていたことを思い出します。この一言こそ、彼が音楽を超えて日本人に伝えたかった最も重要なメッセージだったように思えます。この一言はビジネスや研究分野など、日本のあらゆることに普遍化できそうな金言です。
物事を自分の感性で受け止め、それを掘り下げながら、普遍的な知識とも融合させることで、そこで意識したものを率直に表現してゆくことを受け入れる環境や、姿勢が日本人には欠けているように思えます。
しかし、一つ一つの言葉を探すように、時にはじれったいほど口ごもりながらも、心と表情、そして情熱を全身で表現して語るとき、世界の人に彼のメッセージが伝わったのではないかと思うのです。それは言葉以上に大切な、海外で活動するためのノウハウです。
感性に従って自由な発想を生み出せる人材を
ただ作曲家を賛美し、その楽譜を正確に読むことを一義としてきた日本の音楽界で、演奏者の感性に重きをおいた彼の海外での経験はあまりにも常識の外のことで、受け入れられなかったのでしょう。
そして、語学学習をはじめとする多くの教育が、この問題を真剣に考えない限り、自由な発想をもって思い切ったことをする人材が日本では育ちにくいという、日本の将来への懸念となっていることを、ここで強調したいと思います。
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『教育による日本再興論』伊藤 奈緒 (著)
将来の見通しが不透明になった日本。この状況を覆すには教育水準のボトムアップと併せ、世界で活躍するグローバル人材、日本を牽引するリーダー、地域を引っ張るグローカルリーダーを育てるための教育が必要です。昨今のアンチ受験勉強、脱・努力主義の風潮に危機感を抱く三重の名門学習塾【鈴鹿英数学院】のCOOである著者が、受験勉強にはどのような意義があるのかを科学的データやエビデンスに基づいて解説します。
自ら課題を発見し、課題解決に向けて戦略を立て、自ら学ぶことができる子どもを育てたい教師、保護者に是非ご一読いただきたい一冊です。
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