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組織とリーダーシップの取り方への意識変革にさらされる日本企業の未来とは

leadership

“The global economy requires a new set of leadership skills-imbued with a global mindset, multi-functional and effective across cultures and nationalities-that were not as critical even a decade ago.”

(世界経済は、地球規模の意識によりそい、文化や国境を越え、あらゆる状況で機能でき効果的に活動できる、10年前ですら求められなかった新たなリーダーシップを必要としている)
Nicholas Brealey社刊行『What is Global Leadership?』より

前回(2018年1月9日号)、コア・コンピタンス(Core Competence)の新たなあり方に日本企業が晒されている状況を、自動車業界を例にとって解説しました。

今回は、さらにこの問題を「系列」という日本企業のピラミッド構造を見つめながら掘り下げたいと思います。日本の大企業は、長年下請けのピラミッドに支えられてきました。自動車業界を例にとると 1st tier から 3rd tire さらにはその下に至る下請けの重層構造の上に大手と呼ばれるメイカーが君臨しています。そして、エンジンの製造者やブレーキの部品製造者などの大型の下請け企業の規模は、ともすれば自動車を販売する会社よりも大きい場合もあるほどです。

これは、単に自動車業界に限ったことではありません。全盛期の家電業界をはじめ、ありとあらゆる製造業がこの構造に支えられてきました。この下請けに支えられる重層構造を系列とよび、世界の人々はその言葉をそのまま “Keiretsu” と呼んできたことはよく知られた事実です。日本企業でのリーダーシップはこの縦社会でいかに舵をとるかというノウハウそのものだったのです。
バブルの頃、この Keiretsu こそが日本企業のパワーであると多くの人は思っていました。ところが、バブルがはじけ、日本企業が苦境にさらされると、海外の人はこの Keiretsu の閉鎖的な構造が、日本の経済力を世界から孤立させているのだと批判しました。そして、その頃から国際企業でのリーダーシップの取り方そのものが変化をはじめました。
日本企業にとってみれば、ある意味で Keiretsu は便利のよいものでもあったのです。長年の付き合いの中で、かなりの仕事が ”阿吽の呼吸” でできたのです。「いつものようにお願いします」といえば、相手は即座に対応でき、「このあたりを去年のモデルより滑らかに」といえば、過去から累積された経験に基づいて、下請けはメイカーが満足する部品を即座に調整してもくれました。
ところが、IT技術の進歩によって、このピラミッド型の構造だけに頼っていては物事が進まなくなりました。ITの業界ではシリコンバレー( Silicon Valley )を中心に多くの企業がM&A( merger and acquisition )を重ね成長しました。そして、製造業の多くはこれら巨大化した新たな企業の技術を取り入れてゆかなければならなくなったのです。
もともと日本のような強力な下請けの絆のなかった海外の企業は、部品の調達や技術の移管をフラットなネットワークの構築によってまかなってきました。自動車業界でいうならば、例えばフォード( Ford Motor )は世界中から部品を調達し、部品の製造者は常に価格や技術の競争を通して、自らを売り込んできました。一方、日本の企業は海外に進出する場合でも下請けに助力してもらいました。また、海外に進出したときも、常に本社が主導して海外の拠点を自らのピラミッドの中に取り込んでゆきました。日本から常に管理者を送り込み、日本のやり方を現地に移植することが、海外との付き合い方であると考えてきました。
そんな日本企業が、IT技術など先端のテクノロジーを導入するために、M&Aや世界とネットワークして成長した海外の企業と付き合い始めたとき、状況が一転したのです。点と点とを繋ぎながら、フラットで交錯した組織構造をもって成長した海外の企業と、縦社会のシンプルなピラミッドに頼ってきた日本企業との発想の違いが、様々な摩擦を生み出したのです。フラットで世界に拡散する新たなネットワークに対して、いわゆるプロアクティブ( proactive )で、インタラクティブ( interactive )なリーダーシップを発揮するノウハウを日本企業は育てていなかったのです。
例えば、日本企業が海外に発注した商品が、その企業のM&Aによって、それを生産する部門がいきなり売却されたために、部品調達そのものの機会が消滅することもありました。開発がいきなりストップしたり、納期が大幅に遅れたりということも日常茶飯事となりました。そして、こうした課題が顕在化したときに、それを解決してくれる人的組織的ネットワークを海外に有することもできないまま、グローバル経済の変動に翻弄されることが日常となったのです。
得てして海外の企業はマトリックス型の組織で運営されます。日本語に訳せば交錯型組織とでもいうのでしょうか。この組織構造では、レポートラインや製造開発のラインが上に向かって一直線に伸びるのではなく、例えば財務上の決裁は香港で行い、人事はシンガポール、そして開発の責任はその製品ごとに最も優秀な組織が存在する世界各地に点在といったように、組織の指示系統やレポートライン( reporting line )が複雑に交錯しているのです。日本企業は下請けも含めて、こうした企業構造をハンドルできないままに翻弄されるのです。
さらに、日本企業はピラミッド型の重層構造が厚くなればなるほど、カジュアルにネットワークする海外の企業と比較すると決裁(decision making)にも時間がかかり、様々な根回しを経てやっとGOサインがでたときは、海外の企業はそのプロジェクトそのものに対してとっくに興味を失っているということがしょっちゅう起きるのです。
今、日本企業はこうしたグローバル企業のネットワークや、新規ビジネスを生み出すフラットな組織構造への対応を迫られているのです。1st tier の下請けの持つ重層な組織が、こうした情報のメイカーへの伝達の阻害要因になっていることも考えてゆかなければならないのです。より早い情報の入手と、その情報への対応、そしてそこからいかに迅速に舵をきることのできる柔軟な組織を創造できるか。これを怠るとき、日本企業の将来は暗雲に覆われるのです。

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