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気候変動によってセブ島を襲った台風の深刻な爪痕

Right now, the situation is getting worse. Buying potable water is very limited. We have to source out from farther locations just to buy a gallon of water. For tap water, supply is not enough as well.

(今、状況は悪化しています。ペットボトルの水が不足していて、1ガロン〔3.78リットル〕の水を買うためにわざわざ遠くまで行かなければなりません。水道水も充分ではありません)
― セブ島の友人からのメッセージ より

フィリピンに台風上陸の報せを受けて

 地球温暖化で最も懸念されるのは海水温の上昇です。
 海水温が上昇すれば、地球上で様々な異常気象が頻発します。典型的なのが台風やハリケーンの規模が大きくなり、その被害が日常化することに他なりません。
 今月16日にフィリピン中部を横断した台風22号は、そんな気候変動を象徴するものでした。シーズンを過ぎたあとに大きな勢力に発達したままフィリピンに上陸し、現地に甚大な被害を与えたのです。
 特に、今回はフィリピンの今後の経済を支えてゆくのではないかと期待されているセブ島に被害が集中しました。
 
 台風上陸のニュースは、ちょうど東北自動車道を運転しているときに舞い込んできました。フィリピンのルソン島にある私の会社のオフィスからメッセージが入り、セブで仕事をしている社員の家が全壊したというのです。ショックでした。
 そして、またかと思いました。日本でも毎年夏になると、どこかで大雨が降り、土石流などの被害が出ています。アメリカでもハリケーンや竜巻の被害に加え、夏にはこれまで以上に大規模な山火事が頻発しています。同様に、フィリピンでも毎年のように洪水になり、人々はそれと付き合いながら生活しているのです。
 
 しかし、今回の台風はその中でも極端に規模の大きなスーパー台風に成長して、フィリピン中部を通過したのです。最大瞬間風速は75メートルだったと推計されています。フィリピンの家屋は決して頑丈ではないだけに、暴風雨と高波の恐怖は我々の想像を越えたものであったはずです。
 即座に現地と連絡を取ろうとしましたが、もちろん返事はありません。ルソン島の社員がなんとかSNSを通してコンタクトし、私に報告してくれました。そこで、ともかく心配なのでこちらにも返事をもらえないだろうかと伝えたところ、現地が停電しているので、携帯電話のバッテリーを節約している状況だから返事はこないと思う、ということでした。確かに私の期待は現地の状況を考えれば浅はかなものだったと思いました。
 

伝えたい現地の被害と被災した人々の状況

 翌日、イギリスのBBCニュースが最も早くセブ島の状況を報道し、唖然としました。ずらりと並んだ電信柱が倒れていて、街は戦災で爆撃にでも遭ったような有様です。電気だけではなく水道も止まっていて、復旧の目処は立ちません。私も何度もフィリピンには出張し、地方都市も回っているので、復旧には日本で考えるよりはるかに時間がかかることは容易に想像できました。
 まずは、たまたま12月のオフィス経費を送金する予定があったので、ルソン島のオフィスに義援金を加えて多めに送金し、被災した社員とその家族に届けるよう指示を出しました。それがなんとか無事に本人の手に渡ったことが、先週末にやっと確認できたのです。そして、それと前後して本人からもSkypeを通してテキストで連絡が届きました。その一部を抜粋したのが、今回のヘッドラインです。
 
 実は、今回が2021年最後の記事になるため、今後の日本の課題などを海外の知人に取材した内容をまとめて紹介しようと思っていました。しかし、日本での現地の被害状況を伝える報道があまりにも不足しているようなので、あえて予定を変更してこの記事を書いています。
 
 海外のメディアからも死者が370人を超え、40万人以上が被災しているという報道が流れますが、実態はそれをはるかに超えるものではないかと想像します。セブ市のダウンタウンと、ITパークと呼ばれる高層ビルの立ち並ぶ産業地区との間には、この国の現実を目の当たりにできる大きなスラム街があります。そこで誰がどのように被災しているかは、簡単には把握できないはずです。
 また、セブ島以外の大小の島々の状況もわかりません。私の友人が経営する日系の新聞社Cebupot(セブポット)のオフィスも半壊したようで、それも心配です。そして、Facebookを経由して、同じく現地でオンライン英語の事業をしていることで有名なQQ Englishの海辺の学校も、大破している様子が伝わってきました。多くの知り合いが、コロナによる打撃をなんとかしのぎながら、苦労して事業を展開しているだけに、その状況が心配です。
 
 実は、セブ島はオンライン英会話などのオフィスが集中する場所としても有名で、日本から新たな可能性を求めて事業をおこし、懸命にその拡張に挑んでいる人も多くいるのです。そうした人たちの多くがコロナのために、現地の人に仕事を託して帰国を余儀なくされているケースも多くあるだけに、災害の影がそんな経営の問題に追い討ちをかけていることも心をよぎります。
 
 そして何よりも、貧困に苦しむなかで被災した人々の今後が気になります。
 現地からの連絡によると、ATMの稼働も限られているので、そこには長蛇の列ができ、人々が現金を手にできずに困っています。水が不足し、衛生面にも問題がありますが、ミネラルウォーターを買えるショッピングモールも被害に遭い、思うように飲料水が手に入りません。そして、飲料水が不足しているために、その価格も上昇しているという皮肉な状況が問題となっています。こうした悲しい現状がいつ改善されるのか、日本からただ見守ることしかできない苛立ちを覚えます。少なくとも、不衛生な状況からコロナやその他の感染症などが拡大しないようにと祈っています。
 

これからも続く不安と今我々にできること

 フィリピン政府の財政規模では、復旧への国の支援は数十億円が限界で、まずは45億円の資金投入を行うと、同政府は発表しました。あとは海外からの支援と、民力による再生に期待するというのが実情でしょう。実際、その後数日で、セブ島での事業に関わる日本人の有志が義援金の募集活動を始めています。実は、コロナによって在留日本人のほとんどが帰国しているため、日本でのネットワークによってこうした活動が始められているのです。
 
 フィリピンは2013年にも、レイテ島を中心に6000人以上の犠牲者を出した大型の台風に見舞われています。
 そして現地では、平均すれば毎年20回以上の台風や嵐による被害が発生しています。ですから、これからも毎年のように同様の不安がつきまとうことになるわけです。当然、日本も同じような状況ではあるものの、同様の台風でも、経済力がまだ充分ではない、フィリピンをはじめとしたアジアの国々やカリブ海に浮かぶ島国などでの実情は、より深刻です。
 今回のセブ島を見舞った災害は、これからも続くそうした水害の脅威の一つに過ぎないという現実を、改めて強調しておきたく思います。
 

※セブを支援する義援金の情報は、山久瀬洋二のFacebookにて12月27日にシェアしました⇒『佐藤ひろこ』さんの投稿をご参照ください!


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