Here’s the uncomfortable truth: Japan’s longer-term yields have been rising, but — on a risk-adjusted basis — that rise isn’t nearly enough to stabilize the Yen. Another way to say this: markets think risk of a debt crisis is rising sharply. Yen depreciation won’t stop until yields are allowed to rise far more, forcing the government to pursue fiscal consolidation and bring down debt. Japan needs to stop being in denial.
(ここに、耳の痛い真実がある。日本の長期金利は上昇しているが、リスク調整後で考えれば、その上昇幅は円相場を安定させるには到底不十分だ。つまり市場は、債務危機のリスクが急激に高まっていると判断しているのだ。金利の大幅な上昇が容認され、政府が財政再建を迫られ、債務を削減するまで、円安は止まらない。日本は現実から目を背けるのをやめるべきだ。)
円安は国力への「警鐘」
いま、円安のために海外への渡航もままならなくなっています。この円安をドルとの金利差が原因とする見方は、すでに疑われ始めています。イラン戦争などの政情不安が円安を加速させると言う人もいますが、そう言う人は、10年ほど前まで、円が安定した通貨として有事の際には買われていたことを忘れています。私たちは、円安そのものが日本の国力への警鐘であることを、知っておくべきです。
4年前、現在の円安が進行し始めた頃、ある大手銀行の支店長が「この円安には、とてもいやな臭いがしているんです」と言っていたことを思い出します。政府は潤沢な外貨準備をもとに、たびたび為替市場へ介入しています。しかし、それで一時的に数円の円高に振れても、すぐに円安へと揺れ戻してしまいます。
株価の高騰がプラス要因だとも言われます。ただ円安のもとでは、一般の投資家にとって米国株は割高につき、それが海外の株高との相乗作用で、国内の株価を釣り上げている面もあります。一方で気になるのは、物価高、とりわけ建設資材の高騰によって、住宅やビルの建設の勢いが極端に鈍っていることです。建築産業の低迷は、必ず景気の低迷につながるからです。とくに、中国マネーが投資目的で日本の高層マンションなどを買い漁る、という現象も過去のものとなりそうです。理由の一つは、中国経済そのものの低迷から、中国の投資家が日本の不動産を資金化し、その穴埋めに充て始めていることです。つまり、購入したマンションが売りに出されているわけですが、買い手がつかなければ、不動産価格のバブルが弾ける可能性もあるのではないでしょうか。
人間は、自ら進んで行動を変えることが苦手です。歴史を振り返っても、大きな転換点の直前まで、大多数の人々は、いまの状況が明日も続くという前提で生活しています。明治維新のときも、終戦を迎えた昭和20年8月15日も同じでした。バブル経済が弾けたときも、日本がいまのようになると予測した人はいませんでした。いや、それどころか、今なお日本がバブル経済の頃のように世界をリードする国だと思っている人も、多いのではないでしょうか。
円安の原因が国の膨大な債務にあるという事実から、目を背けてはいけない––これが今回の冒頭の引用の骨子です。財政を再建し、税収を増やすには、円安によって日本に投資された資金をもとに、日本企業が果敢にイノベーションに取り組み、内需を含めた業績を好転させ続けることが必要です。得た資金をリスク回避のための資産に振り向け、バランスシートばかりを気にしていてはいけないのです。
最も危機感が薄い教育現場
ここで気になるのは、教育です。
AIの進化や円安による経済環境の変化が、これから社会にどのような影響を与えるのか——その先行きが不透明な中で、教育現場の進路指導は、いまだに有名大学を出て一流企業へ就職することを前提としたものに終始しています。企業も、人材獲得の主軸を新卒採用に置いたままで、そこへ大胆なメスを入れようとはしていません。面接の方法や新人教育の見直しなど、小手先の改革は行っても、30年後の日本を見据えた抜本的な人材育成という点では、教育現場も企業の人事政策も、あまりにも後手に回っています。
ある高校で、英語の教師を集めて、いまの英語教育について意見交換をしたことがありました。そのとき、英語でのコミュニケーションのノウハウについて、教師があまりにも無知であることに驚かされました。いわゆる一流企業の研修で、中学1年生レベルの英単語を理解できない社員がいたことに、驚愕したこともあります。
「実は教育現場が一番、危機感から縁遠く、日本の現状に鈍感で無知なんです」
そうコメントしたのは、ある有名塾の英語のカリスマ講師です。
「私は諦めています。彼らを変えることなんてできませんよ。早く日本から離れて、どう未来のリスクを回避するかを考えていますよ」
つまり、日本の国力そのものが低下し、そこへAIなどの新しい技術が世の中を変えようとしている——その変化に最もついていけていないのが、ほかならぬ学校の先生であり、彼らを指導する県や国の機関なのだ、というわけです。
リスクと嫌う社会と「人間力」
ここまで悲観的になることはない、という人もいます。確かに、日本の企業にも、また個人にも、未来に向けて逞しくイノベーションに取り組むケースが増えているのは事実です。しかし、そうしたケース以上に、一つの失敗に大袈裟に反応し、羹に懲りて膾を吹き続け、何もしないことこそ賢明だ、という風潮が定着している組織や企業のほうが、はるかに多いことも事実です。
リスクを嫌うのは日本人の特徴であり、完璧に準備をしない限り、率先して前に進む者は「出る杭」として打たれやすい——これも日本の組織の特徴です。こうした傾向がイノベーションの芽を摘み取ることも多く、インキュベーション段階の起業の足を引っ張っているのです。
しつこい円安は、こうした日本社会全体が生み出している現象なのです。
パスポートを持たない若者が増え続けています。海外留学を志しても、親と進路指導の教師が一緒になってその意欲を摘み取る——そんなことがないようにしたいものです。そして企業には、果敢にイノベーションに取り組み、業績好転をめざす社風づくりが求められます。政府の財政赤字は、対症療法では改善しないのです。
これから30年で社会がどう変わっていくかは、なかなか予測がつきません。ただ、いまは想像もつかないようなことも、きっと起きているはずです。円安の暗い影を取り除くには、そうした未来への免疫力をもった人材——言い換えれば、人間力のある人材の育成が必要なのです。
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ヴィッキー・ベネット (著)、有子山博美 (訳)
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